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think story 002 沈黙するホーム

午後の光が、プラットホームの端に長く影をのばしていた。

井早晃は、構内通路を抜け人気(ひとけ)のない乗り場に足を踏み入れる。


 いつもなら、目まぐるしく人が行き交い、列車の風圧が髪を揺らす場所が、今は風も音もない。

ただ遠くの路線が日差しに光っているだけだった。


 「ここ、こんなに静かだったん?」足音がコツンと響く。

壁の注意喚起ポスター、整然と並ぶベンチ、柵の外に伸びる雑草と草の匂い。どれも、見慣れていたはずなのに、なぜか、初めて見たように新鮮に感じた。


視線を落とすと小さな紙が足元に転がっていた。それは子供が書いたような"お願いメッセージ"≪みんなが守っているよ、ゴミを捨てないでね≫

 子供特有のまっすぐな文字、誰が書いたものか、その紙が妙に心に刺さる。

誰かがここを、大切に思っている、誰かがこの場所にメッセージを残した。

"いつも見落としていたもの"が止まった時間の中で思いを吹き返す。


 列車の来ないホームは、まるで時の挟間のようだった。誰もが急いで通り過ぎていく場所に今日は誰もいない。

 それがこんなにあたたかい。


晃はポケットに手を入れ手帳を握りなおした。"もう一度観覧車乗ってみよう"そんな気持ちに迎えられた。


 遠くから駅員の無線が届いた。

 「井早さん、復旧準備に入ります」

 「了解」

短く応えたホームを後にし、足取りは行きよりも、少しだけ軽くなっていた。




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