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しゃんぐりら ~板橋の桃源郷~  作者: リノキ ユキガヒ
それぞれの東方
6/72

レイミ

とあるシューティングゲームがある。上海アリス幻楽団というサークルが販売しているもので、世間一般にはそれらに関する全てのものを「東方プロジェクト」とよんでいる。

ゲームの詳しい人なら御存知かもしれないが、俗にいう弾幕系STGと言われるもので、博麗霊夢という巫女が、結界で仕切られた

「幻想郷」

を舞台に日本古来の妖怪や西洋の怪物が起こす「異変」というものを解決していくゲームだ。

このゲームの特徴は通常のシューティングゲームより物語性を色こく持たせた所だろう。

それに主人公・自機は言うに及ばず。登場する殆どが女性キャラクターである。

それ故に二次創作のモデルとして扱い易く、その規模はもはや同人誌業界の一大巨塔として君臨していると、言っても過言ではない。

なかには著者を含め「東方プロジェクト」がシューティングゲームである事を知らない人もいる程、二次作品の裾野は日本はもとより海外へも広がっている。


と、些か簡単ではあるが彼女達。「しゃんぐりら」の面々が仕事そっちのけで夢中になっている「東方プロジェクト」の概要だ。


「さてと…」

自宅に戻ったレイミは一人そう呟くと机へと向って椅子に腰を落ち着けた。

机の上にはトレーサーがデンと置いてあり、A4位の画用紙が数枚散乱していた。

彼女はそれを机の角へと追いやると真新しい漫画原稿用紙をトレーサーの上へと置いた。

そしてシャーペンを二、三回ほどカチカチと鳴らし芯を繰り出した。

レイミは慣れた手付きでシャーペンを漫画原稿用紙の上に滑らせる。

サラサラとリズムよく、一人のキャラクターが描き上がっていく。

パッと見は只の幼い少女に見えるが、決定的に違うのはその少女にコウモリのような羽根がある事だ。

そして口元からは八重歯にしては少し大きい先の尖った歯が出ている。

簡単にいうとキバの様な感じだ。

これが彼女の愛してやまない東方プロジェクトのキャラクター。


レミリア・スカーレット


だ。


彼女はその描き上がった絵を一旦愛おしそうに見つめると、次の絵を描き始めた。

時に難しい顏をしながら、時に楽しそうな顏をしながら彼女は漫画原稿用紙に向って絵を描いていく。

大分時間が経った頃だろうか?深夜に始めて、気が付けば朝日が登っていた。

レイミの部屋のカーテンの隙間から朝日が射し込む。

その一筋の光が彼女の机に射すとそこでレイミは朝になった事を悟る。

「朝か…」

彼女はそう呟くとシャーペンを一旦机に置いた。

そしておもむろ立ち上がりキッチンへと向った。

マグカップを手に取り、インスタントコーヒーを濃いめに淹れて再び席に着いた。

そしてコーヒーに二口ほど口を着けると次はGペンを握った。

そして、インク壺を開けペン先にインクを着ける。

インク壺の淵で余計に付いたインクをしごき落とすとレイミはひと呼吸置いて先ほど描き上げた、鉛筆描きの線の上をなぞる様に描き始めた。

俗にいうペン入れの作業だ。

カリカリと原稿用紙とペン先の擦れる音がする。

今まで鉛色の鉛筆描きで描かれていたキャラクターの輪郭が黒く浮かび上がってくる。

この間。レイミは何かに取り憑かれたように黙々とペン入れの作業をこなしていく。

そしてそれを終えると漫画原稿用紙を手に取り、インクが乾いたのを確かめると消しゴムをかけていく。

鉛色の線は消え、黒く鮮やかなインクのみの線がクッキリと浮き出てくる。

そしてレイミの手によって描かれたキャラクター達はまるで命を吹き込まれたかの様に漫画原稿用紙の上にその姿を表した。

彼女はそれを見るとニンマリと笑みを浮かべた。

と、それと同時に睡魔が彼女を襲った。

「う…。とりあえず続きは一眠りしてからにするか…」

レイミは絞り出す様に言うとベッドに倒れこんだ。

窓の外からは小学生が楽しそうに登校する声が聞こえて来てた。



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