第254話 大草原3
◆ダンジョン✹大草原
カーナ視点
えーそれでヒューリュリ様落ち込み案件ですが、オルデアンちゃんが気にしてるし、メンタル弱々場を暗くする方がいらっしゃるのは頂けません。
ここはそろそろ《ヒューリュリ様ご機嫌伺い》をし立直って頂く、これに尽きるという事でしょう。
拗らせると《御荷物駄犬》になっちゃいます。
「あーヒューリュリ様?何をそんなに落ち込んでるのか知りませんが、そろそろご機嫌を直して下さい。ヒューリュリ様がそんなだと皆が心配しちゃいます」
『⋯⋯⋯⋯我は《犬畜生》ではない⋯⋯⋯』
「はい?」
『駄犬でもない⋯⋯⋯』
「誰もそんな事をヒューリュリ様に言ったりしないですよ。ヒューリュリ様が頼りです。皆で協力してダンジョンを脱出しましょう。ね?」
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯』
ヒューリュリ様は私の言葉に顔を上げましたが、直ぐに俯いてしまいました。
え?何で??
『心が、主の心がこもってない』
「主って私の事?ちゃんと心からヒューリュリ様を頼りにしてるのに?そんな訳無いじゃないですか。心配してるから、元気になってほしくて、だから今呼びにきたんです。ほら、コッチ向いて下さい」クイッ
『⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯はあぁ』ガクッ
「はい!?」
私はなんとかヒューリュリ様に復活して貰いたくて、無理やりその顎を押し上げて彼の顔をもう一度上げさせました。
このダンジョンの脱出にはこんな無気力駄犬ではなく、前向きフェンリルのヒューリュリ様が必要なのです。
サッサと立ち直らんかーい!
『主、やっぱり心がこもってないのだ。主は我を《駄犬》と思っているのだ。我はソレが悲しいのだ』
「被害妄想です、ヒューリュリ様」
確かに彼の事を《駄犬》とは思ってますが、私は本音を言うつもりはありません。(酷い)
これ以上の追い打ちはヒューリュリ様の落ち込みが深くなるだけで何のメリットも無いからです。
「私は常日頃からヒューリュリ様に感謝しております。どうか私達の為に立直って下さい」(本音)
『⋯⋯主、我は主の従魔だ。従魔は主の心をある程度分かるようになっているのだ』
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
そうでした。
従魔とその主は心が繋がりがあるのです。
ただ具体的なイメージではなく、ごく表層の感情の起伏が伝わるのみ。
それでも、話の流れからヒューリュリ様は私の機微の様子を伺い、かなり正確に私の思考を読み取れるようです。
ウザいし面倒くさい事この上ありません。
ヒューリュリ様への日頃の感謝?
何それ?
美味しいの??
「プライバシー侵害!駄犬の癖に生意気!!」
『逆ギレされたのだ⋯⋯⋯』
※※※※
その後私達はヒューリュリ様達とお互いの無事を喜び合い、一致団結してダンジョン出口へ向かう事を誓いました。
ヒューリュリ様もいつもの自分を取り戻し、私達の護衛にシッカリ尽力してくれるとの事でした。
流石にヒューリュリ様ですね。
特に何の問題もありません。
「お前達、従魔の癖に合流が遅い!」
『主、我らも色々あったのだ。これでも急いで来たのだから許して欲しいのだ』
「コケー、コケコケコケコケコケー」
『俺は付き合って来ただけだぜ。お前らとは関係ないからな。は?俺がお前の従魔??勝手に従魔にしたからって俺は俺の道をいくぜ』
はい、従魔達は相変わらず主に対して失礼この上無いですが、私の素晴らしい人格を持ってその全てを許しましょう。
特に問題ありません。
「コケコケケコケケ」
「まあ、卵のお裾分け?奥さん、お気遣い有り難う御座います。ご主人にはいつもお世話になっていて大変感謝してますの。従魔の鏡みたいな方で誇らしいですわ。オホホホ」
『主、対応が露骨なのだ』
『お前、そーいうのは関心しねーぞ』
言いたい放題の従魔達がいますが、寛大な心を持ってその言動を許しましょう。
特に問題ありません。
『主、もっと我にも感謝が欲しいのだ。労いの言葉が足らないのだ』
『おう!俺を勝手に従魔にしたんなら待遇は要求するぜ。三食昼寝付に給料は標準平均給与の3割増だ。俺様は高いんだからな!!』
取り敢えずレオナルドは後で〆るとして、問題はこれからです。
先ずは離れ離れのペリーを回収し、ココに居るであろうアルタクスさん達騎士団と侍女さん達との合流を最優先。
そして《呪い人形浄瑠璃団》?との接触を回避し、最短でダンジョン出口に向かう事。
依然として謎のダンジョン運営や大森林の《巨大一つ目》は心配ですが、今は出来る事をやるだけです。
とにかくこの予定で前に進む事を、皆で確認した次第でした。




