役割分担
「うはっ。そんな事で有名な所があるんだ」
エレベーターの中でレイミが声をあげる。
「ま、一応そのテの人達には有名な所なのよ」
カズヨシもそれに答える。
「ナルホド、ナルホド。で、ヒトミはソレを知っていたと…」
嫌らしい目付きでレイミはヒトミを舐める様に見ていく。
「ちょ、なによ」
「ヒトミのムッツリスケベ」
「中学生か‼」
「ブフぉっ‼」
彼女達のやり取りに思わず吹き出すカズヨシ。
そしてエレベーターは撮影会の会場であるスタジオへと到着した。
四人はエレベーターから一斉に降りて行く。
「おはよーございまーす」
すると元気のいい声が耳に飛び込んで来た。
エレベーターを出てすぐがスタジオのフロントとなっており、スタッフジャンバーを羽織った女性が受け付けにいた。
クラブ・しゃんぐりらの面子は挨拶を返すと、恐る恐る足を踏み入れて行く。
「なんかどんな時間でも、おはようございますって挨拶されると業界人みたいね」
「そうね」
レイミがヒトミに耳打ちをする。二人の表情は終始ニタニタしている。
「でも、スタジオっていっても案外普通のマンションみたいな感じなんですね」
しおんが辺りをキョロキョロと見渡す。
「もしくはホテルのスイートルーム?」
ヒトミもスタジオの印象を述べる。
「スケベなヒトミが言うスイートはラブホの方かな?」
レイミがからかい半分に彼女の肘をツツきながらそう言う。
「失礼な!私だってホテルのスイート位泊まった事あるわよ!」
顔を赤らめながら反論するヒトミ。
「確かにそういった趣きもありますよね」
ヒトミとは対照的にサラッと言い流すしおん。
「なんか、あんたが言うと逆に現実味がありすぎて引くわ」
「そう。私達と育ちが違うからね」
レイミとヒトミはしおんに冷めた視線を送る。
「おーい、お前ら何してんだ。こっちこいよ」
カズヨシが三人を呼ぶ声がする。彼は別室の所から手招きをしていた。
室内を物色していた三人は慌てその部屋へと足を進めた。
そこはメイクルームでまーちゃんが鏡台の前に座っていてスタイリストが彼女をメイクしていた。
「おぉ~本格的~」
思わずレイミが感嘆の声をあげる。
「やっぱ素人がするメイクとは全然違うわね」
ヒトミがまーちゃんの顔を覗き込む。
「こういうのって憧れますよね」
しおんがウットリとした感じで鏡に映るまーちゃんを見る。
そんな彼女達の反応を照れ臭そうに受け止めるまーちゃん。
「じゃぁ、今日のヘルプの人はこっちに来てー」
カズヨシはそう言ってレイミ、ヒトミ、しおんをメイクルームの端へと集めた。
「うーん。なんかヘルプって言葉は屈辱的ね」
「確かに。お水としては格下扱いね」
レイミとヒトミが愚痴をこぼす。
「ったく、お前らな~。とりあえずコレを胸からぶら下げとけ」
そう言ってカズヨシはスタッフIDを三人に手渡した。
「じゃぁ、役割分担を言うぞ」
そう言うと彼は更にプリントアウトした紙を彼女達に手渡した。
不思議そうな面持ちでそれを受け取るレイミとヒトミ。
しかし、それを受け取ったしおんの表情が変わった事に他の三人は気付いていなかった。




