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しゃんぐりら ~板橋の桃源郷~  作者: リノキ ユキガヒ
魅惑の撮影会
23/72

例のプール

 都内某所。まーちゃんとカズヨシを除くしゃんぐりらの面々はいつもとは勝手の違う雰囲気に戸惑いを隠せなかった。

「ねぇ、本当にここであってるの?」

 レイミがジトっとした目でヒトミを見る。

 ヒトミはスマホに表示された地図アプリを見ながら

「場所はあってるわよ」

 と疑心暗鬼ながらも答える。

「どー見ても普通のマンションですよね」

 しおんも不安を拭えない様子だ。

「てかさ。場所は合ってるとして、どうやって入るのよこのマンション?オートロックよ」

 レイミが最もらしい質問をとばす。

「確かに」

 ヒトミもうなずく。

「どうしましょう?」

 しおんが不安気な声を二人に投げかける。

「うーん…。考えても始まらない!ここは中央突破あるのみよ‼

 」

 そう言ってレイミはズカズカとマンションのエントランスに乗り込んだ。

 それと同時に自動ドアが開き中なから人が出てきた。

 レイミとその人は鉢合わせした。

「あ!お前ら何してんだ‼演者より遅く入るスタッフがいるか⁉」

 聞き覚えのある声がエントランスに響く。

 何とマンションから出てきたのはカズヨシだったのだ。

 彼は普段とは違い背広姿で手には案内用の看板を持っていた。

「あんたこそ、何て格好?」

 レイミが不思議なモノを見る様な感じで彼を指差す。

「あぁ?当たり前だろ。こっちも金もらってやってンだ。変な格好でヤル訳にはいかねーだろ」

 そう最もらしくレイミに言い放つ。そして

「お前らこそ、キャバ嬢全開の格好で来やがって」

 と呆れ半分に言葉を返した。

「えぇ~⁈撮影会の手伝いなんて何着て来ていいか分からないよ~」

 レイミが困った感じで言うがカズヨシはしおんを見て一言。

「見ろよ。しおんちゃんはちゃんとした格好で来てるじゃないか?」

 と、背広姿の彼女に視線を飛ばした。

「ぐ…。アンタ中々あざといわね」

 レイミは歯ぎしりをしながら彼女を見た。

「ま、レイミ。やっちまったものはしょうがない。今日は我慢しよう」

 ヒトミが解ったような口をきくが彼女の格好もどう見ても「夜の住人」だ。

「ったく。アンタに言われたくないわよ」

 レイミは鼻息荒くそう言うと自動ドアを潜った。

 カズヨシは案内の看板をエントランスに立てかけると、しおんとヒトミを中に入るように促した。

 そして慣れた感じでエレベーターの呼び出しボタンの↑を押す。

 エレベーターがくる間。

「あの~カズヨシさん。撮影会の告知、ホムペで見たんですけど『例のプール』ってなんですか?」

 と、しおんが不思議そうな表情で彼に問いかけた。

「おーそうだ。なんだよソレ?特別なのか?」

 レイミも彼女の質問に言葉を重ねる。

「あー…なんてーゆーのかなー」

 カズヨシがあからさまに気まずそうな表情をする。そして視線を彷徨わせていたら一人ダンマリを決め込んでいるヒトミが目に入った。カズヨシの口元が悪そうに歪む。事情を知ってそうな彼女に彼は

「なぁヒトミ。お前そういうの詳しそうだから二人に教えてやれよ」

 意地悪くそう言い放った。

「え⁉」

 と、ヒトミが引っくり返った声をあげる。

「何よ?そんなに言いにくいの?つーか、言いにくいプールって何よ」

「ですよねー」

 レイミとしおんが不思議そうな視線を彼女に投げかける。

 そして問い詰められて困り果てた表情を浮かべたヒトミを見計らってか?カズヨシは『例のプール』について二人に説明をした。

 その説明が終わる頃にエレベーターは彼女達が待つ地上階に到着のベルを高らかに鳴り響かせた。


「チーン」


 因みに男性諸君であれば「例のプール」説明は不要かと…。

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