表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しゃんぐりら ~板橋の桃源郷~  作者: リノキ ユキガヒ
魅惑の撮影会
27/72

例のプールが…

 下駄の音は幾重にも連なるカメラマン達を割いて来る。

 そしてプールサイドまで来るとその行き足を一旦止めた。

 すると今までプールサイドに降り注いでいた日の光がブラインドによって遮られた。

 プールには照明だけの冷い光りしか無くなった。

 そこにいた誰もが思ったに違いない。


「なぜ、降り注ぐサンセットを遮るんだ…?」


 その答えは次にあった。プールサイドに佇むまーちゃんは皆に背を向けたまま進み続ける。その先は水の張られたプールだ。

 いよいよ行き場が無くなったがまーちゃんは止まる気配を見せない。

 躊躇う事なく彼女は水面へとその足を落とした。

 パシャりと水の弾ける音がしたと思ったその瞬間に、室内の照明が全て落ち場内は漆黒の闇に包まれた。

「トラブルか⁈」

 場内に緊張の波が瞬時に伝播する。

 しかし、次の瞬間にプールが怪しく水色にジンワリ光り出した。

 水面に立つ様に浮かび上がる一人の女性。

 その姿は正に三途の川の水先案内人


 死神・小野塚小町


 だった。

 皆が何かに取り憑かれた様にその現実離れした光景に言葉を奪われた。

 水面に浮かび上がる、紅い二つに結われた髪。蒼い袴。そして『死神』象徴でもある人の背丈位はあろうかという巨大な鎌。

 まーちゃんの演じる小野塚小町は正にこの例のプールを三途の川へと変えてしまった。

 その圧倒的とも言える雰囲気はコレが撮影会という事を忘れさせてしまう程だ。


「ほれッ。どうした!アタイの晴れ舞台だ‼ボヤっとしてるんじゃないよ‼」


 まーちゃんは檄を入れるようにそう叫ぶ。

 そこにいま全ての人間がコレが撮影会という事を思い出したかの様に一斉にシャッターを切り始めた。

 三途の川の水先案内人は稲光の様なフラッシュにその身を捧げる。

 最早そこに居るのはレイヤーのまーちゃんではないと誰しもが思っていたであろう。

 彼女が死神・小野塚小町であると。

 第三の撮影場所。バルコニーへと会場は更に移る。

 例のプールの興奮冷めやらぬ会場。そこにまーちゃんは再び姿を表すがそのなりは至って普通だった。

 と、いうか彼女の格好が至って普通に見える位、


 霧雨魔理沙


 に成り切っていたからだ。

 誰もがその「普通」という圧倒的な存在感に染められた。

 まーちゃんは集まったカメラマン

 達に笑顔を振りまきながらバルコニーを背にした。

 降り注ぐ太陽。青い空に映える白黒の衣装。風に棚引く金髪。

 よく一枚の絵を切り取った様にと、言われる表現があるがこれがそれ程しっくりくる場面は無いだろう。

 レイミは自分の役割も忘れただ、ただ、それを見つめるだけだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ