見えないところほど
しおんは意外な所に連れて来られた。
「ンンっ。お洒落は見えない所にも気を使う」
まーちゃんはしおんを見ながらそう言った。
「ほほー。売れっ子レイヤーは言う事が違うねー」
感心したような口調でレイミがそう言うと案の定ヒトミが突っかかてきた。
「そりゃ。アンタみたいに三枚1000円とは訳が違うのよ」
「ハッ⁉擦り切れるまで履き潰すアンタよりマシよ」
「女性同士とはいえこういうお店は少し恥ずかしいですね」
そう言うしおんの背中に手を添えるまーちゃん。
「ま、中に入らなきゃ話しは進まないから」
と、言ってランジェリーショップに入店を促した。
四人が入店すると、店員さんの「いらっしゃいませー」と言う明るい掛け声が店内に響く。
「決まったら言って。私は特売のワゴン見てるから」
レイミはそう言うと店内を見渡した。ヒトミも
「私はまだ履けるから別にいいや」
と、言いながらレイミのあとについて行く。
「ったく。二人ともしゃーねーなー」
まーちゃんは後頭部をボリボリ掻くとしおんの方に視線を送った。
恐らくこういうお店に初めて来たのだろうか?
彼女の首はせわしなく右に左に動いていた。
「あーたのセンスで先ずは選んでみて」
「でも…」
モジモジしてて中々選ぼうとしないしおん。
「成る程。そこからか」
まーちゃんは何かを察した様にしおんの側に寄った。
「あーた。服とか自分で選んだ事ないね」
「ハイ…」
しおんがシュンとした表情を浮かべてうつむく。
「それならしゃーない。初めは直感でいくしか無いけどこういう方法もあるのよ」
と、まーちゃんはしおんに言うと
「すみませーん」
と店内にいる店員さんを呼んだ。
「はい。どうかなさいましたか?」
「この娘に合うのをカジュアルとドレッシーなの。一万位の予算で何点か選んであげて」
まーちゃんはそう店員さんに伝えた。
「かしこまりました」
店員さんはまーちゃんに一礼するとしおんの方を向いた。
そして
「お客様。サイズの方をお図りしましょうか?」
と、言いながらメジャーを取り出した。
しおんは一旦まーちゃんの方を見ると彼女は軽くうなづいた。
あとは店員さんにまかせれば大丈夫。という合図だ。
しおんは安心した表情を浮かべると店員さんにその身を託した。
「で、塩梅はどうよ」
しおんがフッティッングに入ったのを見計らってレイミとヒトミが様子を伺う為にまーちゃんに近づいた。
「ま、イイ感じ」
「そう」
三人は顔を見合わせるとニッコリと微笑みあった。
「じゃ、私は表で一服してくるワ」
レイミはヒトミの肩をポンと叩くと店を出た。
暫くすると、満足気な表情を浮かべたしおんとまーちゃんが出てきた。
「何にもわからなきゃ、店員さんに選んでもらえばいいんだよ。そのうちに自分の好みが解ってくるからそうなったら自分で選んでみればいい」
「成る程。ためになりました」
しおんはまーちゃんにペコリと頭を下げた。
「おっ、しおんもお洒落の楽しさが解ってきたようね」
「お洒落の『お』の字もないアンタが言うかね~」
「だまらっしゃい。擦り切れパンツ」
レイミのその言葉にドッと笑い声があがった。




