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東京の外れ
ある街。東京の城北地区らへん。
雑居ビルの地下にひっそりと店を構えるキャバクラがある。
繁華街に見受けられるように派手なネオンサインや入り口に豪華な装飾は施されてはいない。
通りに出てる看板で辛うじてそこに店が有るかどうかが判る程度だ。
こういう店は大体が高級すぎて一見さんお断りだったりするが、表の看板に「完全会員制」など、そのような事を思わせる明記は無い。
つまりはフツーのキャバクラなのだ。
しかもこの看板。破れたあとが有り、そこを透明なテープで補修している。
そしてその傍らにボーイと思われる男性がボーっと突っ立っている。
彼は道行く男性に別に声をかける訳でもなく只、そこにいるだけだ。
客引きなのか?それとも只の案内役なのか?
それすらハッキリしない。
と、いうか。ヤル気を疑うレベルの棒立ちぶりだ。
そんな場末感漂う店の名前は
「しゃんぐりら」
理想郷の地名を冠した店名とは裏腹に、その雰囲気はそれに及ぶ気配は微塵も感じられない。