第226話 ミミランド12
◆ダンジョン✹ミミランド
カーナ視点
「照明のアナタ、今は本当に困ってるの。直ぐ近くまで危険が迫ってる。このままではアナタも巻き込まれてしまうわ。だからお願い。どうか一般的な照度まで落として欲しいの。私達がこの洞穴を早く抜けられるように⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
駄目ですか。
このままでは連中に追いつかれてしまいます。
囓られて痛いのはゴメンです。
もっとも、この眩しさなら誰も目を開けていられません。
当然ながら私は今、目を瞑ったまま照明彼女に声をかけているのです。
カメヘン達も私達を捕まえるのは容易ではないでしょう。
「分かり、ました。400ルクスへ、ダウン、します」
「400?」
「蛍光灯の、一般的な照度、です」
「ああ、蛍光灯ね」
蛍光灯、懐かしいですね。
転生前の私の日本では、丁度LED照明に切り替えが進んで大手メーカーの蛍光灯生産が終わるという話しが出ていたんです。
蛍光灯の灯りは可も不可もなく安定感な光の提供が最大の長所。
つまり最も照明に適した灯りというわけですね。
「分かった。その400でお願いよ」
「はい」
シュウーッ⋯⋯⋯⋯⋯
眩しい光の洪水が終わり、安定感のある見やすい青みのある光に包まれました。
良かったぁ。
ようやく私達は回りの景色を見れて一段落。
オルデアンちゃんも織姫ちゃんも、まだ目が慣れないのか瞳をパチクリさせてます。
もちろん私もです。
彼女を捜せば、照明彼女は地面に膝?を付いてコチラを見上げてました。
光は彼女のスカート?照明傘?から放たれた分が鍾乳洞内に乱反射。
一種独特な空間を醸し出しております。
結果、最初の間接照明レベルになっておりますが、膝をついている為に彼女の個人情報は見えません。
成る程。
その為に膝をついたと。
しかしこの子、何で終始恥ずかしそうなんですかね?
元々極度の恥ずかしがり屋さん??
その割にロリータファッションで目立ってるって、よく分からないところです。
「あ、私のお願いを聞いてくれて有り難う。その、明るさはこの位で丁度いいわ」
「⋯⋯⋯⋯はい」
「えーと、取り敢えず名前聞いていい?」
「⋯⋯ぴかりん⋯⋯⋯」
「え?」
「ピカリンあかり、です」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯そ、そっか!分かった。じゃ、ピカリンちゃん?」
「あかり」
「え?」
「名前、あかり、です」
「あ?そう。名前は、あかり、ちゃんなのね?」
「はい、だから《アカリン》で、お願いです」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
いきなりの愛称呼び要求。
だけど愛称呼びアカリンならピカリンでも同じでは?
まあ構わないけど。
「と、とにかくアカリンちゃん、急だけど悪いヤツらに追われてるの。話したい事は山ほどあるけど、まずは洞穴を抜けるのが先よ。立って歩けるかしら?」
「はい、大丈夫、です。ただ、スカートは」
「ジロジロ見ないわよ。だから行きましょう」
「はい」
アカリンが立ち上がったので、後ろのオルデアンちゃん、織姫ちゃんと頷き合い、先に進み始める私達。
なんとかカメヘン達に追いつかれる前に歩き出せて良かったです。
「それにしても仲違いしたカメヘン達がやけに静かね。もっと激しく追いつかれると思っていたから些か拍子抜けだわ」
「カーナさま、洞穴を出るまでは用心です」
「そうじゃ。汚顔ネズミの連中には会いたくないのじゃ」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「そうよね、まったくだわ」
ちょっと不安になる話しですが、だからこそサッサとミミランド脱出を急がなければなりません。
洞穴の方は先に進むほど鍾乳洞が小さくなり、アカリンの明るさがむしろ強く感じるようになりました。
室内が小さくなれば照度の容量が強くなる、ある意味必然であるという事でしょうか。
だから照明器具は《畳何畳用》って決まってるんですね。
思ったんですが前世日本では照明器具やエアコンは《畳何畳》が一般的でした。
何で畳だったんですかね?
和室ですら減っていたのに不思議でした。
今更ですが。
「あ、カーナさま、前方に何か光ってます?」
「光?」
「本当じゃ。緑色の光があるのじゃ!」
「それ、出口、の印、です」
「あ、それは非常口だわ。アカリンが言う通り出口なんだけど、非常事に外に出る為の出口で通常は使っちゃいけないのよ」
なんだ、緑の光って非常出口の事ね。
非常時以外は使えないから洞穴の本来出口とは違います。
無視して先に進みます。
「カーナさま?」
「何、オルデアンちゃん?」
「非常の事態というなら、追われている私達に当てはまるのではないでしょうか?」
「は?そうだった!」
なんという事でせう。
《非常出口は非常時に使う》
当たり前の事を忘れていました。
でもココから出て無事にパーク出口に向かえるのでしょうか?




