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短編集 妹を愛する兄のシリーズ  作者: リィズ・ブランディシュカ
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第3話 幼い頃の夢



 妹が死んだ。


 事故で死んだ。


 子供のころから俺が守ってやると約束していたのに。


 あっけなく、突然いなくなった。


 俺は生きる意味を失った。


 両親をずっと前になくしてから、妹を守ることが心の支えだったのに。


 ああ、一緒に死ねば良かったのに。


 原因は、車の交通事故だった。


 相手が突っ込んできた。


 酒気帯び運転だ。


 最後の瞬間。


 俺は一緒にいた。


 だから妹を、ひしゃげた車の中から助けようとした。


 でもできなかった。


 いってきますは二人だったのに、ただいまは一人分。


 毎日仕事をしても、身が入らない。


 同僚から心配され、通行人にまで気の毒そうにされる顔色らしい。


 それでも。


 いってきます一人分は耐えられた。


 でも、ただいま一人分がつらい。


 家の帰るのがつらい。


 思い出から、逃げられない。

 

 家の中には、たくさんの妹がいた証拠が残っているから。


 最後に燃え尽きる車を見て、呆然としていた俺は役立たずだ。


 あの時一緒に燃えて入ればよかったのだ。


 だから、最近は、知らない間に家に火をつけようとしていて、次の瞬間にはっとなる。


 その繰り返しだ。


 天国で再会したら妹が悲しむだろうから、かろうじて踏みとどまっている。


 でも、もう限界かもしれない。


 涙が流れた。


 一度流れると止めるのが難し課tt。


 だけど、ある日、妹の声が聞こえた。


 会社の帰り道だった。


 家にかえるのが苦痛だったのに。


 その日はそうじゃなかった。


 まるで呼ばれたみたいだった。


 声に呼ばれるまま歩ていくと、家の裏の物置にたどりついた。


 そこには、妹と俺の工作があった。


 小さい頃、一緒に作った工作が。


 家族四人並んで。微笑んでいる。模型が蓋についている小さなもの。


 箱の入れ物だ。


 開けると中には手紙が書かれていた。


 大きくなったら、というタイトルの。


 それは、タイムカプセルみたいなものだった。


 そうだ。思い出した。


 大きくなったら、たくさんの人を助けるヒーローになりたい。


 大きくなったら、お兄ちゃんみたいな夢を持ちたい。


 そう書いていたんだった。


 妹は大きくなるのを楽しみにしていた。

 もうその妹は大きくなれないけど。


 俺が大きくなるのも楽しみにしていた。


 だから俺は、弱っていた心を叱咤する。


 まだ妹に会うわけにはいかないな。


 たくさん人を救ったという思い出話を作るまでは。



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