第335話 昔の神の森23(過去から今へ)
◆幻影・昔の神の森
アルタクス視点
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⚫1300年前
◆ラベンダー王国側
神の森の奥地・妖精の泉付近
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
「あれは?!」
「た、退路です。森が割れ退路が現れました!」
その時である。
燃え盛る炎の中で侯爵やラクネス、全ての居合わせた兵士達がその命を諦めた時、奇跡が起きた。
何と燃える森が真っ二つに分かれたのである。
そしてその中央に現れたのは、炎のない平坦な道が続く退路。
それはまるで、先程の妖精女王が森を割った時と全く同じ現象であったのだ。
つまり彼女の力がラベンダー軍退路を作り出したに他ならなかった。
侯爵が女王の方を見れば、血を流し倒れ込みながらも、その割れた先を指し示す彼女の姿があった。
妖精女王はこれだけの狼藉を働いたにも関わらず彼らを許そうというのだ。
しかも其れだけでなく、彼らが招いた森の火災の責を問うどころか、彼らの退路を作り出して、その命を助けようとしている。
何と言う慈悲深い事だろうか。
侯爵は涙が止まらなかった。
そして改めて思う。
彼にとって子供時代から信仰と憧れの対象であった妖精女王。
その彼女は侯爵の心に描いていた通り、慈悲深く気高く美しい女性であった。
なのに自分はあろう事か、不本意にも彼女に対する一連の狼藉に関与してしまっている。
更に自身はこの作戦の責任者であり、全ての責が彼にあるのは明白であった。
「許して下され、許して下され。申し訳なかった⋯⋯」
そう、侯爵が妖精女王に謝った時、既に彼女は目を閉じていた。
その回りに泣き叫ぶ沢山の妖精達。
ああ、愚かにも自分は取り返しもつかない事をしてしまったのだ。
激しい後悔の念にとらわれる侯爵。
その思いは森の火災の元となった魔法を放ってしまった宮廷魔法師ラクネスも同じだ。
侯爵達は深々と彼女に頭を下げ、まだ動ける部下達に指示して退去を命じだ。
部隊は半数が既に火に巻かれていたが、まだ健在だった者達がその退路を使い脱出していく。
しかし侯爵はその場に残る選択をした。
実は既に煙に巻かれていた彼。
もう足が動ける状態では無かったのである。
それと責任を取らなければならないと思ったのだ。
仕組まれた事とはいえ、この惨事を招いた責を誰かが取らねばならない。
こうしてラベンダー王国の神の森侵攻はその目的を未達のまま終わる事となり、この事実は王国の瓦解により歴史の表舞台から消える事となるのである。
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◆現在
ダンジョン異空間
「と、まあ、以上がお前達人間の我ら妖精族に対する罪だ。そして性懲りもなく私の聖域を侵す愚か者共。私は母のように甘くはないぞ!」
と語るのは、小さな少女の姿をした蝶の羽根の妖精?
彼女は《新神の森紀行》と書かれた、何処ぞの国営放送局番組パクリ番レーベルの貼ったビデオテープ?を掲げて何故か得意げに話している。
「しかし思ったほど映像が鮮明でないな。ベータマックスはVHSより綺麗だと聞いてたんだが違ってたか?」
トントンッ
「何だ?」
その少女の肩を叩き、ゴニョゴニョと耳打ちするサングラス黒ウサギ。
黒ウサギ達はどうやら彼女の部下のようだ。
「今は録画にベータもVHSも使って無いだと?録る場合はブルーレイを使えと?!」
ガーン
思いっきり衝撃を受ける黒ドレスの少女。
ここはとある異空間。
あの荒野の一軒家のような神殿から無理やり転移させられたアルタクス達は、ミニ映画館のようなホールで不思議な上映会を見せられていた。
全身に漆黒のドレスを纏い、髪も瞳の色も漆黒だが何故かアルタクスには他人の気がしなかった。
何故なら彼女は、彼の知っている人物に大変よく似ているからだ。
「妖精女王様を母と言われる、貴女様はどちら様なのですか?」
「む、誰が私に質問していいと言ったか!む?むむむ???お前、名前は?」
「アルタクスと申します。テータニア皇国近衛隊であります」
「お前、顔が良いな」
「はい?」
「ゴホンッ、な、何でもない」
彼女は何故か顔を赤らめたが、アルタクスには意味が分からない。
しかし、このやり取りを見ていた他の近衛隊や侍女達は既に《デジャヴ》を感じていた。
最近よく目にした情景と同じに見えるのだと。
そして最もそれを肌身に感じていたのが聖獣フェンリルこと、ヒューリュリであった。
(主???)




