スペルカード「ばっくれ」
「あー。生き返るわー」
大きな湯船に浸かって思わず声を出すヒトミ。
「大きいお風呂は気持ちいいですね」
「おぉ~、酒が抜けてゆく~」
しおんとレイミも思い思いに声を出す。
「つーか、まーちゃん何でそんな端っこにいるのさ?」
レイミが湯船の端で背中を向けているまーちゃんに視線を飛ばす。
「わ、私はここで構わないからッ!」
少し慌てた感じでまーちゃんは彼女達に言葉を投げかける。
「まぁ、あんたがそれでイイってなら構わないけど」
いささか腑に落ちない感じでレイミも言葉を落とす。が、
「なんか見られても困るモンでもあるの?」
意地悪く彼女は再びまーちゃんに言葉を投げかけた。
「おっ?まだお尻に蒙古斑があるとか?」
「ブフっ⁉ヒトミそりゃないだろ」
「じゃぁ、なんなのさ?」
ヒトミの眼の奥が怪しい輝きを宿す。
「べっ!別に何にもないからあーた達はゆっくりしてな!私は先に上がってるから!」
そう吐き捨てるように言うとまーちゃんは湯船から慌て立ち上がった。
するとレイミとヒトミが絶妙なコンビネーションで彼女を取り囲む。
「させるか!」
ヒトミはそう叫ぶとまーちゃんの肩を背後から押さえつけた。
ヒトミの体重がまーちゃんの肩にのし掛かる。
「わぁ!」
と声を出してまーちゃんはその重さに耐えかねて思わず片膝を付く。
続けざまにレイミが彼女に抱き付きそのまま湯船に押し倒した。
「ザバーン」という音と共にしおんの目の前にお湯の水飛沫が上がる。
水面に沈むまーちゃん。
「ぶはぁ‼」
しかし、それは一瞬だった。
「チィッ!普通の魔法使いの癖にちょございな」
レイミはそう言い放ちながら己の顔にかかったお湯を腕で乱暴に拭った。
慌て立ち上がるまーちゃんにヒトミは桶で汲んだお湯を乱暴に引っ掛けた。
「日符ロイヤルフレアー‼」
しかしそれは、違う方向から来たお湯と叫び声に弾き飛ばされた。
「スペルカード⁉」
思わずヒトミは叫びその方を見た。
湯気の向こうに影が浮かび上がる。
そのお湯を放ったのはしおんだった。湯気が晴れると彼女の姿が露わになる。
「しおん…。あんた」
レイミが彼女のその行動を呆気に取られた表情で見る。
「まーちゃん大丈夫?」
しおんは彼女をレイミとヒトミから守るように立つ。
「ほー、しおん。そういう訳ね」
ヒトミが口の端を歪めながら彼女を睨みつける。それを受けて凛とした表情のしおん。
「ヒトミさん。わたしだってやるときはやりますよ‼スペルカード‼」
そう言い放つとしおんは湯船のお湯を桶に汲み取った。
「面白い!かかってきなさい弾幕パラノイア‼」
「力を!水符ベリーインレイク‼」
二人のオケから放たれたお湯は宙を舞う。
「チョットお客さん達‼」
突如、浴室に轟く店員の怒号。
「他のお客様から苦情がきてます!静かにしていただけませんか⁉」
はたと我に返るずぶ濡れのヒトミとしおん。そしてまーちゃん。
彼女達は米つきバッタのように謝り倒したのは言うまでもないが、どうも一人が見当たらない。
「あ~。コリャ効くわ~」
ロビーにあるマッサージチェアでくつろいでいるレイミがそこにはいた。
因みにブルーレイバージョンでも彼女達の全裸姿は拝めませんのであしからず。




