ホイ・コー・ロー!
「あっ!これって…」
レイミの原稿を覗き込んだカズヨシが思わず声をあげる。
「げ!」
ヒトミも同じ様な声をだす。
「フフン。どーよ今からあんた達はお嬢様にメタメタにヤられるのよ」
レイミは怪しい含み笑いをするとシャーペンでラフスケッチをどんどん漫画原稿用紙に描いていく。
この簡単な走り書きみたいな状態をネームという。
いわば漫画の話を大まかに決めていくのだ。ドラマや映画でいう絵コンテみたいなモノだ。
「くそっ、時間さえあればウチの店をネタにするのはボツにするけど、今回ばかりはしゃーない」
背に腹は変えられない。カズヨシはそう言うしかなかった。
凄まじい勢いでどんどんネームが出来上がる。
そしてヒトミがそれを受け取るとセリフの部分だけを抜き取っていって自前のノートパソコンで、データ化していく。
更にしおんはヒトミが手を付けていない原稿から背景など自分が手を付けられそうな作画作業に取り掛かった。
まーちゃんはそれを唖然と見ていた。
「フヒッ。フヒヒッ…。フヒィ」
「レイミあーた。何かに取り憑かれてるの…?」
彼女の余りの形相にまーちゃんが後ずさる。
そして自分の足元に視線を落とした。
ヒトミとしおんは、いつの間にか眼鏡をかけており、それがノートパソコンのディスプレイから発せられる光を怪しく反射させていた。
「ぎょっ。何だ皆んなしてなんかヤバい薬でもやってる様な雰囲気だぞ」
まーちゃんはその余りにも現実離れした光景にたじろいだ。
「まーちゃん。こーなれば大丈夫だ」
カズヨシが何故か知った様な口を彼女にきく。
「何がだよ」
しかし、彼女にはそれが分からないらしい。
「まぁ、イイからイイから。俺達のでる幕はなさそうだからコンビニでヤツらのメシでも調達してこようぜ」
「まぁ、あーたがそう言うなら構やしないけど。だったら、さっき行きがけに二十四時間のスーパーあったからそこにしない?」
そう二人は言うと部屋からそっと出た。
「あれ?なんかいい匂いがする?」
我に戻ったレイミが突然、部屋の中をキョロキョロする。
「あ?ほんと」
ヒトミも同じ事をする。
「何でしょう?」
しおんも今気付いたようだ。
三人はその匂いに導かれる様にキッチンへと足を向けた。
リビングとキッチンは扉で仕切られており、レイミは扉を開けた。
するとそこではまーちゃんが豪快に中華鍋を振るっていた。
「え⁉」
自分達が知らない内にまーちゃんとカズヨシが食事の準備をしていたのだ。
「よう。もうちょっとでできるから待ってろ」
食器の類を置きながらカズヨシは彼女達を食卓へと促す。
「あぁ、うん」
そう言うとレイミ達は席に着いた。
食卓の中央には大皿が置かれておりそれを取り分ける為か?銘々の席の前には取り皿がある。
そこに「ジュー!」っと豪快な音を立てながら中華鍋がテーブルに近づいて来た。
「わぁ!回鍋肉‼」
しおんが感嘆の声をあげる。
「おう!撮影会のお礼も兼ねて私からだ!皆んなたんと食べて馬力付けてくれ‼」
大皿に盛られた回鍋肉。それは湯気と共になんとも食欲をそそる匂いを放っていた。
山と盛られた回鍋肉はアッという間に彼女達の胃袋に収まったのは言うまでもないだろう。




