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命の使い道 ~残された寿命を、きみたちへ~ 元勇者と五人の孤児  作者: @HIKAGE
第四章 加速する日々

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幕間 Subject R - Phase 2

あなたは、ご自分の光を、私のために使い果たしてしまわれました。けれど、悲しまないでください。あなたが手放したその輝きは、今、私の胸の中で、明日を照らす新しい灯火となって、静かに燃えているのですから。

     ――連環の光教団 聖典『迷い鳥』より



お兄ちゃんは、なんでもないような顔で

一人、部屋から出て行った。



今もきっと

わたしに背負わせまいと

一人で考えているのだろう。



わたしは食堂に彼を残し

ひとり、裏の川辺へと向う。



ドアを開けると

そこはまばゆい光の世界だった。



透明なはずの空気に

光の粒が見えるようだ。



息を吸う。

胸の奥まで、清浄な空気が届く。



ただそれだけのことが

信じられなかった。

嬉しかった。



遠くで親子の笑い声。

風が草花を優しく揺らす。

揺れる川面が光を弾いた。



何も変わっていないはずなのに

世界は一枚の膜を剥がしたように

鮮やかだった。



わたしは

川辺にひとり座る。



もう一度、深く吸った。

流れる川の匂い。青草の匂い。

お兄ちゃんの仕込みの匂い。



昨日

ここに一人座ったときに

お別れを告げた景色だった。



その全てがきらめき

わたしを照らしている。



まばゆくて、目を閉じる。

胸の中で、魔力の流れを感じる。



以前からあった自分のそれとは、少し違う。

温かくて、不器用で、深いところから続く流れ。



二つは混ざり合うのではなく

螺旋を描くように寄り添って

ひとつの川になっていた。



思い出す。

お兄ちゃんの笑顔。



記憶の中で

父が笑っていた。



父より年老いた彼の顔は

見知らぬ男性の輪郭に変わっていた。



でも確かにある、あの眼差し。

そして、少しだけ不安げな笑顔。



わたしは、何も言えなかった。

何か言わなければと思ったのに。



胸の奥に、何かがつまって

言葉が来なかった。



尊敬、だと思う。

感謝、も。



父への思慕に近い何か、も。



それ以外に名前があるのかは

わたしには、わからなかった。



サラサラと水の流れる音が

言葉を消していく。



きらめく川のほとりに

膝をついて、目を閉じた。



わたしはただ

喜びと感謝を祈ろう。



――私の心は、水辺で歌う鳥のようです。

たわわに実る林檎の枝のように、重たいほどの愛に満ちて。なぜなら、これからの私の誕生日は、今日、この時だから。愛という名の命が、私の中に生き返った、この日こそが。

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