表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/429

第69話 日常

さて、今日は嬉しい給料日です。


毎月10日締め25日払いです。

現実的で夢がありませんが、定期的に入る、お給料は生活基盤でありますので、なくては困るものでもあります。


今日ばかりは、家庭不和の雪ウサギおばちゃんもウハウハで、いつもの (かげ)がありません。

やっぱり明るい事は良い事です。

いつもは暗い工場警備員の駄犬(だけん)さん(フェンリル警備会社りるそっく社員、ヒューリュリ様です)も何故か、マイ▪ジョッキ片手に嬉しいみたいです。



「おばちゃん、今日は機嫌が良さげですね」

『アラ嫌ダ、かーなチャン。今日ハ給料日デショ、居酒屋ろぐはうすデ飲ミ会ヨ。かーなチャンモ来ルデショ?』

「あ、はい。でも旦那さん、よろしいんですか?」


ああ、言ってはいけない事だったようです。

雪ウサギおばちゃんは、みるみる背後に黒いモヤを溜めてしまいました。

絶頂から谷底に叩き落としてしまったようです。我ながら罪な妖精です。

それとも才能?

前世、社畜時代(今も社畜)もそうでしたが、私は一言多いようです。癖のようなものでしょうか。

格言、人の不幸は蜜の味。

あれ?格言だっけ?


『……かーなチャン、今日ハ付キ合イナサイヨ』

「あ、はい。でも、28号社長にも誘われてるので、長くは居られませんが」


バシッ


柔らか肉球が、私の羽根をゲットしました。

これでは身動き出来ません。

強制的に三次会までお付き合いだそうです。

今回は、私の羽根に吐かないで欲しいのですが。


そうそう、パート社員のお給料はビール樽、3個と、ビール酵母パン、1ヶ月分です。

給料は物納が基本給ですので、あとは場合によりビール券を頂ける事になっております。


因みに私は一応、正社員でありますので、旅行費用捻出の為、物納の他に皇国貨幣で頂いております。

商品アドバイザーのハンスさんと、ビール販売営業兼異世界漫遊旅行をする約束が有りますので、その時の為に貯金中です。


『男ナンテ、ミンナ若イ女ガイイノヨ!スケベデ最低。アンタモ変ナ男二引ッ掛カルンジャナイワヨ!男ハ(けだもの)ヨ!』

「はい、そうですね」


聖獣(せいじゅう)である雪ウサギおばちゃんが激白です。

やっぱり聖獣(せいじゅう)は、(けだもの)とは違うのでしょうか?

毛むくじゃらだし、肉球だし、私には 聖獣(せいじゅう)(けだもの)の区別はつきません。


彼女の旦那は、隣の アパート(巣穴)に越して来た若いメス雪ウサギのところに入り浸りで、もう一週間も彼女のところに帰ってこないのだそうです。

お子さんが8羽もいて、これから物入りなのに、困った旦那さんです。



さて、居酒屋ログハウスに到着です。

さっそく、ちゃぶ台をかこんで、雪ウサギおばちゃん達の飲み会のスタートです。


あ、向こうのオス雪ウサギの集まりは、鬼煎餅を両手に、股間隠しの下品な踊りを始めました。すでに出来上がっているようです。

他のお客の迷惑になりますので、誰か、注意に行った方がよいでしょうか?


パンッ、パンッ


あ、何でしょう!?

突然の銃声です。

下品な踊りを始めたばかりのオス雪ウサギが撃たれたようです。

店の中は騒然としています。

犯人は……そこのM16アサルトライフルを持っている冷たい目をしたオス雪ウサギでしょうか?


おっと、埼玉県警と書いてある藍色チョッキを着た雪ウサギ達が店に雪崩れ込みました。

アサルトライフルを持ったオス雪ウサギを捉えた様です。


ボサボサ頭のヨレヨレトレンチコートを着た、短いシケモクを吸っているオス雪ウサギが現れました。


刑事でしょうか?

冷たい目のオス雪ウサギの前を行ったり来たりと、なにやら動機を推理しているようです。


あ、どうやら推理の結論が出たようです。

冷たい目のオス雪ウサギは、冷たい目のまま一言も喋っておりません。


あ、はい。

どうやら推理が当たった様です。

冷たい目のオス雪ウサギが頷いています。

何でも、背後に立たれたので撃ったと!?


とんでもないテロリストです。

でも、その凶悪殺人犯が捕まって良かったです。皆が安堵しております。


え!?

撃たれた筈のオス雪ウサギが立ち上がりました!しかも、股間隠しの下品な踊りを始めています。

ああ、その場で埼玉県警のオス雪ウサギ達に捕まってしまいました。


罪状は、わいせつ物陳列罪と迷惑防止条例違反だそうで、こういうのを踏んだり蹴ったりと言うのでしょうか。

でも股間は一応、自毛で隠れておりますので、情状酌量の余地はあるでしょう。


こうして今日も、私の【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】内の日常は過ぎていくのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ