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しゃんぐりら ~板橋の桃源郷~  作者: リノキ ユキガヒ
マジで⁈締め切り五日前‼
37/72

かんづめ(専門用語)

「なに言ってるんだ‼これ以上伸ばせる訳ないだろう‼」

 キャバクラ・しゃんぐりらの店内にカズヨシの怒号が響く。

 それに思わず首をすくめるレイミ。

「あとほんのちょっと…」

 しかし彼女は何とか食い下がる。

「馬鹿‼もうホームページでも発表してるし、委託先にも言ってあるんだ!今更伸ばせる訳ないだろう‼」

「そんな~、硬い事言わないでよ。たかが同人誌でしょ?」

「たかが~?」

 その言葉を発した途端カズヨシの顔色が更に紅潮する。

「おまえはそういう風に思いながら原稿に向かっていたのかよ‼第一お前だって東方二次作に救われた身だろうが!客の信用を落とすような事は絶対に俺が許さん‼」

「そ、そうね…」

 カズヨシの余りの剣幕に流石のレイミも反論は出来なかった。

「レイミさーん。私がアシスタントしますから頑張りましょう」

 横からしおんがレイミに話しかける。

「私も、撮影会終わってヒマだから何か手伝うよ~」

 まーちゃんも寄り添う。

「で、ぶっちゃけ何ページのこってるの?」

 ヒトミが輪の外から言葉を放つ。

 レイミはうつむきながらピースサインの様に指を二本差し出した。

「二ページ?」

 ヒトミが眉間にシワを寄せる。明らかに違和感を感じてるようだ。

 それに反応するかのようにレイミは首を横に降る。

「…。あーたひょっとして」

 まーちゃんが何かを察した様に口をアングリさせた。

「ってことは…」

 幾分鈍いしおんも何か勘付いたようだ。多少顔が青ざめてる様にも見えなくもない。

「二十ページも残してるのーッ⁈」

「エーッ‼」

 ヒトミの絶叫と他の面子の悲鳴が入り混じる。

「ったく。あと五日しかないのに今まで何をしてたんだよ」

 カズヨシが呆れた口調でレイミに言葉を飛ばす。

「だって~」

 レイミはモジモジしながら言い訳を考えてる様だったが、他の面子が既に原稿を仕上げていたので、それを引っ込めた。

「しゃーない。今日から締め切りまで全員でレイミん家でカンズメだ」

 カズヨシが他のメンバーを見ながらそう言い放つ。

「ちょちょちょ、ちょっと待ってよ。てー事は私達お店が終わっても帰れないって事?」

 ヒトミが慌てた口調でカズヨシに質問を飛ばす。

「恨むんならレイミを恨め」

 しかし、カズヨシは冷たく言い放つだけだった。

 こうなると彼はテコでも動かない事をヒトミは知っている。

「すまんこって」

 アシスタントの当てができて少し安心したのか?レイミがおどけた調子でヒトミに頭を下げた。

「全くふざけてるんじゃないわよ‼」

 ヒトミはそう言うとボックス席にドカッと腰をおろした。

「原稿が仕上がった暁には何か考えておきます」

 レイミはそう萎んだ声で言うと出口へと体を向けた。


「焼き肉」


 店内に突如、何の脈略もない言葉が響く。

「へ?」レイミが抜けた声と同時に足を止める。

「麻布で焼き肉奢りなさいよ。レイミ」

 その声の主はヒトミだった。

 レイミは止めた行き足をヒトミのいるボックス席へと向け直して、駆け寄った。

「奢る!奢る!神様、仏様、ヒトミ様、奢ります‼あの辺りだったらいい店知ってるから‼」

 普段の勝ち気な彼女からすると想像し難い位にヒトミの前で膝まづくレイミ。

「おっし。じゃぁ今からレイミん家に行くぞ~」

 しゃんぐりら一同はカズヒロの引率の元、レイミの自宅へと向かって行った。


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