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しゃんぐりら ~板橋の桃源郷~  作者: リノキ ユキガヒ
真紅の御旗の元へ
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麻布から六本木

「あー食った食った」

 ヒトミが満足気にお腹をさすりながら闊歩する。

「ったく。今月の稼ぎがパーよ」

 レイミが無粋な面構えで言い放つ。

「元はと言えばあなたが締切守らないからなったのよ」

 ヒトミはニヤけた表情をするとレイミの方をチラと見た。

「そうだけどさ…」

「でも、奢りだとなんでメシってあんなに旨く感じるんだろー」

 口籠る彼女をよそにまーちゃんがあっけらかんと言葉を放つ。

「あんた達少しは遠慮ってもんを知りなさいよ」

「でも、ママがそういう事をすると奢る方に失礼だから遠慮をしないのが礼儀だよ。って言ってましたよ」

「ハハっ…。あなた憎いほど純粋ね」

 レイミが遠い目をする。

「しかし、あれだなー六本木とか来るの久々だなー」

 ヒトミが辺りを見渡しながらそう言うとそれにレイミが続いた。

「んー、私がいた頃とは少し変ってるけどこの雑多な雰囲気は相変わらずね」

 しゃんぐりらの面々は西麻布で食事をした後その足で六本木にきたのだ。

 確かに彼女の言う通りに六本木の街を一言で言うなら雑多だ。なぜ、そのような雰囲気を醸し出しているのか?

 それは、赤坂にあるアメリカ大使館を筆頭に各国の大使館が赤坂や麻布等に集中しているからだ。

 そしてそれら大使館の中心位置くらいにある街が六本木。

 国際色豊かな雰囲気と麻布や新橋、赤坂などの古式ゆかしき日本の雰囲気が混ざり合っているからだろう。白金界隈に至っては戦中の空襲から奇跡的に逃れられたのでその色合いは更に濃ゆい。

 道行く人達も、諸外国の方から日本の典型的なサラリーマンなどだ。

「西麻布から六本木って歩いていけたんですね」

 しおんの言うとおり、西麻布と六本木は隣りあわせだ。

 彼女達は今、六本木でも最も六本木らしい場所。六本木の交差点にいた。首都高の高架にローマ字で「ROPPONGI」と書かれているあそこだ。ドラマや映画なんかで見たことがある方もいるかもしれない。

「ロアビルは健在だなー」

 レイミは雑居ビルの影から東麻布方面に見える大きめのビルをみる。

 六本木の旧ランドマーク的な建物、ロアビル。

 反対側赤坂方面。外苑東通りに面した新ランドマーク的な建物、六本木ミッドタウン。

 更に西麻布方面を見れば六本木ヒルズ。

 そして、それら高層ビルを突き抜けるように鎮座するのが東京タワー。

「わぁー、高い建物ばかりでなんだか違う世界に来たみたいですね。」

 しおんがそう言いながら目を輝かせる。

「確かに店の近所には高層ビルなんてないからなー」

 まーちゃんも普段は味わえない雰囲気を肌で感じていた。

「ねぇレイミ。東京タワーって歩いていけるの?」

 ヒトミがレイミに話しかける

「まー。少し遠いけど行けるわよ」

「じゃぁ行きましょうよ!」

 それを聞いたしおんが六本木の交差点に背を向ける。彼女のはくスカートの裾がフワリと舞う。

「ちょっ、しおん!」

 レイミが慌ててしおんの後を追う。

「ったくしゃーねーなー」

 それを見たまーちゃんが頭を掻きながら小走りに追う。

「ちょっと、もー」

 最後に質問の主であるヒトミが駆け出した。六本木の夜空に彼女足音が響くが、それも雑踏に直ぐかき消された。


 六本木を背にして幾らか歩くと外車のショールームがあり、彼女達はそれらを横目に交差点を渡る。

 麻布中央郵便局を左手に見て更に行くと落ち窪んだ珍しい交差点が目に入る。

 それを越すと東京タワーの真下に出る。しゃんぐりらの四人はそれを見上げる

 ライトアップされ朱色に輝く鉄鋼のそれは摩天楼という言葉さえ霞んで見える程の存在感を放っていた。

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