第298話 ???21(結界)
◆ダンジョン✹???
カーナ視点
『そこまでは知っている。その後の事を教えろ。雪ウサギ達はその後はどうなったのだ?まだ我は貴様達からその事について何も聞いていない』
あら?
ヒューリュリ様は私がハンスさんから聞いていた話をちゃんと判っていらした様です。
ちょっと苛立ちを込めてアルタクスさんに迫りました。
これはいけません。
まさに飼い犬の手綱を引いて制止しましょう。
「ヒューリュリ様、ソコまで。別にアルタクスさんが直接雪ウサギの行方不明に関わってる訳でもないでしょう?ちゃんとソコに座って待ってなさい」
『主、これは神の森を預かる守護者の使命。そして聖獣を守るのは同じ聖獣である我の責務だ』
「その飼い主が私よ!主であり飼い主の方がヒューリュリ様より偉いの。言う事聞いて《オスワリ》してなさい。アルタクスさんは今からその事を話すんだから慌てないの」
私の言葉に、ピイィーンと背筋を伸ばして姿勢を正して座るヒューリュリ様。
ああ、また私の強制命令が効いてしまった様です。ごめんなさい、ヒューリュリ様。
「ヒュ、ヒューリュリ様は……?」
「アルタクスさん、気にしないで大丈夫。続けて続けて」
「は、はい?」
急に姿勢を正したまま黙り込んたヒューリュリ様。
話の流れ的に、それが気にならない訳にはいかないアルタクスさん。
当然と云えば当然ですが、ここに《ある》のは渋谷の忠犬ハチ公です。
単なる待ち合わせスポットです。
気にしないで下さい。
「カーナ様、分かりました。それでは続けます。皇族の行事である《雪ウサギ狩り》。皇国の法律では聖獣を狩って殺す事自体は違法です。ですが捕獲する事は、グレーですが法律に抵触しません。つまり皇族は代々、雪ウサギの捕獲をしてある事に使ってました。それは皇国建国から続く、とある盟約によるものなのです」
「盟約?」
「これは皇国存亡にまつわる事。かつてのテータニア皇国は今の様に雪に閉ざされる事なく、一年を通して春の気候に包まれた花と緑の国家でした。当時は内陸農業国のテータニア皇国、海を隔てた南の島国ガルシア帝国が大陸全体の交易の中心となり、大陸中を豊かにしていたのです」
「成る程、つまり隣り合う食糧生産に特化した国が大陸全体の交易を支えていたのね」
「その通りです。この大陸は創造神ラーデアテーナ神の名を共にする世界唯一の大陸。当時は大小数多くの国家が存在し、その盛衰を競っていました。国家間の小競り合いは続いてましたが、当時の我が国は食糧増産国として確固たる地位を築き、全ての国家の食糧庫のような役割を担い、国家間の争いから一線を画していました。ですが、ある時期から始まっていた《寒冷化》は大陸内陸にまで及び、ついに皇国に到達するに至ります。既に数多くの国家の滅亡の引き金となった寒冷化。結局当時の王家は寒冷化に何の方策も無く、国はジワジワと寒冷化を受け入れていくしかありませんでした。そして食糧国であるテータニア皇国の交易が滞ると、一気に北部の国家群が瓦解して大量の難民が国に押し寄せました。まだ寒冷化の影響が弱かった皇国ですが、当時の皇国には其れだけの難民を支える食糧を増産する能力はありません。食糧を求めた難民は皇国各地で蜂起し、騒乱と混乱の中、王家は滅亡を受け入れるしかない状況だったのです」
寒冷化はおそらく自然現象。
やはり氷河期か何かが急激に広がったと見るべきでしょうね。
科学が未発達な、どちらかと云えば地球の中世に近い産業レベル。
方策なんてあるわけもありません。
そして食糧を生産出来ないとなれば飢饉となり国が滅びるのが必定。
本来なら打つ手無しの状況だったのでしょう。
「ですが王家は、その混乱の前から寒冷化を食い止めるべく、大陸中から生き残りの魔法師を呼び寄せ魔法による寒冷化に対抗する方法を模索していました。ですがそんな自然現象をねじ曲げるような大魔法を、都合よく行使出来る魔法師が存在するわけもありません。もはや皇国の運命は風前の灯火でした」
だけど結果としてそうはならなかった。
何故なら、今は国を覆う《結界》があるから。
ですが大陸中の魔法師を呼び寄せても上手くいかなかった寒冷化対策の魔法開発。
なら、その《結界》は誰が開発したのでしょうか?




