第267話 薄暗い平原(リターンズ)
◆ダンジョン✹薄暗平原
カーナ視点
ギューーーーーーーーーーンッ
ヒューウゥン⋯⋯⋯⋯。
「こ、ここって?!」
メカ鯛女中頭さんの巨大魔法陣が消え、私達は無事全員が大草原から別の世界に転移出来ました。
ちょっと《エレベーター酔い》になったので、ヒューリュリ様のシッポの陰で吐きました。
おえっ
多分しばらくバレないでしょう。
『主、分かっているのだ』
「は?何の事??」
『従魔は主と心の繋がりが⋯⋯』
「あ、ここって何か見覚えがあるわ!?そうだ!グルちゃん召喚以前に、織姫ちゃんのバンジー落下に巻き込まれて落っこちた場所じゃない?という事は⋯⋯⋯ゾンビ平原!」
『⋯⋯⋯主、あんまりなのだ』泣
そう、ここはサードステージからフォーステージへ移動の最中に偶然巻き込まれ落ちた世界。
その後、ダンジョンは多層化した多次元空間だと乙姫ちゃんのところで分かり、サードとかフォーの括りが無意味だったと理解したんでした。
まあ、人により全く違う世界を見せる多次元ダンジョン。
一部の人々にはレンガ作りの通路と階層が続く、只のダンジョンに見える事もあったのかも知れません。
ところで、ココに転移してきたという事は、オルデアンちゃん達と誘拐犯達の近くまで転移してきた、という事でいいのでしょうか?
だとすると、スゴロク上はスタート付近に戻ってきた事になり、え?それは《出戻り》と一緒じゃんって、思ってる私は間違いなんでしょうか?
ピロン
《出戻り▶離婚した女性が実家に戻ってくる事》
ナビちゃん、ああ、そういう⋯⋯じゃねーよ!
取り敢えず皆が思い思いに辺りを見回しますが、障害物が一切なく地平線が見えるほどの平原。
目視できる人影や建造物は見当たりません。
これはどういう事なんでしょう?
「その、メカ鯛女中頭さん?、疑う訳ではありませんが、本当にココにオルデアンちゃん達が居るんでしょうか?」
この言葉は、皆の想いを代弁しての発言です。
事実、不安感が漂う中、私の言葉に皆が頷きつつメカ鯛女中頭さんの反応を待っています。
果たして彼女の回答は?!
((転移は予定通り行われました。大丈夫、ここにお捜しの姫様達は確実におります))
しーんっ
この言葉を聞いた皆。
暫しの静寂のあと、何故か拍手喝采。
更には、すすり泣く声まで聞こえます。
すすり泣いてたのは、お互いに抱きあっている二人の侍女さん達。
よっぽど嬉しかったんでしょう。
あまりの感動に泣き崩れております。
ああ、こうなると誰も彼女らを止められません。
殆ど号泣になっていました。
うーん、まだ救出そのものは出来てませんのにこの反応。
姫様達に追いついた時は想像だに出来ません。
「それで方角は?距離は?彼女らの位置は分かっているの?」
((はい。座標データは把握しております。ここから約500キロメートル、建造物の近くに居るようです))
「建造物って、500!?」
なんと、オルデアンちゃん達のいる場所は、ここから500キロメートル先なんだそうです。
500キロ?!
それって東京→大阪間とだいたい同じです!
視界に捉えられないどころか、文字通り遥か地平線の彼方でした。
見える訳がありません。
ヤッパリ一つ一つの異空間は、独立した異世界だと改めて実感です。
「そんな距離、どうやって向かえばいいの?!」
『主、そんなものは転移を使えば良いではないか』
「そうだ、転移なら!」
確かにヒューリュリ様の言う通りです。
ここまで異空間転移出来たわけですから、距離を稼ぐ平行移動転移はずっと簡単な筈。
そう思いながらメカ鯛女中頭さんに視線を移したら、彼女からは意外な言葉が返ってきました。
なんと、平行転移は難しいとの事です。
何で?
((この世界は特殊な磁場が充満してます。その磁場が私の転移魔法に干渉し誤作動させる可能性があります。最悪の場合、別世界に飛ばされる事が考えられます))
なんて事。
どうやら500キロメートルの移動には、他の方法を探す必要があるようです?!




