成功体験
こまったなぁ。
僕は困っていた。また仕事でミスをしてしまったからだ。
どうしたらミスをしなくなるんだろうなぁ。
「お兄さん。お悩みですか?」
声をかけられて振り返る。年は幾ばくもいってないような幼さの垣間見得る女の子だった。
「ああ、とってもね。」
「どんなお悩みですか?」
「君みたいな子供に言っても分からないさ、まぁいいさ・・・」
こんな子供に何を言っているのだろう。僕の悩みのたけを打ち明ける。
「でしたらこれを差し上げますね」
女の子が差し出したのは可愛らしい袋につめられた飴玉のようなものだった。
「なんだい?これ飴玉、かな?」
「これはお兄さんの成功です。なにかを上手く運びたい時は一粒くにち含んで下さい。きっと上手く行きますよ」
その女の子は僕の返事を待つ事なくそのふくろを僕に渡した。
次の瞬間女の子は視界から消えていた。路地の中にきえたのだろうか。はたまた夢でもみてたのだろうか。何方でも構わないけれど、たしかに僕の手元にはその飴玉が残っていた。
「胡散臭いなぁ、でもまぁ試してみるか。」
飴玉を含んだ翌日の事。
僕は今までの失敗を吹き飛ばすような大成功を収めていた。大きな会社の人達のまえでプレゼンテーションをおこなったのだけど、我が社の商品に興味をもってくれて、即日契約まで結ぶ事が出来た。それからというもの僕は女の子にもらった飴玉のおかげで大成功を収め続ける事ができた。
僕は社長からも信頼がもらえるような立派な社員になっていて、二十代の内に課長にまで上り詰めていた。
明日はまた重要な会議がある。がんばらなくちゃ。
三十代の中頃だ。ついにもらった飴玉が尽きる時がきた。でも大丈夫。今の僕ならやれる。僕は次長になったんだ。部下をひっぱらないいけない。責任があるのだ。
「次長、もうすぐ会議がはじまりますよ。」
部下が呼んでいる。さあ、仕事だ。
会議は大失敗だった。どういう訳か僕は会議中に居眠りをしていまい。部下や上司や大顰蹙をかった。それからというもの失敗続きで、ついには取引先から取引を打ち切られてしまった。
なぜだ。どうしてこうなってしまったんだろう。
「簡単よ、お兄さんは成功を使いきってしまったのだから」