第370話 ダンジョン神殿(偽神殿)
ダンジョン神殿
カーナ視点
オーフロデキュッキュッキュッ、キュッキュッキュッ、キュッキュッキュッ
オーフロデキュッキュッキュッ、トーキョーシンブンッ
『…………………………』
オーフロデキュッキュッキューッ
カチャリッ
えーアレは何しているんですかね?
G13の狙撃の餌食となり、失ったトカレフの大きさに茫然自失の黒ウサギ達。
もちろん全員簀巻きにして拘束済みですが、私が問題視してるのは彼らではありません。
問題なのはその茫然自失の黒ウサギ達、その目の前で彼らから取り上げたトカレフを可動部から一つ一つ確認して黙々と丁寧に布で拭き上げてる1羽の雪ウサギの存在の事です。
20丁のトカレフは彼の前に整然と並べられ、その場に独特な世界を作りあげています。
ええ、その雪ウサギはご察しの通り冷たい目をしていて常時寡黙。
普段から何を考えているのか分からないばかりか、人を見ればやたらと狙撃したがる常軌を逸した存在の彼。
新しい玩具を手に入れて、今は至上の喜びの中にいるのでしょう。
その玩具が《私に変わる》前に、ここは速やかに距離を取る事と致しましょう。
くわばら、くわばら、です。
『おい、アイツを置いていくのかよ?』
「レオの馬鹿!?気づかれたら元も子もないでしょ!今のアイツは幸せの真っ只中にいるの。それを邪魔しないだけよ」
黒ウサギ達を無事に屈服させて完全に神殿を掌握した私達は、別働隊をヤッていたレオナルド達と合流を果たしました。
流石にバカでかい怪鳥ペリーは神殿外に待たせましたが、レオナルドとG13がメンバーに加わりました。
加えたくなかったけど。
それで黒ウサギ達の監視役を名目に上手くG13を置いていく事を画策したところ、レオがズバッと私の計画に突っ込みを入れてくれやがりまして、G13の興味がコッチに向かうんじゃないかとハラハラドキドキのスペクタクル。
レオナルド・ダ・バカヤロー。
どうにか奴との距離を取れた時点で、神殿に詳しいアルタクスさんのポケットに戻り一息ついたところです。
ところで、神殿に詳しいはずのアルタクスさんですが、何故だかキョロキョロと見慣れているはずの神殿内を見回しています。
どうしたんでしょう?
「アルタクスさん、どうしたんですか?」
「カーナ様、ちょっと変なんです」
「変?」
一人、神殿の最奥にて悩むような素振りのアルタクスさん。
変って何が?
「ここは確かに新年の義で王族が祈りを捧げる祭壇ソックリなんですが、雰囲気が微妙に違うんです」
「それは、どう違うの?」
「新しいんです」
「新しい?」
「祭壇や神殿のあらゆる場所が、まるで建て直したように新しいのです」
それはつまり、全く同じように作り込まれた神殿のレプリカという可能性?!
私達は黒アゲハに偽の神殿に誘導されてしまったの?
「アルタクスさん、前回も私達は平原を越えて此処に辿りついたわ。その時はどうだったの?」
「分かりません。あの時は直ぐに別の場所に飛ばされたので、冷静に観察する時間も違和感に気づく間も無かったかと」
「そうだよねー」
前回アルタクスさんの説明では、神殿は本来迷路のような地下通路を抜けてその最奥にある開けた地下空間に設けられていたというもの。
そこでテータニア皇国の皇族は新年の行事を毎年取り行なってきたと聞いてます。
え?
すると、最初から神殿の場所はここじゃなかったんじゃないの?
「アルタクスさん。もしかしてこの神殿、本来の場所で無かった時点で最初からニセモノだったんじゃ?」
「………………………」
「アルタクスさん?」
「………すいません。それは頭にありませんでした。冷静に考えれぱその通りで、あまりに似ていたし、神殿を守るタールマンや黒ウサギ達もいたものですから疑う事を忘れていました。やはりカーナ様の言う通り、この神殿はニセモノに間違いないでしょう」
流石にちょっとバツが悪そうなアルタクスさん。
それでも絵になるタモ網級イケメンは違います。
結局ニセモノ認定でどうなる訳でもありませんが、色々と認識が違うと万が一にも足をすくわれる可能性もあります。
正しい認識は持っていた方がよいでしょう。
どちらにせよ仕切り直しですかね。
今ごろオルデアンちゃん達、何処にいるんでしょう?
あの呪い人形に怯えて泣いていなければよいのですが、早く助け出したいのに私達は今だこんなところで足踏み。
これも黒アゲハの嫌がらせなのかも知れません。
本当にオジャマ虫。
うーん、何かブーメラン気分になるのは顔がソックリだからかしら?
気分悪いわぁ。
もうちょっとの辛抱だから何とか我慢して待っていてね、オルデアンちゃん、織り姫ちゃん、グルちゃん、ピカリン、ララちゃん君?
因みにハムスターのララちゃん君はグルちゃんの使い魔でモフモフす。
登場期間が短かったからここで補足しときます。
いや、私もあまり喋ってないから分かんないだって。




