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第70話 旅行とプーリンと姫の日常

◆神の森

妖精印ビール生産工場

第三オフィス


「ハンスさん、お話があります」

「な、何でしょう、カーナ様?」

「私、悩んでいるんです」

「悩んで?一体何を悩んでおられるんです?」

「私、もう限界なんです。毎日、毎日、毎日、このビール工場とログハウスを往復するだけの毎日。ハッキリ言って娯楽が無い。早く世界漫遊の旅に行きたいんです」

「はぁ、しかしヒューリュリさんや、28号さんから、カーナ様の安全の為に森から出せないと言われてまして」

「は?」

「はい?」

「今、なんと?」

「はあ、ですからカーナ様は安全上、森の外には出せないと禁じられてまして」

「はあ!?」

「なので、色々な条件を付けて、カーナ様を森から出さないようにしていたしだいで」



アイツらーっ、ふざけんじゃないわよ!


こちとら何の為に社畜やって、パートの雪ウサギおばちゃん達と井戸端会議して、毎日、ビールパンと小ジョッキに節約して旅行費用を捻出してたと思うのよ!


「行く」

「はい?」

「今すぐ皇国に行く。旅行をエンジョイしたい!」

「し、しかし、ヒューリュリさんと社長が何と言うか!?」

「アイツら、いつの間に保護者気取りな訳?冗談じゃないわよ。《《だから》》黙って行くのよ!」

「ええっ!?私が怒られますよ!」

「黙って行くから分かんない。バレなきゃ問題ないから。私が勝手に馬車に潜り込んだ事にすればいいのよ」

「し、しかし、ビールの生産はどうします?社長に拗ねられたら困ります」

「実質的に生産してるのはモルト君よ。大丈夫。私からハンスさんに協力するように言っておくから」

「で、でも、運搬は」

「ああ、冷たい目の彼には、あとでモデルガンを渡せばいいか……」

「モデルガン?」

「とにかく、私が居なくても工場は回るようにしておくから!それでオーケー?」

「オーケー??わ、分かりました。どうなっても知りませんよ」

「よしよし、なら、すぐにアタッシュケースにビールパンと缶ビール、あと、鬼煎餅?あら?私ってほとんど旅行用荷物がないわね」

「お着替えとか、歯磨きセットとか、他に要らないんですか?」

「あらやだ。私、この世界に生まれてから、着たきり(すずめ)だわ」

「え、お洋服をお脱ぎになった事がない?」

「ちょっ、ハンスさん!?そのなんか常識知らずで不潔ですみたいな顔をしないで!」

「え、私、常識知らずで不潔です、な顔なんですか?」

「どんな顔よ!?例えよ、例え!」

「はあ」

「とにかくハンスさん、《《よろしく》》」



やりました。

ついに外国旅行です。

思えば前世でも最初の海外旅行はハワイに決めてましたが、結局ハワイアンズでした。


え、勿論いい湯でしたよ?

福島県を応援してますから!


でも、今度ばかりは逃す訳にはいきません。

私は外国旅行に行くんだーっです。


こうして私はハンスさんを説得し、上手く馬車に潜り込んだのでした。


え?

なんでビール配送トラックを使わない?


いや、あの冷たい目の雪ウサギが運転するトラックの助手席で何時間も無言でいろと?

ムーリー!絶対、無理。

居眠りしたら狙撃されます。

私、まだ生きていたいので。

は!?

いつの間にか、背後に冷たい気配が!

私が振り向くと………


「………」

「………」



◆◇◇◇



その頃

◆テータニア皇国

皇城

オルデアン視点


「な、なんじゃ!?この口の中でとろけるように無くなっていく、プーリンという菓子は!」

「驚いたでしょ?でも、もっと驚く事があるのよ」

「何じゃと!これ以上、驚く事があるというのか、オルデアン!?」



今日は織姫ちゃんとの勉強会。

それで家庭教師の先生方に教わっていたのだけど、ようやくお休み時間を頂いて、二人でおやつを食べてるの。

もちろん、おやつの主役はプーリンよ。



「見てて。こうしてカップを逆さにして、ここにある突起を折る」パキッ

「おお?」

「そして、ゆっくりとカップを取ると、あら不思議」

「おおーっ、小山が出てきたのじゃ!しかも、上が黒っぽいのじゃ!」

「これを少しづつ削りながら食べるのよ」

「おおお、まさに神の食べ物じゃ!最高じゃ!しかし、食べたら崩れてしまうのではないか?」

「そこを、最後まで崩れないように食べられたら幸せになるの」

「なんと、最後まで崩れなければ幸せになると!?わらわもやるのじゃ!」

織姫(おりひめ)ちゃん、さっき食べちゃったじゃない」

「もう一つ、所望(しょもう)じゃ!」

「えーっ、もう無いよーっ!」

「何じゃ、ソコにあるではないか!」

「え、これ、オルデアンのだよ!」

「固い事を言うではない。共に食べるのじゃ!ぱくっ」

「きゃあ!?山が崩れ……ない?」

「どうじゃ。上手いじゃろ」

「えーっ!なら、ぱくっ、ほら!」

「な、何と!?なら、ぱくっどうじゃ!」

「ぱくっ、ほら、崩れない!」

「おのれ、ぱくっぱくっ、どうじゃ!」

「あーっ、織姫(おりひめ)ちゃん、二口も食べたーっ!?ぱくっぱくっぱくっ」

「うわあっ、オルデアンが全部、食べてしもうた。無くなってしもうた。うわああん」

「えーっ、だって元々私のプーリンだよ!」

「わらわも、もっと食べたかったのじゃあ。無くなってしもうたのじゃ!うわああん」


バタンッ

「オルデアン、何を織姫(おりひめ)様を泣かせているの!」

「お、お母様!?ち、違うのです。織姫(おりひめ)ちゃんが私のプーリンを食べたから、慌てて私も食べただけです」

「まあ、この子はなんて嘘をつくのでしょう。せっかく次のプーリンが届いたから持ってきてあげたのに、嘘をつく子にはプーリンはあげません」

「えーっ!?」

「はい、織姫(おりひめ)ちゃん、貴女のプーリンよ」

「おお、皇妃様、有り難うなのじゃ!」

「お母様!」

「其じゃあね、仲良くするのよ」


バタンッ



「そんなーっ!うわああん、うわああん」


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