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第229話 あの人達は今?パート3ー②

◆ダンジョン✹亜熱帯密林

アルタクス視点


ガザガザガザ


地図の様な魔道具を拡げていくアルトリンゲン。

なにやら楽しそうでもある?



「言いましたが、これはガルシア帝国前身、古代海洋国家ガルシアの子供の遊び道具。現在も帝国の王族には受け継がれておりますが、このサイコロというのを振って出た目の分だけマス目を進む事が出来るゲームというものです」

「話は分かった。だが、お前は私の問に何も答えてはいない。一つ目は姫様達の所在がダンジョンでないと言った事。二つ目は我々の所在と姫様達の状態をこの魔道具が確認出来るかという事。三つ目はこの魔道具を持ちながら何故今になって晒したかという事だ」

「ふむ、それは失礼しました。では一つ目の問、姫様達の所在がダンジョンでないと言った理由です。私の魔力探知は一度記憶した魔力を探索範囲で捜せる能力の事です。姫様方の魔力はサードステージで記憶出来ましたので、離れ離れになった時点で直ぐに魔力探知を実施しました。ですが捉える事ができませんでした。私の探知範囲は条件にもよりますが皇都全域に及びます。その探知に姫様達の魔力が引っ掛からなかった事から単純にダンジョン内に居ない、もしくは同一ダンジョン内に居ないとしました」

「成る程。だが今の内容で気になるのは《もしくは同一ダンジョン内に居ない》とした点だ。同一ダンジョン内とはどういう事だ?ここは一つのダンジョンではないのか?」

「まだ研究中なのですが、この幻影ダンジョンと云われる皇都ダンジョン。私の見解は《多次元ダンジョン》と見ています」

「多次元ダンジョン???」

「例えば我々の今の状況です。この亜熱帯密林、気候、この空間の広がり、これが幻影と判定するのはあまりに無理があります。証明としては私の魔力探知の広がりです。限界まで探索を試みましたが拡がりは無限で閉鎖された空間を感じませんでした。つまり私の探索では、ここは閉鎖されたダンジョンではない、という結果が出たのです」

「それはつまり⋯⋯異空間という事か」

「ええ、それも多層化された異空間の集合体。その可能性があります。もちろん旧来の幻影を基礎とした上でです。私はこれを《多次元ダンジョン》と仮定しました」



《多次元ダンジョン》



この状況を見れは確かにそうなのかも知れない。

だが私は、更に秘匿する情報を持っている。

これは王族と一部のマスターラクネスに認められた王族護衛剣士だけが知る皇都ダンジョンの闇とその意思だ。


皇都ダンジョンは意思を持っている。

その意思が示されるのは王族がダンジョン深層に向かう時と雪ウサギに対する開門だ。

だがこれは秘匿されるべき国家機密。

彼にそれを伝える事は出来ない。



「アルタクス殿、何か?」

「いや、少し考えていただけだ。気にするな」

「?」



だがここまでダンジョンが変貌した姿を見せたのは初めての事だ。

これはあの呪い人形の一団のせいなのか?

或いは他の誰かのせいなのか⋯⋯。



「では二つ目、この魔道具で我々と姫様方の状態が分かるか、という事ですが、多分こういう事です」

「?」



アルトリンゲンは広げた魔道具の紙を指差して何かを示した。

その《何か》はいつの間にか魔道具上にあった。



「これは?」

「いわゆるコマで、我々の代わりを示すものがコレです。そして我々の状態はそのコマが乗っているマス目に書かれた内容に準じてると考えます」

「そうか、このミニチュアは我々ソックリだ。そしてコチラが姫様方。チェスのようなものか」

「チェスよりずっと単純なゲームです。つまり我々はこの盤上のコマなのです」



アルトリンゲンの言う通り、我々や姫様方を示したと思われるコマが其々のマス目上にあった。

我々のマス目には《亜熱帯密林》、姫様方は《ミミランド》と書いてあるらしい。

亜熱帯密林は正に我々が置かれた実際の状態そのものだ。

他にもヒューリュリ様達?と思われる動物コマ達が《ダンジョン平原》、呪い人形と黒装束コマ達が我々の先のマス目にいた。

この魔道具上を信じるなら、カーナ様と姫様達はヒューリュリ様とは分かれて行動しており、呪い人形の一団とも接触していないと理解出来る。

だがそれは安堵と不安を私に示す事にもなった。



「お信じになりましたか?」

「⋯⋯⋯この魔道具はお前が作った物ではない、な?」

「ドキッ?!あ、はははバレましたか。実は拾いました。そこの密林探索中に頭の上に落ちてきたのです。最初はホントにビックリしましたよ」

「ならばダンジョン内で生まれるアーティファクトの一つか」

「宝箱に入ってはいなかったのですが、その考えで間違いないでしょう」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「アルタクス殿?」

「ミミランド、とは何だ?」

「さあ?私も分かりかねますな」

「分からないでは姫様方の状態が見えないのと同じだが?」

「ソコまでは責任を負えません」

「アルトリンゲン」

「はい?」

「お前は無責任だな」

「は?状態が分かるかも知れません、と言いましたよ?!分かる、とは断言してませんから」

「はあ、分かったから、そのアーティファクトの観測は続けてくれ。ああ、それと我々がそのサイコロを振ったらどうなるんだ?」

「その場合は恐らく別の空間に移動する事になるでしょう。ただ順番が来ないとサイコロは振れません。ほら、このように」



アルトリンゲンはそのサイコロを振って見せた。

するとサイコロは盤上に届く前に数センチ空中に留まった。

固定されたように空中に止まってしまったのだ。



「ほら、このように結果に至りません。恐らく我々の順番が来るまでこの状態のままなんでしょう」

「⋯⋯⋯⋯⋯」



だとすれば今はどうする事も出来ない。

一緒にいる様子のカーナ様を信じ祈るしかない。


どうかカーナ様と姫様方、無事にダンジョンを脱出して下さい。


私はそう、亜熱帯密林の空に願った。


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