レイミの場合
違った意味でいえばイベントは成功したかもしれない。
とはいえ集客に繋がりそうな気配は微塵も感じられないのでどっちかというと失敗だ。
「あー暇だー」
レイミのヤル気の無い雄叫びが店内に響く。
「そんなに暇なら表で客引き位して来いよ」
カウンターの中でグラスを磨きながらそう答えるカズヨシ。
「客引きはあんたの仕事でしょー」
ヤル気は感じられないが減らず口は一丁前に叩くレイミ。
「お。そうだ丁度いいからレイミ。しおんちゃんに客引き教えてやれよ」
「は⁈あんな只、突っ立ってるだけなのに何を教えるっつーの」
「ん~。お前も解らないヤツだな~。客引きだってベテランと新人じゃ雲泥の差があるんだぞ。ベテランの技を後輩に見せつけてやれよ」
「ベテランの技?」
そう言われたレイミの鼻の下がのびる。
「お願いします!レイミさん」
カズヨシの口車に乗ってるとは露知らず、しおんが真剣な眼差しでレイミを見つめる。
「しょ、しょうがないな~。カズヨシなら断るけど、しおんに頼まれちゃ断れないな~」
レイミはカズヨシの方をチラチラみながら立ち上がると入り口の階段に向かって行った。
「相変わらず解りやすいヤツ」
ヒトミがカウンターに肘をついて二人の後を目で追う。
表に出た二人。夜風が頬を撫でて行く。
「おー。いい月が出てる」
レイミはそう言うと額に手をかざし夜空をあおいだ。そしておもむろに
「しおん、何か飲む?」
と言いながら自販機の方に歩いて行った。
「え?いいんですか?仕事中ですよ」
しおんが困惑気味にレイミに問いかける。
「何言ってるの。だれも見ちゃいないんだから」
「はぁ…」
悪びれる様子もなく自販機に小銭を入れるレイミ。
「しっかし、アレよね~缶ジュースも高くなったわね」
「そうなんですか~」
「う…。なんかその受け答え、ジェネレーションギャップを感じるわ」
そう言いながらしおんに缶コーヒーを渡すレイミ。ペコリと軽くお辞儀をしてそれを受け取るしおん。
そしてレイミは自分の缶コーヒーを一口飲むとおもむろに歩き始めた。
彼女の履くハイヒールの足音が辺りに響く。
「まぁ~、基本的にウチに来るお客さんは商店街絡みの飲み会が多いからな。だからキャバつーかイベントコンパニオンって言った方が実際近いかもねー」
「あー成る程。わかる気がします。漫画とかドラマとかでみるキャバクラとは随分違うな…と。内心思ってました」
「だわな。まぁそれ以前にウチは普段は客がいないしな。予約が入って無けりゃ、ガラガラが当たり前だし、わざわざ指名したりしてキャストを自分の席に呼び寄せたりしなくてもキャスト全員で一人の客相手にしているようなもんだしな」
「確かにそれだと指名の必要がありませんもんね」
そう言いながら店のある路地から表通りへと出た。
「でだ。クソ真面目に客引きなんてやっても正直微妙なんだよな」
「ですよねー。って何て事言うんですか⁈レイミさん‼」
レイミの以外な一言に思わず声をあげるしおんだった。




