第345話 ダンジョン異空間9(引率?)
◆ダンジョン異空間
カーナ視点
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐっ
うまい、美味すぎる。
十万石でなくとも錬金ちゃんの味付けやべー!
尋問しなきゃならないのに、食べ始めたらご飯が進む君で止まりません。
まさに美味しものは無言になりますね。
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」もぐもぐもぐもぐっ
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
えー?
おかしい。
黒アゲハ(姉)がカツ丼に手を付けません。
こんなに美味しくていい匂いなのに勿体ない。
お腹空いてなかったとか?
あ、付け髭落ちちゃった。
「もぐもーぐもぐ?」
「⋯⋯⋯何だ?さっきから何を言ってる?」
「もぐもぐもぐ」
「貴様、その声はまさか残りカスか?」
「|もぐもーぐ《何その味噌っカスみたいの》?」
「はあ、遂にここ迄やって来ただと?今頃来て何だというのだ。既に再生計画は定まり稼働が始まっている。もはや貴様に存在意義は無い」
「|もぐもぐ《そのカツ丼要らないなら喰っていい》?」
「もともと貴様の存在自体がイレギュラーだったのだ」
「もぐもぐ」
「本来母から生まれたのは我ら二人だけだった。お前の存在は有ってはならなかっ⋯⋯⋯⋯貴様、何をやっている?」
「|もぐもーぐ《アナタの分のカツ丼を頂いてます》」
「貴様、後で食べたいと思っていたのに!」
「もぐもぐもぐもーぐ」
「やっぱり貴様は死ぬべきだ!!」ドドンッ
「もぐもぐもーぐ?!」
彼女は突然立ち上がると、怒りを込めて取調室の机を吹き飛ばしました。
危なかった!
机と共に付け合わせの漬物と味噌汁は吹き飛びましたが、二杯目のカツ丼はすかさず遠ざけた私は偉かったです。
いや、ここでちゃぶ台返しならぬ机返しがあるとは誰も予測してないわ。
食い物の恨みは怖い?
さっきまで食べようとしなかったじゃん。
今更勘弁して下さい。
「秘蔵のブルーレイディスクと同人誌に続き私のカツ丼まで奪うとは、貴様だけは許さん!」
「|もぐもぐ《ちょっと待ってよ、今食べ終わるから》」
「ムキーッ!!!」
赤鬼みたいに真っ赤な顔で怒っている黒アゲハ(姉)。(怒髪天)
良い子の皆んな、食事中は静かに食べましょう。
同人誌にブルーレイディスク?
知らないなあ、何の事??
冤罪は止めて下さい、おねーさん。
「貴様だけは!貴様だけは!」
「はい、ご馳走さまでした」
「何!?」
私はしっかりと手を合わせて丼ぶりにご馳走さますると、割り箸を入っていた紙ケースに戻して丼ぶりのフタも戻しました。
素晴らしい味でした。
板さんの心意気を感じました。
合掌です。
「さて、無事に食レポと食事が終わったので、そろそろ本題に入りたいと思います。アナタがキープしたイケメン達を返しなさい。あれらは私が既にツバを付けていたのです。つまり私の物。お返し下さい」
「ふ、返すと思うか?そうだ。犬は返してやろう。あれは要らない」
「犬???」
犬って何だ、犬って???
知らないんだけど?
「コケケケ⋯⋯」
「ん?」
何か知った声がしたので見てみると、映画館ホールみたいな一画があり座席が数席並んでいるんですが、その座席一つ一つに白い丸い物が置いてありました。
何だろうなぁって見ていたら、テバサキ夫婦が卵をランダムに温めています。
座席が卵の揺り籠に丁度よかったみたいで思いっきり愛を育んでおりました。
そーいや、テバサキ達もここに誘拐されてましたね。
もしかして犬ってテバサキ達の事?
「アレは犬というより鶏だと思う」
「アレじゃない!貴様の従魔になっているフェンリルの事だ」
「ん〜?心当たりが無いのでいいです。引き続きタモ網級イケメンとイケメン予備軍の解放を要求します」
「お前、酷いヤツだな」
「何が?」
酷いとは意味不明です。
私は正当な権利で自分の持ち物の返却を要求しているのであって、何も酷い事はしておりません。
「そんな事より、私の愛でてるイケメン達の早急なる返却を再度強く要求します」
「2次元の次は3次元、貴様の煩悩は再現がないな。まるで欲深い人間達のようだ」
「一応私、妖精らしいんですが?」
「どちらにせよ、私に貴様の要求に応える義務もメリットも無い。そんな事より今は自分の身を心配したらどうだ?」
「それはコッチのセリフです。おねーさん」
「は?誰が誰の姉だと?」
「よく分からないけど、アナタが私の姉って何となくシックリくるんですよね」
「⋯⋯⋯乙姫姉から聞いたのか?」
「乙姫さま?あ、温泉海でお世話になった織姫ちゃんのご先祖様かも知れない方から?何を??」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯いや、聞いてないなら何で⋯⋯⋯残りカスとはいえ片割れだからか?」
「へ?」
「まあいい。貴様とのやり取りはここで終わりにしよう。貴様にはこの場で引導を渡してくれる」
「引率?何処へ??」
「違う!!」
彼女はそういうと、目線をゴーストゾンビ少女に向けたのでした。




