第365話 ダンジョン薄暗い平原再び5(所有権?)
◆ダンジョン薄暗い平原
カーナ視点
あ、思い出しました。
前回はアルタクスさんが正体不明な術?を用いてタールマンやゾンビ達を退けたんでした。
私はそれを疑問に思い質問しようとしたんですが、アルタクスさんのイケメンスマイルに阻まれて疑問自体がどーでもよくなって、質問する事を忘れてしまっていたんでした。
うーん、いくらアルタクスさんにイケメンスマイルされたからといって、こんな重要な疑問を今の今迄忘れるなんて私ったらオチャメでしたね。
せっかく思い出したのですから、アルタクスさんに質問してみましょう。
「アルタクスさん、そういえば前回神殿に到着した時、変わった術でゾンビ達を退けてましたね。あれは一体何だったんですか?」
「カーナ様、あれは王家の秘術なんです……」
「王家の秘術?」
「はい」
「つまり、秘術でゾンビ達を退けられると」
「その通りですが、退けたというのは違います」
「退けた、のは違う??でもー」
「結果はそうですが、あれは嫌われた、という事が正しいのです」
「はい?」
アルタクスさんの説得に私の頭の上にクエスチョンが点滅です。
退けてたのかと思っていたら、ゾンビさん達に嫌われただけ。
それはつまり某殺虫剤メーカーの虫コナーズ的なものだったと?
成る程。
ゾンビコナーズですか。
レシピが分かれば量産型が作れそうです。
あとは需要がどれくらいあるかですかね?
ふむふむ、ゾンビだけだとアピールが弱いかもです。
市販化するにはゴキやヤブカ対策もセットでコナーズ出来る方が売れるのではないでしょうか。
あ、だけど根本的な事を忘れてました。
この世界の気候変動は氷河期の始まりに差しかかっている事が想定されます。
つまりゴキもヤブカも需要が無い。
ならばゾンビコナーズだけで、どれだけの需要があるかを調査するしかないですか。
「アルタクスさん、一般論でゾンビコナーズの需要はどのくらいあると思います?」
「は?ゾンビこな??」
「アルタクスさんの秘術です。それを世間一般に売り出そうと思うのですが需要との兼ね合いになるので、一般的なニーズが知りたいのです」
「???」
ありゃ?
アルタクスさんは首をひねっておりますね。
私の説明が上手く出来なかったかしら。
『主、それは止めた方がいいのだ』
「ヒューリュリ様?」
『其奴は呪われておる。その秘術は呪いによるものなのだ』
「呪い?はいぃ?!」
いきなり並走するヒューリュリ様が声をかけてきたと思ったら爆弾発言です。
アルタクスさんが呪われている?
一体何の冗談ですか!
「ヒューリュリ様、呪われているなんて、それはアルタクスさんに失礼ではないですか?」
『我は嘘は言ってはおらん』
「そもそも呪いなんてあるんですか?」
この世界にきて魔法みたいなものが有るのは理解しましたけど呪いなんかも有るの?
それはそれで怖いんだけど!
井戸から髪の毛長い女の人が出てきちゃう的な?
あの黒子女子操る人形も十分怖いし、この物語はホラー化してるって言ったら私十分信じるわよ!
「カーナ様、ヒューリュリ様の話は本当です。この秘術は呪いを受ける事で、ゴーストゾンビやゾンビから身を守る効果を得る方法なのです」
「アルタクスさん、本当に呪われているんですか?」
「はい」
なんて事。
アルタクスさんが呪われている!?
だけどゾンビが嫌うだけの呪いだったら、それは呪いではなく祝福ではないでしょうか。
問題は呪いが及ぼす影響の範囲です。
私の記憶が確かなら、ラノベとかの情報では呪いは必ずペナルティが存在します。
ならばアルタクスさんに何らかのペナルティがあるという事?
それじゃあ、アルタクスさんは傷物扱いになってしまいます。
「それは困ります。アルタクスさんは私のなんだから!」
「はい?」
『主、いい加減にするのだ』
私がアルタクスさんの所有権を主張したらヒューリュリ様が呆れ顔で言いました。
アルタクスさんは理解出来てないようです。
既にツバを付けていたんですよ?
もしタモ網級イケメンの価値が下るような事があれば、それは私が困るに決まっています。
え、駄目??
何が?




