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第50話 大麦

雪ウサギの種蒔きが終わった翌日、養豚(ようとん)……もとい、養雪ウサギ場と化した辺り一帯ですが、私はめげません。


さてと、今日も素敵な朝日が登りました。

野良仕事には最高です。

では、まずは準備運動です。


「皆さん、私に続いて下さいね。さんはい、いちにさんしーご苦労さん、ロクしち、はっきりくっきり、東芝さん。はい、もう一度、さんはい」

『『『『イチにサンしー、ゴ苦労サン、ロク七、ハッキリくっきり、東芝サン』』』』

「いいですよ、さあ、続けて、続けて」

『『『『イチにサンしー、ゴ苦労サン、ロク七、ハッキリくっきり、東芝サン』』』』

『『『『イチにサンしー、ゴ苦労サン、ロク七、ハッキリくっきり、東芝サン』』』』

『『『『イチにサンしー、ゴ苦労サン、ロク七、ハッキリくっきり、東芝サン』』』』


はい、カエルの大合唱ならぬ、雪ウサギの大合唱。一匹、白い駄犬が混ざってますが、まあ、いいでしょう。


(あるじ)、我は、もうクタクタなのだが、何故、(あるじ)と雪ウサギ達は、そんなに元気なのだ?』


ピキーン、私の目がキラリと光ます。


『『『『『『ピキーン』』』』』』


そして、すっかり私の忠実な(しもべ)となった雪ウサギ軍団も一斉に目が光ます。あら?ヒューリュリ様。どうしましたか、後退(あとずさ)りされておりますよ?


『あ、(あるじ)!?なんか、物凄い威圧感があるのだが?』


この数週間、私と雪ウサギ達の闘いを、カウチポテトならぬ、カウチ鬼煎餅(おにせんべい)をしていた駄犬、もとい、ヒューリュリ様です。

私はヒューリュリ様のお腹のところに下り立ち、指でそのお腹を押してみます。


ズブズブッ

うむむ、私の腕どころか、私がヒューリュリ様のお肉になってしまいます。


『あ、(あるじ)、何をしているのだ!?』

「……でぶいです…………」

『で、でぶい?!』

「このままでは、順調に成人病予備軍の仲間入りです」

『せいじんびょう?』

「28号!」

『呼バレテ飛ビ出テジャジャジャジャーン、オ呼ビデスカ?女王サマ』


私が28号を呼ぶと、大魔王(だいまおう)もとい、鉄人が現れた。

それでは、ヒューリュリ様の効率的ダイエットを始めましょう。


「ヒューリュリ様、28号を背中に乗せて下さい」

『意味は分からんが、しゃがめばいいのか?』

「そうですね、はい、28号。ヒューリュリ様に乗って下さい」


ヒョコッ、28号がヒューリュリ様の背中に股がります。はい、準備完了っ。

私は亜空間収納から、先日ナビちゃんから頂いた釣竿を28号に渡します。


『女王様、準備オーケーデス』

「宜しい。ではでは」


私は釣竿の糸の先端に、ヒューリュリ様のカミカミ……例の骨を結びます。完璧です。


「行ってらっしゃい。『馬の鼻先に人参』マラソン、レッツゴー!」

(あるじ)、馬の鼻先とはなんだ?』


私が森の奥を指差しますが、ヒューリュリ様はキョトンとしております。

うふふふ、まだ分からないですよね?ほら、28号が(カミカミ)をヒューリュリ様の目線に落とします。

おお、ヒューリュリ様のお顔が変わりました。


『そ、それはカミカミ!?カミカミしたいのだ。カミカミのカミカミによるカミカミの為のカミカミがカミカミでウオオーン!!』

『デハ女王様、森ノパトロール二行ッテ参リマス』

『カミカミ━━━━━━ッ!!!』

「行ってらっしゃいーっ」

ダダッ、ダッ


ヒューリュリ様と28号は、あっという間に森の奥に消えました。これでヒューリュリ様はオーケーです。

ダイエットは計画的にですね。


さて、さて私は作業に入りますか。

因みに私が召喚した大麦は、二条オオムギです。

ええっと、二条オオムギの育て方は?

教えて教えて私のナビちゃん。


▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩

日当たり▶日当たりと水はけのよい、風通しのある場所に直まきできれば、ほぼ放任で育ちます。

温度▪▪▶発芽適温10℃~15℃、生育適温20℃以下。10月~11月頃に種をまいて越冬させ、翌年6月頃に収穫します。

土▪▪▪▶pH6.0~6.5の土壌を好むので、酸度調整が必要な場合は、石灰を混ぜて中和する。堆肥などの腐植物に加え、肥料は、チッソ、リン酸、カリをバランスよく含む肥料を施すが、多肥の必要無し。

▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩


意外と育て易いのが大麦です。

よし、よし、これを、大麦の、【成育空間システム化】。


「いいかな?いいよね?それじゃあね、今から、今から始めるよ」


私は、ふわっと飛んで、大麦の畑の上、何もない空間からタンバリンを取り出します。


「はいよ、踊るよ、大地の息吹き。あなたが咲くとみんな幸せ。私の声が聞こえたら、どうか応えて下さいな。あなたの幸せが、みんなの幸せ、みんなで、みんなで幸せになろう。タン、タン、タ、タ、タン、タン、タン、タン。タン、タン、タ、タ、タン、タン、タン、タン」


私がタンバリンを叩くと、私の背中のチョウの羽から、銀色鱗粉舞い落ちて、みるみる、大麦を包みます。

ほら、ほら、ほら、ぐんぐん芽が出る、葉が伸びる。あっという間に、大麦の、綺麗なお花が開花する。

これが私、花妖精、私だけの力です。


大麦の花は、その青い穂先に白い小さな花を付けます。

穂先が白っぽくなる程度でしょうか。

綺麗とは言えませんが、穂先を含めて大麦全体はやっぱり素敵です。

何ていいますか、人の歩みに寄り添う草花の一つ。

かのツタンカーメンのお墓にも、大麦が添えられていたそうです。

悠久の時を越え、人類と歩んでくれた大麦達。


大麦の花言葉は、富▪裕福▪繁栄▪希望。 古くから収穫の象徴とされていて、縁起のよい言葉ばかりが並びます。

本当に大麦に感謝ですね。



さあ、今日から私は麦農家。

農民スキル、全開です!!

雪ウサギ軍団の(あるじ)として、最高の麦農家になって見せましょう!


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