第364話 ダンジョン薄暗い平原再び4(挟み撃ち)
◆ダンジョン薄暗い平原
カーナ視点
「あれは何かな?何か黒い壁が迫ってくるんだけど?」
(『馬鹿、溢れたんだ!早く逃げろ!!』)
「ふぇ?」
珍しく焦りまくりのレオナルド。
溢れた?
それにしても荒野に黒い壁はよく分かりません。
でも近づいてるのは確か。
得体の知れないものなら逃げるしかありません。
私がそう思っていたらキャラバンの皆が一斉に走り出していました。
はい?
カーナ「アルタクスさん」
アルタクス「カーナ様、あれは水の壁です。物凄い勢いで此方に迫って来てます。巻き込まれたら危険、飛ばしますよ!」パシッ
カーナ「水の壁??」
ペリ鳥馬「グワッ!」ギュンッ
カーナ「びゃいっ!?」
アルタクスさんが手綱を引くとペリ鳥馬が急加速。
やべぇ、舌かんじゃったよ!
カーナ「へふぁがいあい!」
アルタクス「カーナ様?」
ヒューリュリ『主、他所見をしているからだ』
カーナ「うるふぁい、らけん!」
アルタクス「あの、大丈夫ですか?」
カーナ「らいりょうぶれす。らっぱりハルタクスはんははさしくてひいわあ《大丈夫です。やっぱりアルタクスさんは優しくていいわ》」
アルタクス「あの、何を言ってるか分からないのですが……」
タモ網級イケメンのアルタクスさん。
苦笑する姿でも御飯が3杯いけますわ。
このポケットをゲット出来た事、改めて神に感謝を捧げます。
取り敢えずアーメン。
あ、この世界にキリストいるん?
『アルタクス、とにかく今は水の壁に追いかけられているのだ。出来るだけ遠くに逃げるしかないだろう』
「はい、ヒューリュリ様」
うーん、いつの間にかに駄犬がアルタクスさんの上司になっとる。
まあ、年齢でいえば途方もなく年長者のヒューリュリ様。
当然といえば当然なんですが、私的にはどうにもしっくりきません。
何でかといえば、そのお腹です。
ヒューリュリ様がお座りワンコしていると、お腹の下腹が地面にボヨンとくっついてしまいます。
多分あれでヒューリュリ様が人間化したら、腹の出たバーコードおやじになってしまうでしょう。
そんな従魔を持つ主としては、この上なく恥ずかしいです。
早くダイエットさせなければなりません。
何処かに犬のライザップとかないでしょうか。
『主、また性も無い事を考えておるな?』
「………ヒューリュリ様、ダイエットしよう」
『?、不要だ。その必要性は感じない』
「その腹、みっともないんだけど」
『見栄えは気にならないのだ。問題無い』
「…………………」
駄犬だけに頑固です。
しかしペリ馬鳥と同じ速度で走れているヒューリュリ様。
ペリ馬鳥の走る速度は、人を乗せてもダチョウと同じくらいの70キロメートル。
その速度についてこれてるヒューリュリ様。
何故にそのカロリー消費量で痩せないのか、不思議なお腹ではあります。
普段どんだけビール飲んでんだ、この駄犬?!
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタッ
(キャラバン隊の足音です)
「それで何処まで逃げればいいの?錬金ちゃん」
「ここは何処まで行っても平坦な荒地、それでも一箇所高い場所があるんだよぅ」
「それって」
「その通りだよぅ、あのゾンビな神殿だよぅ」
(第297話参照)
そうでした。
この平原の唯一の高い場所はあの神殿があった場所です。
あの神殿は平原の中で唯一小高い丘に囲まれている場所。
私達は神殿に入る前、神殿の全景を見る事が出来たのでした。
なら神殿周辺に辿り着ければそれでオーケー?
「カーナ様、それには三つの問題があります」
「アルタクスさん、三つの問題?」
「一つは神殿周辺の丘まで、ペリ鳥馬が持つかどうかという事です」
「そうだわ、まだココから数十キロはあるものね?!」
そうでした。
ペリ鳥馬がどれだけ走りに特化していようと、生き物なんだから休みは必要で、数十キロを休み無しで走れる馬は鳥馬でなくともいません。
「二つ目は神殿周辺のタールマンの存在です。ここはダンジョン内に作られた閉鎖された空間。そこに空間亀裂が拡がって水が溢れた。つまりこの空間秩序の崩壊を意味します。その時、神殿を守るように存在するゾンビやタールマン達がどう動くか、全く分からないのです。万が一ですが、彼らと水の壁両方から挟み撃ちになります」
そうでした。
その存在すら非常識なゾンビやタールマン。
空間亀裂が拡がってこの世界秩序が壊れかかっている中、彼らが私達を襲わないとは何の保証もないのです。
あれ?
そういえば前回はどうやって神殿に入れたんだっけ???




