まー、そうなるわな
「ま、だからつってしおんに何も教えない訳じゃーない」
「よろしくお願いしますよ」
ちょっと呆れた口調になるしおん。
「ま、誰か通りかかればいいんだけ…ど…」
と言いながら辺りを伺うレイミ。
一応幹線通りに面しているので夜にしては交通量はあるが人影は正直殆ど無いに等しい。
すると二人乗りのバイクが急ブレーキ音を響かせながら二人の前に急停止した。
「うひゃー‼キャバ嬢のオネーさんこんな所で何してるの?」
明らかに未成年と思われる二人組はバイクに跨ったまま、レイミとしおんに話しかける。
「あぁ?何って客待ってンのよ?」
腕を組み高圧的に彼らに接するレイミ。
「えー⁈こんな東京のハズレにあるキャバクラに客なんてくるの⁈」
リアシートの彼がからかい気味にレイミに話しかける。
「ッチ。余計なお世話よ」
言葉を吐き捨てるレイミ。
「そっちのオネーさんもそうなんでしょ」
ハンドルを握るライダーはしおんに話しかける。彼女は無言でレイミの影に身を潜める。
それを見たレイミは彼女の心情を察した。一歩前に出てバイクの二人組に話しかける。
「あんた達とくっちゃべってる暇は無いの。早くどっか行ってちょうだい」
「てーか、さっきまでオネーさん缶コーヒー飲んでサボッてたじゃん」
「だから?」
今まで表情をあまり表さなかったレイミの目付きが急に鋭くなる。
「えっ…」
彼女の変わりように彼らのニヤけた表情が凍り付く。先ほどとは明らかに違う殺気だったレイミの気配を感じるとその軽口を結んだ。
「だから何だッつてんだ‼聞こえねーのか‼このクソ餓鬼共が‼イキってじゃねーよ‼」
ドレスの裾からハイヒールと脚が出たと思ったらそれはバイクのクランクケースに「カツッ」という音を発しながら載った。
片足をバイクに乗り上げながらタンカを切ったレイミ。
余りの気迫に慌てバイクを急発進させるライダー。フラフラとバランスを崩しながらも何とか進んで行って難を逃れる。
「ったく。近頃のガキンチョは躾がなってねーな」
そう呟きながらバイクの走り去った幹線道路を見るレイミ。
「ヒャッホー‼オネーさんどこのお店ー?送っていくよー」
次はいかにもっといったエアロパーツをつけたワンボックスカーが止まりその助手席から軽そうな男性が、窓から乗り出しレイミに話しかけてきた。
しかし腹の虫の居所が悪いレイミは
「あぁ⁈ウッセーな‼どっか行けよ‼」
と鬼のような剣幕で怒鳴り散らす。とばっちりというか?流れ弾というか?そのワンボックスはタイアを軋ませながらその場を走り去った。
「ふんッ!」
鼻から勢いよく息を吐き出すレイミ。
「あら?しおんはどこ?」
彼女の気配が自分の背後から消えた事に気が付いたレイミは辺りを慌て見渡す。
やがて路地から自分に向けて視線を感じたレイミはそちらの方を見る。
そこには半身を隠して自分を伺うしおんの姿があった。
彼女の瞳は何かに脅えてる様にも見えなく無い。気まずくなったレイミは
「あーっと。今のはしつこい客に絡まれた時の対処法だな」
と、わざとらしい笑顔を作りながらしおんに話しかけたが、
「そんな事できませんよ‼」
と言って彼女は店の方に走り去ってしまった。




