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3両目 襲い掛かる恐怖



「お伺いしてよろしいでしょうか!?」

 道中、鈴木に語り掛けたのは栄明だった。


「なんだい?」

「皆さんの能力って、どんな能力なんですか?」


「そうか、きみたちはまだ自己紹介をしていた時にはいなかったか。私は、体を重くする能力だ。ちょっとやそっとの風や攻撃じゃ、びくともしないさ」

 鈴木信隆は鼻を鳴らして己の能力を説明した。



「俺は武田。目からビームを出す能力」 四十二歳、男性。


「私は丸山だよ。爪を自由に変形させることができるの」 三十歳、女性


「私は古川といいます。手のひらで物理的攻撃を防ぐことができます」 三十二歳、男性。


「僕は田中です。息を吹いて風を起こすことができます」 二十五歳、男性。


「私は吉永です。声量を倍にする力です」 四十九歳、男性。


「私は水上です。つかんだものは何でも、絶対に離しません」 三十歳、女性。


「私は佐々木といいます。拳を鉄にする力です」 二十八歳、男性。


「俺は野口っす……。通常より倍の速度で走れます」 二十三歳、男性。


「俺は木島! 背後に第三の目を開くことができる!」 二十九歳、男性。


「私は南です。石を弾丸のように飛ばすことができる能力です。よろしくお願いします」 二十八歳、女性。


「私は木巡治。気体や液体を固体にすることができる」 二十五歳、女性。




「俺は政永です。手から火を出すことができます」


「僕は赤木です。実は、まだちゃんと自分の能力を把握できていないんです」


「なに!? 夢をしっかり思い出せ!」

 木島が清斗の肩をがっしり掴んできた。


「そうゆう例もあるのかもしれないですね。夢でしっかり自分の能力を把握できないと、きちんと発動がされないという」

 鈴木は指で顎を触りながら唱えた。


「いやだなぁ。これじゃあ元いた世界と同じ、無能人間じゃないか……」

「安心しろ相棒、俺が守ってやるからよ」

「お前に貸しを作るのはごめんだなぁ」




 そうこうしているうちに周囲には植物が増え、やがて森林へと踏み入り始めていた。

「だいぶ深い森ですね。先が見えない」


 計十四名の一行は探検隊のように一列になり、森の奥へと進む。


「風は森の出口に向かって流れていますね。遭難した時に頼りになりそうだ」

 鈴木がつぶやく。


 最後尾の古川が一定の間隔で植物の茎を折るなどをし、来た道の印としていた。





 しばらく進むと、列の動きがピタリと止まる。先頭の鈴木が小声で語り掛けてきた。

「皆さん、見てください。あそこに動物!」


 その指の先、茂みの向こう側には四足歩行の小動物が二匹いたのだ。頭から三本の角を生やした狐のようなその動物は、ここにいる誰もが初見であった。


「知らねえ動物……」

「まるでゲームのモンスターだ」

「迂闊に近づかないほうがいいね」




「ちょっと、殺してみましょうか」


 非常に軽々しく鈴木が言う。



 どこからか出したダガーナイフを右手に掲げ、誰が止める暇もなくそれを振り下ろした。

 もう一匹は一目散に茂みに逃げ込む。


 小さな呻き声とともに動物は血に覆われ、やがて息を引き取った。


「どうしてそんなことを……!」

 女性社員の南が震えた声を出す。


「たしかに残虐です。けどね、これでこの世界の生物は私達でも倒せることが判明しました。ま、まだ小さいものですが」

「あれ、鈴木さんナイフは?」

「胸にしまいました。ちょっとマニアなところもあってね……非常用に持ち歩いていたものです。ここでは役に立ちそうですね」

「この動物、食べられるかもしれないですね」

「たしかに」

 サバイバル脳と化した皆の談議が始まる。




 するとどこからともなく聞こえてきた甲高い遠吠えが、森の中を震撼させた。




「なんだ、なんの声だ?」

 栄明が目を丸くして固まる。



「わからねえが……すげえ悪い予感はするぜ……」

 そう呟いた武田が次の瞬間、

 茂みから飛び出した巨大な何かに飛びつかれ、木々の間に姿を消したのだ。

 

 唐突すぎたことから皆は唖然とし、武田も飛びつかれた際に反射的に「うんッ」と発したきり、悲鳴のようなものは以降無かった。



「た、武田さん……!?」

「何かに襲われたの?」

「早すぎて……」


 正体不明の敵によって、状況は緊迫する。

 誰もが臨戦態勢に入り、より周囲に警戒を強めた。



 そして、敵はまたすぐにやってきた。


「上だ!!!!!」


 今度は木の上から、下にいる人間たちに向かって巨大な影が飛び出した。


 次にターゲットとなったのは、女性社員の南。

 石を弾丸のように飛ばせる能力を持つ彼女は両手に握っていた石を親指で飛ばせるようセットし、向かってきた怪物に標準を合わせた。

 



 ――が。

 それを発射するより早く、怪物の大きく開いた口が彼女の腕にたどり着いたのだ。


 南の右肩まで呑まれ、鋭い牙が黒いスーツの生地に、柔らかい肉に、めり込む。

「きゃあああああああああああああうあああッッッッ」


 その怪物の見た目は毛の長い巨大な哺乳類のようで、太い四本の足に六つの小さい翼を背に生やした、神話に出てくるような幻想的な生物であった。


「南さん!!」

 鈴木が叫ぶ。

「誰か、攻撃のできる能力を!!」


 攻撃向けの能力を持つ者はいた。

 だが、ここにいる誰もが、襲われ悶絶する南を見てすぐに体が動かなかったのだ。

 

 引きつった表情でひたすら様子を見る中、わずかな正義心から行動に出たのは佐々木だった。

 彼は能力で拳を鉄に変え、南を襲う怪物に向かって走った。

 


 だが、彼もあっという間に無力と化す。

 もう一体、同じ怪物が横の木影から登場し、佐々木の胴体を噛みちぎったのだ。



「――ッ! みなさん、ここは散って逃げましょう!」

 咄嗟に判断を口にしたのは、鈴木である。

 


 その場にいた全員は一目散に四方へ散り、森の中に姿を消した。



 


「はあ……はあ……」

 気づけば清斗は一人、木々の合間を潜り抜けており、




 背後からは凶暴と化した怪物が迫っていた。



間が空いてしまいますが、頑張って更新していきます。

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