第6話:実力の証明
「わかりました。少しだけお相手させていただきます。」
圭の静かな言葉に、リーダー格の帝国兵は目を細めた。彼の周囲の兵士たちはざわめきながらも剣を構え、緊張が一気に高まる。
「面白い……異国の人間がどれほどの力を持っているのか、試させてもらおう。」
リーダー格の男が剣を抜き放ち、低く構える。周囲の村人たちは息を呑み、リーナも思わず槍を握りしめていた。
「無茶はしないでください!」
リーナの声が届いたが、圭は軽く頷くだけで目の前の男に集中していた。
「こちらから手を出すのも失礼ですね。まずはそちらからどうぞ。」
挑発とも取れる言葉に、リーダー格の男は笑みを浮かべた。
「その余裕、すぐに後悔するぞ!」
次の瞬間、男が一気に間合いを詰める。鋭い剣の斬撃が圭を狙うが、その一撃は風を切るだけだった。
「……何?」
驚くリーダーの目の前で、圭は剣を軽く避けたように見えた。
「なかなかの速度ですね。けど、もっと早くしないと当たりませんよ。」
軽口を叩く圭の余裕に、リーダーは苛立ちを隠せない。
「ならば、これならどうだ!」
リーダーは素早く連続攻撃を繰り出した。その全てを圭は、最小限の動きでかわし続ける。村人たちが驚きの声を上げる中、圭はふと足を止めた。
「そろそろ終わりにしましょうか。」
そう呟いた瞬間、圭の体が滑るように動き、リーダーの懐に入り込む。そして、柔道の動きでその体を軽々と投げ飛ばした。
「うわっ……!」
リーダーの体が地面に叩きつけられ、その場に静寂が訪れる。
圭がリーダーを制した光景に、村人たちは驚きの声を上げた。
「なんて強さだ……!」
「帝国兵をあんな簡単に……!」
リーダー格の男は体を起こしながら、圭を睨みつけた。
「……お前、何者だ?」
「ただの通りすがりの者ですよ。この村には迷惑をかけないようお願いします。それで済む話なら。」
圭の冷静な態度に、リーダーは苦い顔をしながら剣を収めた。
「いいだろう。だが、これで終わりだと思うなよ。いずれ、我々は必ず戻ってくる。」
リーダーはそう言い捨てると、兵士たちを連れて村を後にした。
村人たちは圭に駆け寄り、口々に感謝を伝える。
「圭さん、本当にありがとうございます!」
「まさか帝国兵を追い払ってくれるなんて……。」
リーナも槍を下ろし、圭の方を見て呟いた。
「本当に驚きました。あの帝国兵をあれだけの力で圧倒するなんて……。」
圭は少しだけ肩をすくめて答えた。
「俺ができることをしただけです。それより、これで少しでも村が安全になるならよかった。」
その言葉にリーナは静かに頷いた。そして、彼女の目にはどこか圭への信頼が芽生え始めているようだった。
村が再び平穏を取り戻しつつある中、圭はふと空を見上げた。
異世界での生活はまだ始まったばかり。だが、確かな一歩を踏み出した感覚が彼の胸に広がっていた。
「よし……これからどうするか、考えてみるか。」
(第6話終了)