第367話 ダンジョン薄暗い平原7(神殿再び)
◆ダンジョン薄暗い平原
カーナ視点
ザザザザザーッ
「グワッグワッグワッグワッグワッ!?」
「クワーッグワッ!!」
「グワッグワッグワッグワッグワッ!」
「クワーッ?!」
「クワーッグワッグワッグワッ」
「グワッグワッ!!」
「グワッ!?」
はい、荒波に晒される《絶縁ノアの方舟》、甲板に結ばれたペリ馬鳥達が相当な影響を受けてパニックになってます。
空を飛んでた時は安定していたんですが、流石に数メートル級の押し寄せる波の中で船の安定を維持する事は困難。
そのしわ寄せは、甲板に結ばれたペリ馬鳥達にダイレクトに伝わります。
アルタクスさんとイケメン予備軍達が何とか鳥馬達をなだめておりますが、甲板上の揺れはどうにもなりません。
「やべー、気持ち悪くて吐きそう」オエー
『主止めよ!?既に吐いてるではないか!』
「気持ち悪いっていってるの!」オエー
『だからと言って何故に我の陰で吐くのだ!?』
「私は乙女なのよ?アルタクスさんに吐いてる姿を見せられるわけないじゃない」オエー
『我にかかっているではないか。離れるのだ!』
「主命令よ、吐き終わるまでソコにいなさい」オエー
『主、あんまりなのだ』シクシク
いや、まさか船酔いのトラップがあるとは思いませんでした。
考えてみれば至極当然な事。
何しろ私は自身の羽根を使った飛行でも酔うくらい船酔いには弱いのです。
これは前世でもあって自分で運転する車に酔うなんてザラにありました。
まさに前世の因縁でしょうか。
(運転者が車酔いしたら普通は運転出来ません)
「そんな事より、まだ神殿には着かないの?」
(『あと少しだ。今の速度なら1時間程度だな』)
「あと1時間もこの状態なの?勘弁して!」オエー
『本当に勘弁なのだ』
レオナルドからの念話に絶望しかない私。
ヒューリュリ様が何かボヤいてますが、この船酔い地獄から抜け出すのは1時間後。
そんな先なら私は血反吐を吐くしかありません。
カーナ「ヤバい、余裕で死ねる自信があるわ!」
レオナルド(『それは無いな』)
ヒューリュリ『主なら余裕で乗り越えられると思うのだ』
錬金ちゃん「カーナなら大丈夫だよぅ」
アンタら、その根拠は何処から?
とにかく私はその後の結果、1時間の船酔いに耐えヒューリュリ様を泣かせたのでした。
メデタシメデタシ。
「さて、神殿に着いたけど、これからどうしたものか」
神殿には到着しました。
神殿は小高い丘の登った先、やや盆地の中央にあったと思ったのですが、その小高い丘というのは火山の外輪山のように神殿を取り囲んでいた事が分かりました。
お陰で押し寄せる水は神殿まで届かず、ギリギリ外縁部上段付近でその上昇は止まりました。
いわゆるセーフというやつです。
直ぐ様全員方舟から降り、私は不要になった方舟を亜空間収納に入れました。
これで船酔いともオサラバです。
片隅で水浴びしてるヒューリュリ様が怨めし顔で私の方を見ていましたが、気にしないので数秒でその存在を忘れました。
「えーと、それで新しい事業の話なんだけど」
「カーナ様?」
「需要見通しを確認する前に、やっぱり量産化出来るかどうかの確認は必要だと思うの」
「何の事でしょうか?」
「ゾンビコナーズの事ですよ、アルタクスさん」
「ゾンビコナー???」
あれれ?
アルタクスさんはスッカリお忘れになっておる。
また始めから説明はメンドイので単刀直入に本質を確認します。
「えーと、ゾンビを退けてる呪いの内容についてです」
「呪いの内容は皇家の秘匿案件です。容易く人に教える訳にはいきません」
「!」
秘匿案件、そうでしょうね。
まして皇国の皇室に関わりがあるのなら、万が一にも国家の体面に関わりますもの。
「ですがカーナ様には教える事は大丈夫です」
「え?」
「その代わり他言無用でお願い致します」
「他言無用……分かったわ」
他言無用ですか。
だけど私に教えるのはオッケーって、その判断はよく分かりません。
でも内容によって開発者に教える必要が出てくるかも知れません。
まあ、臨機応変でいいんじゃね?
「実は、あの黒い妖精が見せた断罪と称する映像は、その呪いと関係があるのです」
「あ、あの空間にあったシアターホールで見たという結界にまつわる妖精女王の話ね」
私は見ていないのですが、ヒューリュリ様が似たような事を言ってましたね。
テバサキ?
あの夫婦は家庭の営みをしていただけです。




