第256話 大草原5
◆ダンジョン✹大草原
カーナ視点
モヒカン世紀末「おい、お前ら黙れ!閣下、全員配置につきました」
偉そう男「よし、ヤれ」
偉そう男の指示に頷き、何やら呪い人形頭部に手を向ける黒子女子。
その手には紙のような物が握られていました。
は!アレはグルちゃんのサイコロマップでは?
てっ無視すんな!
「∑∑∑∅∇⊕⊗∇≯∃∂≫∃∅⊕⊕⊗⊗⊕≯≤∇」
黒子女子は、私の激しい罵りの気持ちにも気づかず何か呪文を唱え始めました。
呪文?魔法でも使う気でしょうか。
それとも中二病??
ガチャリッガチャガチャガチャガチャリッ
へ?
何だアレ?!
バラバラに拡散して内部が見えていた人形が急激に収束し、元の千手観世音菩薩モードになりました。
もちろん一味は手のひらに、オルデアンちゃん達は拘束されたままです。
『主、魔力を感じるのだ。恐らく何かの魔法を使うつもりだろう』
「魔法!?どんな魔法なの?」
『分からん。元々我ら聖獣は人間とは別の魔法体系で動いている。だから我らには人の使う魔法は理解出来んのだ』
さて、黒子女子が使う魔法と云えば、呪い人形を操り《真空斬り》なる竜巻魔法しか知りません。
また同じ魔法で私達を吹き飛ばすつもり?!
ん?
キラキラキラキラッ
あの呪い人形、仏像モードで金色に光出しました。
何で?
ビカッ
シュオンッ
「はあ!??」
そして、呪い人形が激しく瞬いた瞬間、そこに呪い人形と浄瑠璃団は居ませんでした。
なぬ?
何処いった!?
「ヒューリュリ様!」
『臭いも完全に消失した。これは恐らく転移だ』
「転移?それは追いかけられないの?!」
『無理だ。我にそんな力は無い』
「そんな!」
ビョウウーッ
辺りは虚しく草原を渡る風が吹き渡るのみ。
完全にヤラれました。
グルちゃん不在、スゴロクマップも一緒に連れ去られてしまい万事休す。
私達だけ、この大草原に取り残されてしまったのです。
「くっ、どうすればいいの?」
『主、分かっておるだろう。相手が転移では追いかける事は叶わぬ』
「え?」
ヒューリュリ様が草原の先を見ながら私にボソッと言いました。
じゃあ、もう追いつけないって事!?
『そうだぜ!ええっと、主でいいか?俺達は一応アンタの従魔だ。だからアンタが保護対象。それ以外は本当はどーでもいい。だから危険な奴らを追いかけるのはノーサンキューなんだ』
「は??アンタ、何言ってんのよ。そんなの駄目に決まってるじゃない!それにずっとココに居るつもり?」
『何でだ?俺達は今安全な場所に居る。ここでずっと暮らせばいいじゃないか』
レオナルドが突然バカな事をほざきました。
オルデアンちゃん達を諦めてココで暮らせ、だと?
意味不明で馬鹿げた提案です。
到底受け入れられる訳がありません。
「見捨てられる訳ないでしょう!?アンタ、私の従魔ならちゃんと私の気持ちに寄り添いなさいよ!」
『くだらねー。だったらどうしよってんだ?俺達にあいつらを追いかける術はねーんだ。一生かけてこの世界を歩き回るのかよ』
「う、でも何処かに他の階層に抜ける入口が」
『ここは異空間を多層化した多次元ダンジョンだぜ?一つ一つが異世界だ。一つの世界を隅々まで探索してたら其れだけで一生掛かっても見つけられるか分からない。もう手遅れなんだよ。幸いココは危険が殆ど感じられない極めて安全な場所だ。もう過去を諦めでここで暮らした方がお互いの為だぜ。なあ相棒?』
『貴様の相棒になったつもりはないがコイツの言う事は一理ある。主、人間達の諍いに介入するのは止めるべきと我は思う。我らは聖獣でありテバサキ達は魔獣。そして主は妖精だ。そこに人間に関わる要素な本来無い。これ以上人間に関わるのは、従魔としても否定したい』
どうやらココには、私の考えに賛同する味方は誰も居ないようです。
こうなったらヒューリュリ様達は無視して自身だけで動くしかありません。
「はあ、だったらアンタらに頼らない。大体アンタらの論理からすれば救出対象の妖精が二人(グルちゃん/アカリン)と従魔が一匹がオルデアンちゃん達と一緒に拐われているのよ。今のアンタらは自分達が矛盾してる事に早く気付くべきだわ。さいなら!」
ちょっと腹立ち紛れで言い切った私。
呆気な顔のヒューリュリ様達の前を素通りし、奴らが転移した場所に一人向かう私でした。




