しおんがなんか…
カズヨシが三人に説明をしようとした矢先。しおんが先に口を開いた。
「カズヨシさん。本日集客はどれ位見込まれているんですか?」
「え?えーっと、四十人位を三セット。おおよそ百二十人前後かな?」
「入場の条件は?」
「整理券をネットで購入。それをダウンロード」
「勿論、シリアルナンバーは入っているんですよね」
「あぁ」
「ナルホドわかりました。私は一階の入り口でそれを確認してお客を促せばいいんですね」
「あ、あぁ」
「イレギュラー対応は?」
「基本ないと思うけど、判断に困れば携帯で俺を呼んでくれ」
「わかりました」
「入場は定刻に?」
「今の所大丈夫」
「ずれ込む場合は?」
「このスタジオ内の空きスペースで待機かな?」
「スタジオ側の承諾は?」
「勿論ある」
「遅刻した方は?」
「指定の時間内なら入場可ただし延長はできない」
「解りましたその旨を伝えてから入場して頂きます」
まるで人が変わったかの様に淡々と質問をしてはそれをメモしていくしおん。
「では私は早めに降りておきます。近隣を含め早めに来たお客様への対応が発生するかもしれませんので」
そう、彼女は言うと足早にメイクルームを後にした。
ポカンとする残された面々。
「なんか変なスイッチ入っちゃったけど大丈夫かな?」
レイミが彼女が後にしたメイクルームの入り口をみながら呟いた。
「どうだろうね?」
ヒトミはコレと言って気にしていないようだ。
「会社務めの経験があれ位普通だろ」
カズヨシもヒトミと似たような反応を示す。
「で、お前らは自分の役目わかってるな」
「私はスタジオの入り口で整理券とリストを付け合わせる」
カズヨシの質問にヒトミが即答する。
「私は…っと。人員整理?ってナニするの?カズヨシ」
「あぁ。客が暴れないように見とけって事」
「はぁ⁈私が一番大変そうじゃない‼」
「逆に何も起こらなければ一番楽だぞ」
「え?そうなの」
カズヨシの口車に軽々とのってしまったレイミ。
「逆を言えば何かおきたら一番大変って事ね」
ヒトミが一人ボソリと呟く。
「おっし!とりあえずもうすぐ入場だ‼みんな頼むよ‼」
そうカズヨシは威勢良くメイクルームで言い放った。
「なんか店にいる時と全然テイションが違うんですけど…」
レイミが冷めた目付きで彼を見つめる。
「まぁ、これも店の為、同人誌の為」
ヒトミが彼女の後ろから言葉を重ねる。
「ったく。しゃーねーな」
そうボヤくとレイミはメイクルームを後にした。
「ハイハイお二人さん。今日は頼りにしてますよ」
「へーい」
カズヨシの朗らかな口調とは真逆の返事を返すレイミとヒトミだった。




