まーちゃん
昼下がり。まーちゃんは250ccのビックスクーター。スカイウェブを転がしていた。
ハーフキャップのヘルメットから鮮やかな金髪がなびいている。
そして彼女はとあるレンタル倉庫の空いているスペースにビグスクを滑り込ませた。
停車し、颯爽と降りると鼻歌混じりに自分が借りている倉庫の鍵を開けた。
倉庫といってもコンテナを改造しただけの小さい物だ。
しかし、その中は衣装でビッシリだった。
しかも殆どがアニメのキャラクターが着ているコスチューム。
そう彼女の趣味はコスプレ。
と、言うと非常にアンダーグラウンドな趣味に聞こえるが、最近ではコスプレをする人たち。という意味で「レイヤー」という言葉が広まりアングラ色は潜めつありる。それでも一般の人達からすれば眉をひそめかねない所がまだまだある。
やはり露出度の高いコスチュームやそれに群がる男性陣の反応に関しては世間の目は冷ややかだ。
そのような徐々諸々の問題はあるが様々なイベントで華を添えるレイヤーさん達の存在は今のサブカルチャーにおいては欠かせない存在となっているのも事実だ。
まーちゃんは腰を屈めてコンテナ倉庫の扉を潜る。
そして乱雑に積み上げられた様々なコスチュームを掻き分けながら選んでいく。
「うーん。コレは前回着たかやめとくか。これはチョットちがうか…」
まーちゃんはブツブツと独り言を言いながら次々と用意した段ボール箱にコスチュームを放り投げていく。
「とりあえずこんなもんでいいか」
そう言うとコンテナ倉庫のシャッターを勢い良く閉めた。
そしてコスチュームの入った段ボール箱をビックスクーターのリアシートにくくり付けると跨り発車させた。
まーちゃんの自宅はコンテナ倉庫から五分位の所にある。
彼女はビクスクをアパートの駐輪場に停めると、リアシートにくくり付けたダンボール箱を抱えて自分の部屋へと足を向ける。
まーちゃんの自宅もコスチュームで一杯だ。
実は彼女はこの膨大なコスチュームの為に夜の商売に手を出したのである。
見た目とおりアニメのキャラクターが身につけているコスチュームはそこら辺で買えるものではないだろう。
専門店。もしくは自作かフルオーダーで業者に発注しなければならない。細部までこだわるならその費用たるや膨大だ。
まーちゃんはコスプレのイベントの度に費用の捻出に頭を痛めていた。
そんな時である。自宅の近所でキャバクラ「しゃんぐりら」の前を通りかかった時にレイミの満月の時に起きるあの行動を目の当たりにしたのである。
彼女は思わずビクスクを停め彼女の行動に見入っていた。
「そこにいるのは魔法使いかしら?」
そう話しかけられたまーちゃんは度肝を抜かれた。
彼女の東方プロジェクトでのお気に入りのキャラクターは普通の魔法使い
霧雨魔理沙
だったからだ。源氏名もそこから一文字頂いた。
彼女は何かに引き寄せられる様にレイミに近づいて行った。
聞けばこのキャバクラ今、キャスト不足で悩んでいると言う。
まーちゃんは一にも二にもその話しに飛び乗った。
それから現在に至る。
潤沢な活動資金とカズヨシの営業力のおかげでまーちゃんはレイヤーとしてそれなりに名の通るようになったのは言うまでもないだろう。
彼女は今やサークル「しゃんぐりら」の表の顔なのだ。