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第326話 昔の神の森14(友達)

◆幻影・昔の神の森

アルタクス視点



❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇


⚫1300年前


◆ラベンダー王国側

神の森の奥地・妖精の泉付近



「つまり人質ならぬ虫質、いや妖精質か?」

「呼び名などどうでもいい。つまり人質を取っていう事を聞かせるという意味だろう。私がそんな卑怯なマネをさせると思うか!」

「面倒くさいな。結局ヤる事は同じじゃねーか?無理やり言う事を聞かせる、俺達はそれをスマートにやろうっていうんだ。効率がいいだろうが」



この(ミゲル)に貴族の矜持や道徳観念を求める事は殆ど徒労に終わるだろう。

部隊長(侯爵)はそう思ってそれ以上、ミゲルと話すのを止めた。



「ああ、捕まえた妖精は全部、俺達が貰うぜぇ。それが王様との約束なんだ。あと後ろの兵達にも妖精を捕まえさせろよ」

「何だと?」

「俺達が向かってるのは妖精の国だ。中に入れば妖精がわんさかいる。捕まえれば金になる。それは俺達のものだ。分かってんだろ?ここまでこれたのは俺達のお陰だ。それには報いて貰わねばならないんだからな」



狩人達の褒美について、王からは『最大限尊重せよ』と、ただそれだけを指示された。

しかし、その褒美が妖精を与える事だと、誰が想像出来るだろうか。



❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇

 


ラベンダーの花畑。

一組の親子が花を愛でている。

父親と息子のようだ。

ラベンダー畑の先にはその母親と思われる女性が日傘をさし、従者と共に優しく微笑んでいる。

これは在りし日のラベンダー王国の風景。

美しい侯爵の子供時代の思い出である。



(『父上、妖精は居るのですか?』)

(『妖精は居るよ。そのラベンダーを咲かせるのも花の妖精のお陰だ。見えないだけで様々な場所から私達を助けて下さっている』)

(『そうなのですね。妖精は人間の味方なんですね』)

(『ああ、そうだ。だから妖精は敬わなければならない。妖精女王が手を差し伸べてくれた時から私達は彼らと共にあるのだから』)

(『はい。僕は妖精と友達になりたいです。共に笑って生きる友達に!』)

(『優しい心の今のお前ならきっとなれるよ。頑張りなさい』)

(『はい父上。必ず僕は妖精と友達になります。必ずです』)

(『はは、やはりお前は私の自慢の息子だ。誇らしいよ』)



❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇❇





バサッ

ミゲル「そりゃ!」

妖精A『きゃああい!?』

ザザンッ

ミゲル「おい、そっちだ!!」

ギド「まかせろ!」

バサァッ

妖精B『ひゃああ!!』

ミゲル「おい、そこの兵士!そんなへっぴり腰で網をなげんじゃねぇ。網が破れたら弁償させんぞ!」

兵士C「わ、わわわ?これが妖精!」

ミゲル「何驚いてんだ!?驚いてる暇があったらどんどん捕まえろ。時間は有限なんだよ!」

兵士C「あ、ははい!」

バササッ

『わあああ?!』




地獄絵図。

そこは差し詰め、地獄絵図だった。



結界を越えて進んだ先には美しい花園があり、その先には小さな泉が見えた。

そこは雪も寒冷化も無縁のまさに花の楽園であったのだ。

しかもその上を飛び交う少女姿の妖精達。

茫然と見つめる私達に彼らは屈託のない笑顔でそれを迎えた。

幻想的風景と幻の妖精達。

彼女らは驚く私達に何処までも好意的であった。

そう、彼女らは私達を友人として迎え入れてくれたのだ。

それはあの日の父上に誓った、私の想いが実現した瞬間だった。

実現した、そう思ったその時だった。




バサァ


『『『『『きゃあああ!?』』』』』


「な、何をする!?」



その刹那、その花園に大きな網がかけられた。

奴が、ミゲルが隠し持っていた投げ網を高く放り投げたのだ。

たちまち私達を出迎えた妖精達はその網に捕らえられてしまい、そのまま地面に落ちてゆく。

理由もわからず悲鳴を上げて網に絡め取られる妖精達。

突然行われた暴挙に、私は思わずミゲルに叫んでいた。



「何をするって?捕まえてるに決まってんじゃないか。他にどう見えんだ、侯爵さまよ?」

「だ、だが!」

「王様から妖精の扱いは俺達に一任されてんだ。余計な口出しは無しだぜ」

「⋯⋯⋯⋯⋯?!」

「アンタらは結界技術の改良を妖精女王に交渉するんだ。これはその交渉を上手くいかせる為の下準備になる。ちゃんと事前に打ち合わせたじゃねぇか?邪魔すんなよ」




その後は地獄絵図だ。

その場は(侯爵)にとって、ミゲルや兵士達の全ての行動が地獄のように見えたのであった。


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