第234話 ミミランド17
◆ダンジョン✹ミミランドシー
ダイナソーエリア
カーナ視点
さて、安全になった私達ですが、Tレックスの追撃ですっかり道に迷った次第です。
ホントに困りました。
「しっかし怖かったぁ。Tレックスは殆ど反則でしょ!!」
「カーナさま、てーレックスはあのドラゴンの名前ですか?」
「何か可愛いのじゃ」
「何か恥ずいです」
オルデアンちゃん、恐竜はファンタジー世界ではドラゴン認識なんですね。
それと織姫ちゃん、可愛いってアメリカパニック映画のメインキャラが可愛いかったらパニック映画にならないから。
アカリン、恥ずいって何?
「って、オルデアンちゃん、ドラゴンって居るの?」
「本でドラゴンの骨が山がら出たって読みました」
「骨?」
「石に固まった状態で見つかったと先生が言ってました。骨も石みたいだったそうです」
「ああ、それは化石というのよ」
「かせ、き?ですか??」
「大昔に死んだ動植物の死体が長い時を経て石になって見つかるの。それを化石というのよ」
「石で見つかるんですか。凄いです」
地球では中世ヨーロッパ人が埋まっていた恐竜の化石をドラゴンなどと誤認したんでしょうね。
後に作られたファンタジー小説は、そうした化石の話から様々なドラゴンを空想してたんだと思います。
でもこの世界の化石は見てみたいです。
案外本物のドラゴンの化石に会えるかもです。
「それにしても、クタクタで一歩も歩けないのじゃ」
「カーナさま、私もです⋯⋯⋯」
「羽根が、疲れて、力が、出ずに恥ずかしい」
「仕方ない、ちょっと休みましょうか」
流石に走り通し、飛びまくりで全員がノックアウトです。
私も肩が懲りまくりよ。
コココケケ⋯⋯⋯コココ⋯⋯⋯⋯
ココは何故かジュラ紀の森の中。
森の奥から知らない動物の鳴き声?
巨大シダ植物群のジャングルは深く、辺りは昼でも暗い森の中です。
当然ながら右も左も分からず、いつ何時目の前の林から凶暴な恐竜が現れないとも限りません。
もちろん辿り着いたマンホールは遥か彼方、場所も定かではなく完全に迷子です。
インフォメーションを所望します。
「カーナさま、あっちに何かあります?」
「え、あれは?!」
近づいてみれば、オルデアンちゃんが発見したのは小さなメルヘンチックな家でした。
しかも外装がお菓子で装飾されてます?
まるで童話の魔女の家です。
「これは⋯⋯⋯」
「お菓子の家です」
「食べたいのじゃ!」
「恥ずかし、ながら、私も、食べたい、です」
うーん、物語では普通に食べてみたいと思った憧れのお菓子の家だけど、実際に実物を見てしまうと色々考えてしまうのです。
家の外壁を食べるのは衛生的にどうなのかとか、ハッキリ言って犬とかのオシッコが付いてるんじゃないかとか、鳥のウンチは嫌だなとかです。
当然ながらオルデアンちゃん達には先程、ばい菌の話からその辺りまでの話はしました。
顕微鏡は無いので絵に描いたばい菌を見せ、衛生管理の有用性を説いた訳です。
流石に三人娘は引いてまして、やはりオシッコやウンチは嫌だなとなり食べるのは諦めてくれたようです。
代わりに大岩井プリンフルセットを椀飯振舞させられるという、前代未聞の虐めに遭いましたが致し方ありません。
因みに大岩井プリンフルセット、何がフルかというと、いつもの6個セットが6個全てプリンの種類が違うという優れもの。
牛乳プリン、卵黄濃厚プリン、大岩井特性焼きプリン、蜂蜜プリン、苺プリン、コーヒー牛乳プリンの6種類。
フルセットはご褒美セット10回に1回しか現れない特別なもの。
当然門外不出の品として今日まで誰の目にも触れさせてはきませんでした。
しかしながら、ダンジョン内での乏しい食事事情で、エスカレートする娘達のスイーツ要求に応えねばならず、遂にストック切れで泣け無しのフルセットを出さざるをえなくなりました。
残念無念でござりまする。
「カーナさま、私全種食べたいです」
「妾も食べるのじゃ」
「恥ずかし、ながら、私、も」
「ねーよ!!」
※※※※
ギィーッ
チョコレートの割に建付けの悪いドアを開けてー
(意味不明)
「ごめんください、お留守ですか?」
「は、入ります、悪い魔法使いさん!」
「入るのじゃ、ヘンデルは何処じゃ?」
「恥ずかし、ながら、コンニチワ、です」
チョコレート製のドアは中々に重厚でしたが、貧乏くさい音はそのギャップに色々とガッカリです。
せがまれたのでグリム童話の内容を三人娘に伝えましたが、さっそく成り切り訪問の完成です。
だけど『入ります、悪い魔法使いさん』は大変失礼ですよ?オルデアンちゃん。
と、ドアが開いていたので入っちゃいました。
多分不法侵入です。
良い子は真似しないで下さい。
中は意外と普通?
グツグツ鍋などは無くて6畳部屋に水回りにキッチンって単身者用アパート状態。
更にスタディデスクにシングルベッド。
壁に貼られたバカでかい某系魔法少年アニメポスターが色々と痛い入居者を想定させられます。
え、新作の魔法男子プリリンのプリスカイじゃん?!
「こ、ここは!?」
「これは綺麗な絵です?女の子の絵?」
「水着みたいな服なのじゃ」
「絶対、ハレンチで、恥ずかし、い、です!」
どうやら私達は、ダイナソーエリアからいつの間にか、ヤバ目の独居住居にお邪魔してしまったようです。




