第288話 ???11(ファクシミリ?)
◆ダンジョン✹???
カーナ視点
流石に気絶してる人がいる行軍はスピードが上がる訳もなく、牛車並とは言いませんが其れなりに配慮した速度しか出せません。
結局、休憩を多用した進み方になるのは必然でした。
ですが、オルデアンちゃん達の事を思えば、アルタクスさんなどには焦りの色が出るのは致し方ないところ。
もちろん私も同様ですが、頼みの綱だったメカ鯛女中頭さんが分解された挙句にペリカン達の腹に入ってしまった事が問題。
この戦力激減の中にあって、あの《呪いの千手観音》に対峙すると思うと、黒板を爪で数回引っ掻いたくらいの悪寒が走るもんですから、正に《震えが止まらない山本リンダ》になってしまった今日この頃のカーナです。
『主、また妄想に耽っているのか?』
「ヒューリュリ様、瞑想に耽っているの。一文字違いで大きな違いだから」
日頃の鬱憤を返したいのか、私への評価が酷いヒューリュリ様。
妄想と瞑想では天と地ほどに違います。
いい加減な事を言わないで下さい。
「カーナ様」
「あ、はーい」
『⋯⋯⋯⋯』
おお、イケメンにお呼ばれしました。
まさに蝶になってイケメン花に飛んでいきます。
ヒューリュリ様が仏頂面で見送りますが、私は全然気にしません。
アルタクスさーん、待ったぁ?
「カーナ様、その、オルデアン様達の正確な方向が分かりません。此方で合っているのでしょうか?」
タモ網級イケメンからの素朴な疑問。
これは絶対に最高な回答をするべきではありましたが、ちょっとそうもいきません。
先導役のナビちゃんがオルデアンちゃん達と一緒に掴まって以降、その役目を担っていたのはメカ鯛女中頭さんだったからです。
彼女がゴーレム戦で分解されてしまいましたから、GPSナビゲーションを失なったも同然の現在の状況。
頭を掻いて誤魔化すしかありません。
「アルタクスさん、言わなかったけど、メカ鯛女中頭さんがあんな事になって、実は私達は非情に不味い状況にあるの」
「つまり、向かう方向も目的地までの距離も分からない、と」
コクンッ
「メカ鯛女中頭さんが分解されて、ね⋯⋯⋯彼女こそ目的地までの正確な方向と距離が分かる力を持っていたの。だから今の私達は最後に彼女が示した、今向かう方向しか分からないのよ」
さすがに頭を掻いて誤魔化す事は出来ず、私はアルタクスさんに真実を明かしました。
状況の深刻さに俯いて深く溜息をした彼。
近衛隊本来の護衛対象である皇族の守護。
その溜息は依然として本来のお役目を果たす事が出来てない事への落胆?
それとも不甲斐ない自身への葛藤でしょうか。
ああ、アルタクスさんにこんな顔をさせてしまった私も不甲斐ないと思うし、スーパーイケメンの気持ちを今なら簡単にゲット出来たであろう、そのチャンスを活かせなかった事を勿体ないと地団駄踏んでる自分を感じて《私って俗物だったのね》と今更ながらに自己嫌悪している私。
何か残念でなりません。
(『少しは自身の行いを振り返えられるようになったのだ?主』)
私の考えを読み込み、口の端を上げて勝ち誇るように念話を送るヒューリュリ様。
《駄犬の癖に上から目線はフザケテンジャネーヨ!》て念話を、四百字詰め原稿用紙で三百枚にして電送してやりましたら、すっ転んで再起不能になってました。
ざまぁ。
「わ、かりました。今は最後のメカ鯛女中頭さんの指示を信じこのまま進んでいきましょう。それしか、今の私達には出来る事はありませんから」
「うん、ごめんね。私が無力だから」
「カーナ様、私達はチームです。其々が今の自分で出来る事をやっていく、それがお互いの短所を補い合い最大の力に繋がります。あまりご自身を責めないで下さい」ニコッ
「アルタクスさん⋯⋯ありがとう」ドキッ
やべぇ。
破壊力バツグンのタモ網級イケメンの笑顔貰いました。
うう、早くお持ち帰りしてぇ。
(『主、再び俗物に磨きが掛かっているのだ⋯⋯⋯』)フリフリ
またヒューリュリ様が遠方で首フリフリしながらワザワザのご連絡を寄越してくれやがりましたので、こんどは先ほどのを千枚にして送ってやりましたら、頭から煙を上げてノックアウトしてました。
ファクシミリの無駄な使用は止めましょう。(教訓)




