第7話:村の危機と決意
帝国兵が去り、村はようやく静けさを取り戻した。だが、圭の胸の中には、村長の言葉や帝国兵の最後の言葉が引っかかっていた。
「いずれ、我々は必ず戻ってくる。」
彼らが次に来る時、それが今回以上の危機になるのは明白だった。
その夜、圭は宿舎の部屋で考えを巡らせていた。
「このままじゃ村の人たちに申し訳ないよな……。」
異世界に迷い込んだ身ではあるが、自分の力を試す場がある以上、それを使わないわけにはいかない。柔道で育んだ精神も、圭に責任感を感じさせていた。
「まずは、この世界のことをもっと知る必要があるな。」
そう呟きながら、圭は視界にステータス画面を呼び出した。そこには「未取得スキル」としてさまざまな能力が表示されている。
[未取得スキル例]
•魔法適性分析(消費ポイント:2)
•地形戦術(消費ポイント:3)
•戦闘指揮(消費ポイント:5)
「なるほどな。これで新しいスキルを取得できるんか……。」
圭は「魔法適性分析」を選択し、スキルポイントを消費する。すると、画面に新たな情報が浮かび上がった。
[新スキル取得:魔法適性分析]
使用者および他者の魔法適性を判定し、特性を引き出すことが可能になる。
「これを使えば、村の人たちの能力も見極められるかもしれん。」
圭は翌朝、このスキルを試すために村の広場へ向かうことを決めた。
翌日、村の広場では、村人たちが再び日常の作業に戻っていた。圭が姿を現すと、昨日の件で一層親しみを込めた視線が集まる。
「圭さん、おはようございます!」
「昨日は本当にありがとうございました!」
「いえ、そんな。みなさんが無事で何よりです。」
圭は村人たちと挨拶を交わしながら、リーナを探した。彼女ならば、このスキルの効果を試すのに最適だろうと考えたからだ。
「リーナさん、少しお時間いただけますか?」
リーナは槍の手入れをしていたが、圭の声に気づき顔を上げた。
「何ですか?」
「実は、あなたの能力をもっと深く理解できるスキルを取得しまして。それを試させてもらえませんか?」
リーナは一瞬戸惑ったものの、圭の真剣な表情を見て頷いた。
「わかりました。何をすればいいんですか?」
「そのままで結構です。」
圭は目を閉じ、視界に「魔法適性分析」のスキルを発動させた。リーナの周囲に青白い光が浮かび、彼女の特性が画面に映し出される。
[対象:リーナ]
魔法適性:高
属性:風、水
特性:敏捷性強化、魔法発展余地あり
「なるほど……リーナさん、魔法の才能もかなり高いですね。」
「えっ?私に魔法の適性があるんですか?」
驚くリーナに、圭はゆっくりと説明を始めた。
「はい。特に風と水の魔法に適性が高いです。鍛えれば、村を守る大きな力になると思います。」
リーナは圭の言葉に戸惑いつつも、次第にその目には希望の光が宿り始めた。
「……正直、自分にそんな力があるなんて思ってもいませんでした。でも、もしそれが本当なら、試してみたいです。」
「一緒にやりましょう。俺もできる限り手伝います。」
圭は笑顔でそう言った。リーナは少し恥ずかしそうにうなずく。
こうして、圭とリーナは村を守る力をつけるための訓練を始めることとなった。帝国の脅威が迫る中、彼らの努力が村の未来をどう変えていくのか――。
(第7話終了)