第405話 ダンジョン砂漠11(消耗戦?)
◆ダンジョン砂漠
カーナ視点
「キュイキュイキュイイ《はい、もう一杯なのです》」
『うむ、良きに計らえなのだ』
うーん、ララちゃん君のお酌にすっかり浮かれているヒューリュリ様。
何故かその頭にはチョンマゲがあり、背後には金ピカ和服の丁髷オッサン達がサンバ踊っています。
ララちゃん君曰く、お酒の精霊だそう?
精霊がやべぇ?!
それにこのアル中駄犬、いい加減飲み過ぎでしょ!
はい、また脱線しましが私達はその後、襲ってくるサンドワームや昭和民芸ヘビ笛(漆黒メカニクススネーク)を順調に吹き飛ばしながら砂漠の中心?に向かって進んでいくのでした。
そして殆どが私とララちゃん君による成果でしたが、これはある意味致し方ないところ。
圧倒的な私達の力はキャラバンの中で随一です。
それでもアルタクスさん達のカッコイイ活躍はそれなりにありましたよ?
ただ私とララちゃん君コンビによるスピリット・オブ・インテグレーション《精霊一体化》が強力過ぎるだけです。
まあ、物理で殴り飛ばすだけですけど。
とにかく順調に突き進んだ私達。
そして遂にというか、ゴーレム残骸が集中する砂漠地帯の中心?に到着したのでした。
「何なの、これ?!」
「キュイキュイキュイイ《分からないのです》」
「これは………」
『何かの爆発の後であろう?』
「そうなんだけどぅ、問題はその爆発がどうやって起きたかという事なんだよぅ」
「「「「「?!!」」」」」
いわゆる爆心地でしょうか。
噴火口の様に空いたクレーターは東京ドーム20個分はありそうです。
どうやらこの場所が、ゴーレム軍団と昭和民芸ヘビ笛軍団?との決戦の場になった模様。
ゴーレム側、昭和民芸ヘビ笛側ともほぼ同数の残骸が広がり戦闘の激しさを物語ります。
まあ私達には関係ない話ですし、ハッキリ言って残骸は迷惑でしかありません。
真っ直ぐ進みづらいし、歩きづらいし、邪魔でしかありません。
あ、そんな事言ったらお亡くなりになってる皆様方に失礼です。
これは私の失言でした。
カーナ「で、今更思ったんだけど、何でゴーレム軍団と昭和民芸ヘビ笛軍団って戦ってるのかしら?」
ヒューリュリ『主、本当に今更だな』
錬金ちゃん「カーナぁ、ソコは最初に疑問を持つべきだよぅ」
ララちゃん君「キュイキュ《アタシは考えてたのです》!」
カーナ「待ってよ?!それじゃ私は何も考えてない頭空っぽみたいじゃない?」
ヒューリュリ『空っぽなのだ』
錬金ちゃん「何も考えてないよぅ」
ララちゃん君「キュイキュイイ《行き当たりばったりよ》!」
ああ、そういう?!
日頃から皆が私をどういう目で見ているのが分かり、ちょっと滅入ってくる今日この頃。
コンチクショウ。
ズガガガガガガーンッ
ドーンッ
その時でした。
そのクレーターの中心付近が爆発して、何かが噴き出してきたのです。
その何かは多数の昭和民芸、つまり漆黒メカニクススネークの塊だったのでした。
そしてその中心にいるのは何とあの黒アゲハ?!
私ソックリな黒いパワードスーツを着てスネークの群れを地中から吹き飛ばしたよう。
そして更なる戦闘が目の前で始まったのです。
ズがガガーンッ
ギューンッガガーンッ
ヒューンッズバババンバンッ
チュドーンッズガガーンッ
双方から飛び交うビームとミサイル群の応酬。
しかも目にも止まらぬ高速移動で大量のスネークをねじ伏せる黒アゲハ。
だけどその表情には全く余裕が感じられません。
お互いに相手に致命傷を負わせようと、持ち前の戦力を全て投入しての消耗戦の様相?
当然ながら私達に介入の余地は無く、クレーターの端に隠れ慎重に様子を見守るしかありません。
「なんて戦いなの?!もはや未来のメカバトル。私が言うのも何だけど、ファンタジーの世界観が台無しだわ!」
「世界観台無しはカーナぁの専売特許だったのにねぇ」
「錬金ちゃん、そこまででもないわよ」
『ふぁんたじー?我にはそれの意味すら分からんのだが?』
「キュイキュイキュイ《精霊にはもっとワカランのです》」
「分からんでよろし。それよりヒューリュリ様、そろそろ背後の《お酒精霊》に帰ってもらって。なんか衣装が眩しいから!」
『うむ、なんか我の背中が気に入ってしまったようなのだ』
「は?」
『先ほどだが居心地がいいので我の《背後精霊》になったそうだ』
「はあぁああーーーーーー??!!」
ここにきてトンデモな精霊騒ぎになりました。
そしてヒューリュリ様の言葉を肯定するように順番に頷くギンギラギン衣装のチョンマゲおっさん達。
眩しいし紛らわしいし面倒事は勘弁して下さい。




