第1話:異世界の洗礼
木々の間を吹き抜ける風の音だけが響く中、鎧をまとった男たちが圭を睨みつけていた。
「お前、何者だ!ここは帝国領だぞ!」
男たちの叫びがスッと頭に入ってくる。神様のメッセージで言ってた異世界語理解の能力が働いているらしい。
「ふむ、ここは帝国領か。けど、俺、ただの通りすがりなんやけどな。」
軽い調子で答えた圭に、兵士たちはますます警戒を強め、剣を構える。
「その得体の知れない馬車はなんだ!帝国の許可なくこんな場所にいるのは怪しい!」
「馬車って……これのことか?」
圭は自分のキッチンカーを振り返る。どう見ても現代日本の車両がこの世界では異質なのは間違いない。
「まぁ、怪しいのは認めるけど、わざわざ俺を襲う理由にはならんやろ?」
そう言った瞬間、兵士たちが一斉に剣を構え、突進してきた。
「おいおい、ちょっと待て!話通じんのか!?」
圭は慌てて一歩後退する。しかし、次の瞬間、体が自然に動き出し、迫る剣を軽々とかわした。
「なんやこれ……俺、めちゃくちゃ動けてる。」
1人目の兵士が剣を振り下ろしたのを見て、圭は思わずその腕を掴み、軽く投げた。柔道の動きを無意識に繰り出した形だが、その威力は想像以上だった。
兵士の体は宙を舞い、地面に叩きつけられる。
「うわっ、今の力、俺がやったんか……?」
残った兵士たちは圭を睨みつけながらも、一瞬動きを止める。圭はその隙に透明な画面を呼び出し、鑑定スキルを使った。
[対象] 帝国兵(Lv.12 / Lv.10)
戦闘力:低~中
スキル:剣術初級、防御術初級
備考:通常の歩兵。命令に忠実で、個人の判断力は低い。
「なるほどな……あんまり強くないやつらやな。」
そう呟くと、兵士の一人が怒りの表情を浮かべた。
「こいつ、俺たちを侮辱してるぞ!全員でかかれ!」
兵士たちが一斉に襲いかかってくる。だが圭は、相手の動きが遅く見えるほど余裕を感じていた。
「悪いけど、これ以上ケガしても知らんぞ。いいんじゃないか?引いといて。」
圭は1人の剣を叩き落とし、軽く足払いを仕掛けると、兵士は地面に転がった。もう1人が剣を突き出してきたが、圭はその剣先を紙一重で避け、胴を押して吹き飛ばす。
その場に立っている兵士はあと1人。圭の強さに恐れをなしたのか、剣を収めて叫んだ。
「退却だ!こいつは化け物だ!」
兵士たちは森の奥へ逃げていった。
「ふぅ……とりあえず無事やけど、なんやこれ。俺、どんだけ強いんや。」
圭は改めてステータス画面を開いた。
[ステータス]
名前:村中圭
種族:人間
レベル:1
力:5000(一般人の約1000倍)
魔力:無限
スキル:異空間収納、無尽蔵の魔力、鑑定、マッピング、異世界語理解
「レベル1でこれとか……神様、盛りすぎやろ。」
ふと視界の端に映るマップに、小さな村のアイコンが表示されているのに気づく。
「ほう、マッピング機能で村の場所がわかるんか。便利なもんやな。」
圭はキッチンカーに戻り、エンジンをかける。魔力で動く仕組みのおかげで燃料の心配はない。
「とりあえず、この村に行ってこの世界の状況を聞いてみるか。」
キッチンカーを走らせ、異世界での新たな一歩を踏み出した――。
(第1話終了)