第351話 ダンジョン異空間15(充填済)
◆ダンジョン異空間
カーナ視点
ブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンブォンッ
どうしよう。
黒アゲハのパワードスーツ右腕がコチラに向けられ、その先端に装填されてるレーザー砲のような大型武器が不気味に光を増していきます。
向こうはコチラ側に守る者は一切考慮しないので、恐らく有効出力で《トールハンマー》を発射するでしょう。
さっきのビーム雨すら容易に私の電磁フィールドを出力限界まで使わせたのです。
《トールハンマー》を使われたら私だけじゃなく侍女さんズも跡形もありません。
と、こういう時、いつでも頼れるのはヤッパリ私のナビちゃんです。
「Come hereナビちゃーん!」
しーーーーーーーーん。
「アレ??」
おかしい。
いつもは、お呼びじゃないのに勝手に話かけてくるナビちゃん。
当然ながら私がお呼びの時は、必ず応えるはナビちゃんの専売特許だったはずです。
最近はAI的なナビちゃんに性格が現れていて、何か友情的感情もあるかなって思っていたところだったのですが、私の呼び掛けに無反応は初めての事。
え、ここにきてナビちゃんの雲隠れ?
このタイミングでの雲隠れは本当に困ります。
えー???!!
「錬金ちゃん!」
「カーナ、ここに居るよぉ」パタパタパタッ
「!?」
呼ぶと直ぐ側から聞こえた錬金ちゃんの声。
錬金ちゃんは私の背後に同じ高度を保ってフワフワと飛んでいました。
ナビちゃん不在の中、頼れるのは錬金ちゃんしかおりません。
「良かった、そこに居たのね。見てたなら分かるけど私達は絶体絶命よ。どうしよう?!」
「絶体絶命ならカーナも同じ武器を使うんだよぅ」
「え?同じ武器を??」
「逃げ場のないこの状況、一か八かを試すには今しかないんだよぅ」
「一か八か⋯⋯確かにそうね。やってやる!私はここで消えるつもりはないわ。錬金ちゃんも侍女さんズもアルタクスさん達も皆んな守る。文字通り私は皆んなの運命を背負っているのね!」
私は馬鹿でした。
同じ性能なら十分対抗出来る武器があったのです。
どうなるか分かりませんが私が何もしないなら皆んな消え失せるだけ。
一か八かなら足掻くしかありません。
「トールハンマースタンバイ!!!」ガチャンッ
ウィイーンガチャン、ガチャンガチャンガチャンウィイーンガチャン。
私の掛け声に全自動で応じるパワードスーツシステム。
数秒で構築された《トールハンマー》という兵器はたちまち右腕に装備されました。
直ぐにエネルギー充填が始まります。
ですが既に発射体制の黒アゲハの《トールハンマー》。
果たして間に合いますか?!
「苦し紛れの反抗か。馬鹿め、今更間に合う訳があるか!消え失せろ、残りカス!!」
キュイインッ
「ですよね、駄目かぁ!!」
完全に光の塊となっている黒アゲハ《トールハンマー》。
これは万事休すですか。
残念無念だわ、コンチクショウ!
「ごめん、錬金ちゃん。どうやら間に合わなかったみたい」
「きっと大丈夫だよぅ」
「へ?」
何故か大丈夫と言う錬金ちゃん。
どういう事?
ピコン
「ん?」
モニターに何やら光?
何の光ですかと、よく見てみたら驚きました。
何とエネルギーが既に充填済???
え、どういう事?
「さっきカーナは《トールハンマー》をフル充填しておきながら1%しか使ってないんだよぅ。だから直ぐにフル充填されるのは当たり前なんだよぅ」
「あ!?そうだった!!」
ガコンッ
そうでした。
私は《トールハンマー》を一度フル充填してたんです。だから直ぐに発射体制になるのは当たり前でした。
直ちに黒アゲハに《トールハンマー》を向ける私のパワードスーツ。
その先にいたのは驚愕の顔の、私ソックリな黒アゲハでした。
「何!?、ブラフか?」
「これでもブラフに見える?」
キュイイーーーーーーーーーーーーーンッ
「馬鹿な!?」
直ぐに黒アゲハの《トールハンマー》と同じ輝きを示す私の《トールハンマー》。
どうやら此方も発射体制に入った事が彼女にも理解できたようです。
このまま事態が推移すればお互いに同等の攻撃に晒されるのは間違いなく、そうなった場合の最悪はお互いの消滅しかありません。
つまりボールは投げられたのです。
後は彼女がどう判断するかに未来が託された事となりました。
どうなっちゃうの?




