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第339話 ダンジョン異空間3(下腹)

◆ダンジョン異空間

ナレーター視点


「まあ、お前がフェンリルか、怠惰に太った犬かはこの際どうでもいい。少なくともお前は人間達と行動を共にしていたのだ。どんな理由があろうと私の保護すべき対象ではない」

『い、いや、別に保護してもらいたい訳ではないが《犬》認定はどうにかならんか。我は断じて《犬》ではない』

「⋯⋯ソレ、どうでもよくないか?」

『大事な事なのだ!!』

「そ、そうなのか」



でっぷりと膨らんだ腹を揺らし、ヒューリュリは言い切った。

その剣幕に圧倒され、後ろに下がる黒ドレス妖精少女。


普段からカーナに駄犬認定されて心折れていたヒューリュリ。

最近は妖精ビールをヤケ酒する事もあった。

そしていつしか腹はビール腹となり、駄犬に磨きがかかったと云えるだろう。

しかしながらフェンリルとしてのプライドだけは高いヒューリュリ。

だからか、カーナ以外の妖精から《犬》認定はされたくなかったというところか。



「はあ、分かった。犬認定は取り下げる。それでいいか?」

『うむ、よかろう。それで腹がキツいので拘束を解いて欲しいのだが』たぷんっ

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」



黒ドレス妖精少女は目の前の状況に疲れていた。

くだらない事に拘る自身をフェンリルと名乗る腹の弛んだ生き物。

しかも煩い。

そこにいるのは本当にあのフェンリルなのだろうか?

もしそうなら(妖精女王)との盟友であり、神の森の聖獣と妖精の守護者であった白き悪魔と人間達から恐れられた森唯一の武力。

(いにしえ)から神の森に住まう妖精族の永遠の隣人だったという事になる。

しかしあり得ない。

たぷん、と弛んだ下腹を見て彼女はそう思った。



「だが、貴様をフェンリルと認める訳にはいかない。拘束も解かない」

『な、何故だ!?』たぷん

「それは自分の姿に聞くのだな」

『わ、我の姿だと?』たぷん

「貴様、その下腹は私腹を肥やし怠惰に過ごしてきた証。森の守護者たるフェンリルがそんな情けない下腹を持っているわけがない。嘘つきは人間共と同じだ!」パチンッ

『?!』たぷん



ザッザッザッザッザッザッザッザッ



彼女が指を鳴らすと、サングラス黒ウサギが数羽でヒューリュリを取り囲んだ。

そして神輿を担ぐように縛り付けられた椅子ごと、高く持ち上げられてしまった。



『待つのだ?!我は確かにフェンリルなのだ。だからっ、あ、お前達は何だ?我をどうするつもりだ?離してくれぇ!!』

『『『『ギルティ、ギルティ、ギルティ』』』』



そして、ウサギ達はギルティと叫びながらホールの外に連れて行く。

哀れビール腹ヒューリュリ。

これにて彼は退場となってしまった。


それを心配そうに見送るアルタクス達。

果たしてヒューリュリの運命は如何に?!



「これで煩いのは居なくなった。改めてお前達の断罪を始めよう。だがその前に断罪の順番を決める。そこの二人の女と制服女は別にしろ。男共はコッチにキープだ」



気を取り直した黒ドレス妖精少女。

あらためて拘束されているアルタクス達を眺め、そして何故かというかヤッパリというか、アルタクスと近衛隊の男子達を別に分け始めた。

もちろん分け作業はグラサン黒ウサギ達の仕事だ。

ヒューリュリの時のように拘束椅子のまま、神輿担ぎで移動していく。

結局、男子は別枠で断罪するとし隣の部屋に移されたようだ。

残ったのは近衛制服女子と二人の侍女達である。

そこには妙な差別的雰囲気。

単に男子と女子を分けたかっただけか?




「まずはお前達から断罪を始める。さて、これからお前達の未来がどうなるのか。成れの果てを見せてやる。ライラ」


ビュンッ

((此方に控えております))


「「?!」」

『?』

「ライラ!!」



突如現れたのは、あのゴーレムマスターのゴーストゾンビ少女。

転移能力持ちの彼女は明らかにしっかりとした自我を持ち、他のゴーストゾンビ達とは一線を画している。


その彼女の出現に真っ先に反応したのは、テータニア皇国オルデアン姫専属侍女のテリアである。



「ライラ、ライラよね?!わ、私よ!幼い時にアナタと別れたテリア。あの、満月の日に!」

((?!))

「ほう、知り合いがいるのか?これは喜ばしい事だな?」



侍女テリアの言葉に明らかに動揺するゴーストゾンビ少女。

果たして黒ドレス妖精少女は彼女達を集めて、これからどのような断罪をするというのであろうか。

そしてこの二人の邂逅は何を意味するのか。


この場でその先を知るのは、不敵に笑っている黒ドレス妖精少女だけであったのである。


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