序章
序章
「あなたが探しているのは金色の髪の女の子ですか?
それとも銀色の髪の女の子ですか?」
夢の中に現れたのは妙齢の女神さま。
そして彼女の後ろにはふたりの少女。
ひとりは金色の長い巻き髪を、
もうひとりは腰まで伸びた銀色のストレートヘアを陽の光に煌めかせながら。
新緑が眩しい池のほとり。
ふたりの少女を両腕で抱きよせながら、よく見ると妙齢と言うには少し無理がある女神さまはゆっくりと僕を見下ろした。
「さあ、どちらがお好み?
金色の髪の女の子?
銀色の髪の女の子?
それとも、わたし?」
ばしっ!
ばしっ!
後期適齢期の女神さまがふたりの少女にハリセンで殴られる。
「いたたた……はいはい、分かってるわよ」
ふたりの少女の冷たい視線を振り払い、再び姿勢を正した女神さま。
化粧の厚さから考えると後期適齢期と言う言葉も褒めすぎかも知れない。
「では、もう一度やり直すわね。
さあ、どちらがお好み?
金色の髪の女の子?
銀色の髪の女の子?」
「いや、どちらがお好みとか、それって指名料取りませんよね。それに僕が探しているのは金色の髪の子でも銀色の髪の子でも、ましてや女神さまでもありません」
その時僕が思い描いた女の子は。
清楚なシャンプーの香り、心安らぐ穏やかな声、そして僕を一瞬で魅入らせる強く優しい瞳。艶めく黒髪を纏めてたおやかに微笑んでくれる、僕の大切な女の子……
「僕が探していたのは…… そう黒髪の……黒い髪の女の子です」
すると適齢期過ぎても若作りな女神さまは身に纏う白い布を風になびかせながら微笑んだ。
「直弥さん、あなたは大変正直な人ですね。ご褒美です。あなたにはこの金髪の女の子も銀髪の女の子も、ふたりとも差し上げましょう。大切にしてくださいね。見ての通りふたりともとっておきの美少女で、しかもスタイル完璧。もう、酒池肉林で羨ましいわ!」
碧く大きな瞳を持つ、大輪のひまわりのような金髪の少女。
深緑で切れ長の瞳を持つ、純白の水仙のような銀髪の少女。
そしてふたりの間で銀歯を光らせ意味ありげに僕にウインクする厚化粧の女神さま。
「では、ふたりをよろしく頼むわよ、直弥さん」
「いえ、あのっ、違うって……ちょっ、ちょっとそこの女神さまっ!」
ドンドンドン!
「お兄ちゃん、起きてください。そろそろご飯ですよ。お兄ちゃん」
「んん…… ふあ…… 今行くよ……」
僕はここで夢から醒めた。
不思議とその光景は明瞭に僕の意識に残っていた。
金髪や銀髪の美少女とか、挙げ句には銀歯輝く女神さままでがウインクしてくる夢。
「欲求不満がたまってるのかな。1000ポイントくらい」
独り呟く。
「しかし、あのふたりの少女、どちらも綺麗だったけどタイプは全然違ってたな」
金髪少女は華やかで活発そうで、
胸の成育も活発そうな美少女。
銀髪少女は凛としているけど淑やかで、
胸の成育もお淑やかな美少女。
「僕の好みって大きくても小さくても、どっちもウェルカムなのか?」
まあいい、健全な青少年ならストライクゾーンが広くて当然。暴投だって振ってしまうものだ。気にすることはない。
しかしその日学校で、僕はこの夢がそんな単純な夢ではない事を知るのだった。
騒々しくて傍迷惑で馬鹿げていて、そして少しだけ切ない僕の物語が始まった。