第390話 ダンジョン?(熱砂の砂漠3)
◆ダンジョン?(熱砂の砂漠)
カーナ視点
「黒い煙?化学系の爆発かな??」
「かがくけい??何の爆発か分かりませんが、あそこに誰か居るという証かと」
「そうだよね」
ようやく傾いた太陽と地平線に現れた黒煙。
そろそろ動きがあった様です。
さっそくアルタクスさん号令の元、イケメン予備軍達が出発の準備に入りました。
私もログハウスを収納して、本来の定位置であるヒューリュリ様の背中に戻ります。
アルタクスさんポケットは名残り惜しいのですが、いつまでも彼処を定位置にする訳にもいきません。
「あの黒煙がオルデアンちゃん達に繋がる貴重な機会。何としても誘拐犯達に追いつくのよ!」
こうして私達は、ようやく明確な目標に向け出発する事となりました。
黒煙までの道のりは目測で数十分から1時間程度と読み込みました。
今度こそオルデアンちゃん達を救出したい、全員がその気持ちで一つでした。
❇❇❇❇❇❇
そして砂漠を進んで1時間あまり。
思ったより長かった道のりでしたが、ようやく私達は黒煙の発生現場と思わしき場所へ到着する事が出来ました。
しかし目の前に広がる状況に、どう対処すればいいのか分かりません。
というのは、あり得ない情景が私達の前に広がっていたからです。
「これはどういう事なの?」
あたり一面に散乱する大量のスクラップ。
これは黒アゲハの部下、メカニックゴーレム達の残骸に違いありません。
その数はおよそ百体以上。
私達がこれまでに遭遇したゴーレムの総数を遥かに上回る数でした。
そして問題は、その破壊されたゴーレム達の様子です。
ボロ雑巾のように絞りつくされての破壊とか、バラバラにされた状態とか、ネジ切られるように破壊されてる姿とか、下半身だけ残しての破壊とか、とにかく圧倒的な強者と戦闘したとしか思えない情景がソコにありました。
アルタクス「一体何が起きたのでしょうか」
カーナ「これは黒アゲハを守るゴーレム軍団?」
ヒューリュリ『これは尋常ならざる状況なのだ』
黒アゲハのゴーレムは、その一体が十八メートル以上、重量は恐らく数トンに及ぶでしょう。
その装甲は重厚な鋼鉄製。
ちょっとやそっとでは曲げたりするのも困難なはずです。
それを破壊するだけでなく、粘土のように曲げたり分断したり捻ったりと、まるでその力を誇示するように無惨に破壊して残骸を晒しているように見えます。
中には緑ゴーレム、黒ゴーレムの混在したお団子になってるものまであります。
しかも、これだけの数を破壊したのです。
その敵対者に対して恐怖を感じざるをえません。
「桁はずれの負のエネルギーを感じるよぅ」
「錬金ちゃん?」
ゆっくりと辺りを見て回っていた錬金ちゃん。
私の横に戻ってきて自身の感想を述べました。
負のエネルギー???
「錬金ちゃん、負のエネルギーって?」
「とても良くないもの。世の中にあってはいけないもの」
「???」
とても良くないもの?世の中にあってはいけないもの??
錬金ちゃん、それじゃ何も分からないんだけど。
「黒アゲハの敵対者?ゴーレム達をこれ程破壊できる新たな勢力がこのダンジョンにいるの?!」
「だとすると急がなければなりません。カーナ様が黒アゲハとする者がダンジョンの支配者だとすれば、それと敵対するのはダンジョンの破壊者という事になります。オルデアン様達救出の障害になるやも知れません」
「アルタクスさん、障害になる?」
「ダンジョンはそれなりに固定化された仕組みで制御されているはずです。我々が簡単に太刀打ち出来ない鋼ゴーレム達をこれ程までに破壊できる相手、当然ながらダンジョンにすら干渉出来るのではないでしょうか。だとすれば我々も含めて、ダンジョン内にいる全ての者は何らかの影響を受ける可能性があります。そうなればオルデアン様救出の大きな障害になるのではないでしょうか」
成る程。
制御されたアトラクションは、お化け屋敷でも怖さを安全に楽しめるけど、コンピューターウイルスに侵された制御から外れたお化け屋敷は、違う意味の怖さがあると、そういう意味ですねアルタクスさん。
え、違う???




