第87話 妖精カーナの冒険6
◆テータニア皇国▪皇都
平民街の上空
カーナ視点
「えーっ私カーナは只今、テータニア皇国▪皇都現場上空に来ております。皇国の中心街は渋滞もなく、とくに目立った事件、事故等は起きておりません。本日も皇国は至って平和。人々は日々の営みに忙しくしている模様です。それではスタジオに返しますねーっ。中継はカーナでした」
『ゴケケ?』
「はい?何やってんだって?いやね、一度、空からの中継っての?やってみたかっただけなんだよね。ふふん。私は手腕アナウンサーよ。称えなさい!」
『コケー………』
「何その呆れ果てたような顔は?失礼ね!」
『アホーアホーアホー』
「アホはアンタでしょ?!ロープ掛けられてるのに何事も無かった如く真っ直ぐに飛んでるくせに。本当に無神経バカカラスね!」
なんか怒鳴り散らしたくなる今日この頃。
さて、咆哮音痴?じゃなく、スキル方向音痴の泥沼に嵌っていた私達は、テバサキの機転により何とかドードー巡りから脱する事ができました。
現在の私の状況は以下の通り▼
テータニア皇国皇都上空を飛行中。
上手くカラス似の魔鳥、バカラスにヒモをくくりつけてのターザンブランコ。
しかもターザン▪テバサキに抱き抱えられての遊覧飛行満喫中です。
ターザン▪テバサキ?
マジにあんた誰?
『ゴケ!?』
《とにかく》ここからの眺めは素晴らしく、皇都全域を見渡す事が出来ます。
まさに特等席ですかね。
皇国エール復活を果たし(あれ?私、何かしたっけ?)、目的を終了して後は自由な一人旅?(一人と一羽?二羽?)
これは当然、観光旅行に行きますよね?
え、それは市議の出張先が海外旅行で税金の無駄遣い的発想じゃないかって?!
いやいや私市議じゃないし、ずっと神域の森(聖獣の住まう森)から出ずっぱりだし、当然異世界漫遊してみたいし、保護者面のワンコからたまには離れたかったし、ビール工場のパート作業も飽きたし、社長28号の顔見たくないし、オバチャン連中にはお土産買っていきたいし、いっぱいいっぱいやりたい事があるんですーっ!
はあはあはあっ
思っているだけで、言い切った感全開で息切れしてる私。
って一体何者なんでしょうか?
『コケ?』
私が一人悶絶していると、テバサキが不思議そうに見ています。
アンタ、眉毛がゲジゲジ一本になってるんだけど、どんどん変化してない?
あと、何でタオルでほっかむりしてる訳?
「テバサキ、あんたタオルでホッカムリしてるから、そのまま髭が生えたら泥棒にしか見えないわよ?」
『ゴケケ~ゴケ』
「何?羽根がないから恥ずかしい?なら、しょうがないわね。そもそも何で羽根が抜けたの?ストレス?」
『ゴケゴケコッコ、ゴケ』
「はぁ?言いたくない?あっそ。ならもう聞かないわよ」
『ゴケケ~ゴケ』
テバサキのほっかむりを聞いたら、抜けた羽根の姿を晒したくないとの事でした。
でも、その羽根の抜けた理由は話してくれません。
何でですかね?
まあ、本人が言いたくないのに無理に聞いたら野暮ってもんです。
でもね~、時折見せるテバサキの恨めしそうな表情が気になるんです。
むむむ、まさか私の知らない悲しい秘密が………。
ま、いっか。(終)
《とにかく》私にも息抜きが必要。
観光旅行したいんです。
という事で、出来れば観光ガイドを雇いたいところですが、何処かに良い人いませんか?
キョロキョロ
辺りを見回しましたが、人の顔が見える距離ではありません。
そもそも150メートルくらい上空から見てますから、鷹の目でもない私に人の顔が識別出来る訳もありません。
『ゴケケ、コケッ、コケッ?!』
「うっるさいですね。アレコレ考え中ですから、ちょっと静かにして下さい」
『ゴケケ、ゴケッ、ゴケケケ!!』
何ですかね。
人が考え中って言ってるのに、テバサキがやたらにウルサイです。
一体、どういうつもりでしょうか?
この臆病チキン。
『コッケーッ、ゴケ、ゴケケ!!!』
「いい加減にして!考え中って言ってるでしょ。静かにって、何で前に手?手羽先?を翳してるのよ?は!?」
テバサキの差し出した手羽先(紛らわしい)の先、私達が進む先に何か在る?
むむ、ほうほう、まるでサクラダファミリアみたいな教会がありますね。
おお、テバサキは観光名所を教えてくれてたと?!
「何だあ、テバサキ。観光名所見つけたんだ。ヤルじゃん」
『ゴケーッ、ゴケケッ、ゴケーッ?!!』
「分かった、分かった。もう分かったから。アンタ、あそこを見に行きたいんでしょ?私も行きたいわよ」
『ゴケケケッゴケケケケッ!!!』
「いや、もう分かったって。いつまで騒いでる訳?って、なんかやたら近づいてない?え、これって何か不味くない??えーっ!」
ヤババい!
サクラダファミリア似の教会先端がみるみる近づき完全な衝突コースです。
バカラスが高度を上げない限り、私達お陀仏じゃない?!
「じゃあ、さっきからテバサキが五月蝿かったのは、サクラダファミリア似教会にぶつかりそうだから教えてくれてた訳?只のチキンじゃなかったの?」
『コケケ……』
「はあ、悪かったわ。って、それどころじゃない!ちょっとお馬鹿、もっと高度を上げなさいよ!!」
『アホーアホーアホー』
「誰がアホか!」
駄目です。
バカラスは全く此方に気づいて無いようで、とぼけた顔で前を見据えたまま一定の速度で飛んでるだけです。
ロープが足に絡まって私達の重みもある筈なのに全くの無関心。
やっぱり馬鹿なの!?
だけど今はバカラスに構っていられない。
このままいくと私とテバサキは、サクラダファミリア似教会の壁にメリ込んでモニュメントになるしかありません。
私が新しい観光名所?
『アホーアホーアホーアホーアホーアホー』
チョコボールキャラが私を馬鹿にして鳴いています。
ふざけんな?!




