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第311話 昔の神の森

◆ダンジョン✹昔の神の森

アルタクス視点


「昔の《神の森》再現⋯⋯ならば幻影ですか」

『そんな事はどうでもいい。それより(あるじ)が居ないのだ』

「カーナ様が?そう云えば姿が見えません」

『無事なのは分かっている。我と(あるじ)は従魔契約で繋がっているからな。だが、かなりの遠方に飛ばされたのは確かだ。(あるじ)の事だ。我と離れても何とも思ってはいないだろうがな』



ヒューリュリ様は何故か残念そうに空を見上げた。

まあ、あの方なら何処にあっても逞しく有られるだろうが、ヒューリュリ様の複雑そうな顔は見なかった事としよう。


しかしカーナ様と再び離れた。

これはダンジョンの意思なのだろうか?



「もはや私の知るダンジョンではない、か」



私は起き上がる近衛隊、テリア達を確認して安堵したせいか、いつの間にか一人呟いていた。


だがこれは紛れも無い事実。

私や皇族がコレまで管理してきたのは、もっとダンジョンらしい迷路を持ち、極めて管理安定した物だった筈。

つまりどういう事かというと、或るべき場所にいつも同じ物や空間があり、決まった場所にさほど変化の無い数のゾンビやゴーストゾンビとの遭遇がある。

過去の経験が役に立ち、数世代前に記された文献がその効力を発揮するという事。

過去の賢人達が構築したダンジョンの攻略法が、それなりに機能し力を持つ事が本来である。


そして問題は今迄のそういった賢人達の遺産や文献、これまで当たり前として積み上げてきたダンジョン情報は殆ど意味を成さなくなりつつあるという事実である。


進むにつれ迷路や迷宮どころか、階層すら意味を成さない変貌を見せるダンジョン。

皇都ダンジョンは全く別の世界を繋げたような物になり、私達の知らない技術や風景が姿を現した。

ゴーストゾンビ達は一様に様々なシーンで見た事もない文化や服装で我々を迎え、一貫して無関心を装っている。

神殿に住み着いた黒ウサギ達でさえ、あのような集団で理知的に行動するなど、まるで急激に進化したようだ。

唯一変わらない動きをしたのは通常?のゾンビやタールマン達。

彼らだけは今まで通り、遭遇するなり我々を躊躇なく襲ってきた。


元々ゴーストゾンビや一般ゾンビは私が居る事で対策は出来ていたのだが、とにかく今までの経験が全く通用しない事が全てに攻略を難しくしている。

そして現れた今のダンジョンを表していると見られる《スゴロク》と呼ばれるマップ。

これは一つの転移装置で、コレにより我々が今までダンジョンと呼んでいた場所はダンジョン全体のごく一部に過ぎず、ダンジョンは多層化した異空間の集合体で、その全体像は遥かに拡がりを見せる巨大な異世界であると理解した。

こうなっては何者かの道案内なくしての攻略は難しく、先に何があるのか誰にも予測出来ない事が今の状況と云えるだろう。



「これはやはりカーナ様の影響でしょうか」

『やはり貴様はあの事実を知っているのだな?だから最初の接触以来、我らに非接触を貫いてきたのか?』

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

『予定外の再会は我が(あるじ)の暴走によるもの。結果、巻き込まれにいったのは(あるじ)の矜持によるものだ。貴様達を責める事は出来ぬが、我は未だ貴様らをただの一度も許したつもりはない。我にとってあの時の事は決して忘れる事が出来ない事実なのだ』

「分かって、おります」

『ふん、ならば早く打開策を見つけろ。我は本来戦いが本分だ。それ以外は分からぬ。不本意だがその辺りはお前達の領分だろう?正直、貴様達と行動を共にしているのは全て(あるじ)の意向によるものだ。人間の小娘共がどうなろうと我には預かり知らぬ事よ』

「承知しております。最善を尽くします」



ザッザッザッザッ



そう言って私から離れていくヒューリュリ様。

その後ろ姿を見て、やはりヒューリュリ様は文献にあった《白い悪魔》だと確証が得られたという事か。

彼は遥かな時を生きる時代の生き証人。

その事が昔の姿を見せる《神の森》を見て改めて理解させられた。

そしてその罪の重さに、胸が辛くなる事も間違いない事実なのだ。


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