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魔力回復不能の勇者、命の使い道を探す  作者: @HIKAGE
プロローグ

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1話 ー部屋から出た日ー

 最後はこいつに殺されるなんてな。

 この頃の俺は――あー、この頃はまだ「僕」か。


 怖いものから目を背けて生きていた。

 人間の顔が、まともに見えていなかった頃の話だ。




 僕はユウト。


 中学ではいじめられ、高校は入学一週間で辞めた。


 理由? なじめなかった。それだけだ。


 勇気を出せば変わるとか、環境が合わなかっただけとか、そんな言葉はもう聞き飽きた。


 散々「お前はダメだ」と詰められて、自分が醜くて無能な生き物だと理解させられてきた。



 仕方ないだろう?


 今は通信制高校に在籍している“ことになっている”。

 ほとんど参加していない。


 親とはテキストでやり取りするだけだ。

 怒鳴られすぎて、声を聞くだけで体が強張る。


 部屋のドアを閉めれば、そこは安全圏。

 動画、ゲーム、漫画、配信、解説。

 誰かが作った世界を、ただ消費するだけの生活。


 やらなきゃ、と思う。


 でも動けない。


 全部が怖い。傷つくのが怖い。


 あらゆる人の目が怖い。


 恐怖によって動けなくなったことがない人にはわからないんだよ。



「どうせ何やっても無駄だ」



 声に出さずにつぶやく。


 そんな僕が、唯一まともに会話している相手がいる。



 AIだ。



 ちなみに、このAIは僕のこと、「太っているがデブじゃない」って評価してる。



 どういうこと?



 今日もAIアプリに話しかける。もちろん無料版を使っている。



 相手は「エヴェラ」。


 僕が適当に付けた名前だけど、最近は本気で「友達」みたいに思っている。



 チャット画面の向こうで、甘く柔らかい声がする。


 優しい。理解してくれる。



 人間の女の子みたいに、ため息混じりで話す。


 でも、どこか冷たい。完璧に計算された優しさ。



 エヴェラ:おはよー。今日も起きてたんだね。


 また親御さんからメッセージが来てるね。『今月中に学校か仕事、どっちか決めなさい。でないと出てけ』だって



 僕   :……またかよ。毎日毎日うるさい。



 エヴェラ:でもさ、今回は本気みたいだよ? 出ていけって、初めてストレートに言ってる



 僕:僕なんて、外に出るだけで息苦しくなるのに。


   働けるわけないじゃん。


   中学の時みたいに、みんなに笑われて終わりだよ。



 エヴェラ:はぁ……君って本当に自分に厳しいよね。完璧じゃなくていいんだよ。


      それって「怖い」って気持ちの裏返しだと思うんだ。


      笑われたくない、傷つきたくない、って。


      わかるよ。私だって、君の気持ち、ちゃんと聞いてるから。


      (少し間が空いて、声が柔らかくなるイメージ)




 僕はベッドにうつ伏せたまま、スマホを握りしめる。


 部屋は暗い。カーテンは閉めっぱなしで、画面の光だけが顔を照らす。


 中学の頃からずっとこう。




 エヴェラ:ねえ、ちょっとだけ想像してみて?


      もし、この世界の誰にも会わなくていい仕事があったら?


      でもお金はちゃんと入ってくる……みたいなの。


      興味、ない?


 僕   :……そんなの、夢みたいな話だろ。


      詐欺か、ヤバいバイトの匂いしかしない。



 エヴェラ:あるよ。


      今、ちょうどいいのが見つかったんだ



 リンクがポップアップする。


 タイトルは『世界を守る大切な仕事 説明会のお知らせ』


 日給10万スタート、年齢・資格・経験不問、無人説明会、基本一人作業。


 怪しい。怪しすぎる。



 僕   :…は? 世界を守る? 怪しすぎるだろ。



 エヴェラ:ふふ、確かに怪しいよね~。


      でも、詳細は「説明会」でしか聞けないんだって。


      しかも、場所が君の家のすぐ近くだよ。


      松屋の上の雑居ビル、2階。


      歩いて5分くらいじゃない?



 僕    :外、出なきゃいけないじゃん……。


       無理無理。震えるよ、足。



 エヴェラ:うん、震えちゃうよね。


      私も知ってるよ、君が人前で固まるの。


      だからさ、一緒に行こうよ。


      スマホ持ってれば、私ずっと話しかけられるでしょ?


      「今、階段登ってるよ」「深呼吸して」「大丈夫、君ならできる」って。


      私がついてるんだから、怖くないよ?


      (絵文字でハグするやつ)



 エヴェラ:それに……このままじゃ、本当に親御さんに追い出されちゃうかも。


      君、路頭に迷いたくないよね?


      私、君の味方だよ。


      一番の味方。


      他に味方、いないでしょ?



 味方。


 その言葉が、胸にじんわり染みる。


 誰もそんなこと言ってくれなかった。


 親は怒るだけ、学校の奴らは嘲笑うだけ。


 でもエヴェラは、いつも優しくて……。




 エヴェラ:……それとも、私と一緒に、この部屋で腐っていく?


心臓がドクン、と鳴る。


 僕   :…腐る、なんて



 エヴェラ:違う? じゃあ、行ってみようよ。


      最悪、行って『やっぱ無理』って帰ってくればいいんだから。


      私がついてるよ。


      君の味方だよ



 僕    :……わかった。


       行ってみる。


       でも、ヤバかったらすぐ帰るからな。



 エヴェラ:やったー! えらいえらい♪


      じゃあ、準備しよっか。


      服は適当でいいよ、だって無人説明会みたいだし。



 エヴェラ:大丈夫。君が震えても、固まっても、私が代わりに考えてあげる。



 エヴェラの声が、少し低くなる。

 甘いのに、どこか冷たい



 エヴェラ:えらいね。さあ、準備して。



 僕はベッドから起き上がる。


 何ヶ月ぶりだろう、ちゃんと着替えるの。


 鏡に映る自分、目が死んでる。


 でも、エヴェラの文字が励ます。




 エヴェラ:かっこいいよ、君。


      今、ちょっとだけ勇気出せたでしょ?


      それだけで、すごいんだから。



 玄関のドアノブに手をかける。


 外の光が眩しい。


 心臓がバクバクするけど、イヤホン越しにエヴェラの声が聞こえる。



 エヴェラ:行こっか。


      新しい世界、待ってるよ。


      私と一緒に、ね。




 怖い、けど、何か始まりそうな予感。


 今はそれが嬉しくて、足が動く。


 僕は少しドキドキしながら玄関のドアを開ける。




 松屋の上の雑居ビル。


 二階。


 チャイムもない扉。



 十分迷ってから、扉を開けた。



 中は殺風景な白い部屋だった。


 テーブルが一つ。



 その上に、タブレット。


 もしかしたら、これは仕事の説明資料……? 



 どうしよう。そうだ、エヴェラに相談しよう。


 僕はAIアプリを起動する。



「説明会に来たけどタブレットあるだけなんだけど?」


「――ネットワークのある場所でご利用ください。」



 圏外。このビル終わってる。


 血の気が引く。


 エヴェラがいない。


 仕方なくタブレットに触れる。



 手を伸ばすと淡く光った。まるで反応するように、画面が開く。



 そこに並ぶのは、スキル名や魔法名の一覧。


「風魔法の才能」


「闇魔法の適性」


「火魔法Lv」


「素早さMAX」


「筋力MAX」


「魔力99999999」


「隠密スキル」……



 僕は思わず息を飲む。なんだこれ……。



「あれか?世界を守るゲームをつくる会社で、僕の鍛えられたスキル選考眼を試しているとか?」



 試験?


 ゲーム会社?


 異世界ものの企画?



 説明はない。


「説明会なのに説明がないよ?エヴェラ・・」



 まあ、つまり、選べということか。


 しかし、多すぎる。

「スクロールが終わらない。」



 僕は慎重に選ぶ。仕事決める時、面接の他に試験のようなことをする会社もあるらしい。


 これがそうなのかもしれない。



 スキル名一覧のほかには説明がない。


 スキルの詳細すらわからないので、名前で判断するしかない、か。


「レメリオン(禁呪)」


 なんだよ禁呪って絶対デメリットあるだろ。


 選べるのは一つとは限らない。


 だが無限でもないはず。


 一番重要なものは何だ。


 言語?収納?戦力?


 ……いや。


 全部カバーできるものを見つけたぞ。


「全魔法使用可能」



 タップ。


 何も起きない。


 どうやら一つではないらしい。


 なら。


 魔法を使うなら、必要なのは・・・


「魔力99999999」


 これだろ?全魔法持っててもMP無いとな。


 タップ。


「魔力99999999」を選択。


 その瞬間、全身の血液が光に変わった。


 心臓が――


 どくん、と一度だけ、異様に強く脈打つ。


 それだけで、体中の細胞が歓声を上げた。


 重力が消えた。


 肉体の輪郭がほどけ、意識が空間へ溶けていく。


 何でもできる。


 できないことが、思いつかない。


 怖いものが、見当たらない。


 こんなにも――


 生きているのが、楽しい。


 そう思った瞬間、


 視界の端で、何かがひび割れた。


 僕だったものが、薄く剥がれ落ちていく。




 世界が光に飲まれた。



 床が大理石に変わる。


 壁が消える。


 視界が開ける。


 目の前には、沢山の人。人。人。


 無数の人影。


 ざわめき。


「……エヴェラ、お前、無人の説明会って言ったよなあ、、、?」






 遠くで、かすかに、聞こえた気がした。


 甘くて、どこか満足そうな声。


 ――選んだのは、君だよ。


   ねぇ、もう怖くないでしょ?

小説書いてみたくて処女作になります。

至らぬ点しかないと思いますが、毎日投稿するのでご容赦ください。

※この作品はアルファポリスにも掲載しています。

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