なんだか
「それでは、幻想郷の皆さん」
主賓席に鎮座する橋本は当主ぜんとした振る舞いでレイミ達に話しかけてきた。
「別に私達は幻想郷の住民ではないけどね」
レイミがボヤきを吐き捨てる。
「ま、ここで詮索は不要です。世を忍ぶ仮の姿と、しときましょう」
「ふん、アンタ変なところ話せるじゃない」
長方形に組まれたテーブルにはすっかり食事の準備が整っていた。
「いよいよね」
ヒトミが息を飲む。
「ここまで来たら毒を食らわば皿までよ」
「レイミ、アンタがそう言うと本当に皿まで食べそうで恐いわ」
「失礼ね」
彼女はそう言うとソッポむいた。
「今日は築地でよい食材が手に入ったらしいので海産がメインになりますよ」
彼はそう言うと一旦笑みを浮かべた。
「そ、そう」
レイミはとりあえず返事はしたものの心中は穏やかではなかった。
「あーた達につきあわないで帰っておけばよかった」
珍しく向かい側の席にいるまーちゃんがボヤく。
「でも、何ができるでてくるか楽しみ」
逆に普段は物怖じするしおんがこの事を楽しんでいた。
「実家暮らしは気楽でいいわね」
「やめなレイミ」
皮肉を言うレイミをヒトミが戒める。
「あの~」
そんな彼女達のやりとりを見てか?一人の女性がレイミ達のテーブルな近づく。
「何か私達の接客に至らない事がございましたでしょうか?」
レイミは慌ててその声の方を向く。そこには普通の店員とは違った雰囲気を持つ蝶ネクタイにタイトスカートのギャルソン風の女性がいた。
「いや、大丈夫。ただ…」
レイミが口ごもる。
「なんでもおっしゃって下さい」
彼女のその余りに真摯なまなざしにレイミは手招きをして耳打ちをした。
「ぷっ」
思わずその彼女は噴き出した。
「ちょ、ちょっとなによ、貴方がなんでもいいって言ったから言ったのに」
レイミが口を尖らせて、無粋な表情と共に言葉を吐き出す。
「いえ、申し訳ございません。お代の方は既に橋本様から頂いておりますのでご安心ください」
「え?そうなの?」
その事を聞いてレイミの表情が一転、パっと明るくなる。
「はい」
彼女は微笑むと彼女達のいるテーブルを離れた。
「ねぇ、さっき人何?」
ヒトミが隣の席から肩を寄せる。
「んー。解んないけどココは橋本のオゴリだって」
「本当?」
ヒトミが目を丸くする。
「そうみたい。でもこんな高そうなお店本当におごってもらっていいのかしら?」
先ほどと違いレイミの表情が少し曇る。
「そうねぇ、本人がいいって言うなら構わないじゃないの?」
「確かにそうなんだけど、言いだしっぺは私だし…」
レイミはそう言うと橋本の方に視線を飛ばした。
それに気付いた橋本は彼女と視線を合わせる。
「?」
橋本はレイミの表情から何かしらの違和感を感じ取った。それを確認したかのように彼女は口を開いた。
「ねえ、アンタこんな高そうなお店。どこの馬の骨か分からない連中にお金出して本当に大丈夫?」
「なんて事言うんですか!?おぜう様!!」
橋本は声を荒げる。すると橋本付きのメイドと先ほどの女性がレイミ達のテーブルにスッ飛んできた。
「どうかされましたか?お客様」
メイドが橋本とレイミの間に入る。
「いや、何も」
レイミはそう言い放つとテーブルに視線を落とした。
「なんか、このテーブルいわくつきになっちゃったみたいよ」
ヒトミはそう一言漏らすと水を一口飲んだ。
先ほどテーブルに来た二人組が遠巻きにレイミ達の様子を伺っている。
「…」
レイミはそちらの方をチラリと見やる。
程なくすると料理がテーブルへと運ばれて来た。




