第220話 ミミランド6
◆ダンジョン✹ミミランド
カーナ視点
バタバタバタバタバタバタッ
「あ?!」
「カーナさま!」
「何じゃ!?」
背後の気配に慌てて振り向くと時すでに遅し。
警備員四人立て神輿に乗ったドチビ三頭身カメヘンが大汗かいて追いついていました。
しまった?!
流石に時間をかけ過ぎたようです。
でも警備員が憔悴しきっていて余裕が無さそう。
簡単に逃げられるんじゃ?
ドタバタドタバタドタバタッ
「「「?!」」」
更に追いかけてきたのは別働隊?!
私達を取り囲むソレは、息切れしつつ汗を撒き散らすボロボロなミミマウス着ぐるみ軍団。
うわっ、汗がバッチイ?!
ファブリーズしてください。
アンタら、そんなに暑いんならその着ぐるみ脱げや!?
あ、関係ないけど日本のTD◯でも着ぐるみは大変なんです。
もちろん中に扇風機などの対策できる着ぐるみもあるんだけど、基本は小まめな休息で対応するしかなく、大変な職種の一つとなっているんです。
いや、夏場の着ぐるみとか普通に地獄でしょ?!
だから子供達の皆さん、着ぐるみの人に無理難題を吹っかけるのは止めましょう。
本当に大変なんだからね。
(特に夏場)
カメヘン((はあはあはあ、お、お前達、捜したんやぞ?ま、迷子になったらどないすんねん。あんま好き勝手歩かんといてーな!))
ミミマウス軍団((((((((((((あ、ううああ、あ嗚呼))))))))))
(声にならない)
必死に声を出し自身の優位性をアピールするドチビ三頭身カメヘン。
その割には息切れが激しく今にも倒れそうです。
どれだけ煙の中を彷徨ったんですかね?
ご愁傷様です。
そして着ぐるみ軍団はヨレヨレのグダグダ、熱中症?のようで、無言で膝をついていて下を向いたまま身動き一つできてません。
神輿担いでる警備員達も足をプルプルさせて今にも倒れそうです。
アンタら既に終わってない?
「3時方向に退路ありきよ!」
「カーナさま!」
「了解なのじゃ!」
その瞬間でした。
私達は死屍累々の着ぐるみ軍団を飛び越え、人気のない方向に走り出したのでした。
背後で呆気に取られるドチビ三頭身カメヘン。
アスタラビスタ、カメヘン!
((な?!逃げたで!お前ら追いかけんかい!!あ、ああ!?))
ガタンッドサドサッ
背後で神輿が総崩れ、ドチビ三頭身カメヘン神輿に警備員が押し潰されました。
殆ど壊滅状態のカメヘン軍団。
ざまぁ!
「でも乙姫ちゃんに感謝。きっと連中だけ煙に巻かれたのは乙姫ちゃんの力のお陰だよ」
「乙姫ちゃんは本当に女神さまです」
「ご先祖さま、有り難うなのじゃ」
こうして乙姫ちゃんの玉手箱により危機を脱した私達。
よく分からない《なんちゃってシンデレラ城?》の裏手を抜け、上手くパレード群衆をパスしてパーク反対側?に到着しました。
そこは船着き場になっており筏の発着場になってます。
そして発着場前の立て札にはこう書いてありました。
《この先パーク出口近道。トムヤムクン島に渡るべし》
トムヤムクン島、はて?
近道?!
ならば使うしかありません。
「オルデアンちゃん、織姫ちゃん、コッチが出口近道よ。筏に乗って行きましょう!」
「イカダ??カーナさま?」
「舟じゃないのじゃ?」
さすが元海洋国家のお姫様。
織姫ちゃんは筏の事を知ってます。
筏は丸太をロープでまとめた原始的な舟。
ただパーク内のは本物ではなくエンジンと舵が付いていて係のお姉さんが操縦。
パーク内の池?の中にある島に渡し船として運航してるようです。
まずは乗り込み島?に渡ります。
((いらっしゃい。パークは楽しめてますか?コチラはトムヤムクン島定期運航イカダです。トムヤムクン島までの僅かな間、私がご案内致します))
ガヤガヤガヤガヤッ
イカダの操舵を担当する探検衣装を着たお姉さんがニコヤカにお出迎え。
数人の一般ゴーストゾンビ客とともに私達も乗り込みました。
一般ゴーストゾンビ達は思い思いのスタイル。
恋人連れ、家族連れ、一人旅風。
まるで本当にパークに遊びに来た普通の人々のよう。
当初はイカダのお姉さんや一般ゴーストゾンビ客に緊張はしましたが、彼らから何の敵意も感じないと分かると安堵して落ち着く事が出来ました。
これで一般ゴーストゾンビは私達に敵意を持ってない事が再確認でき、やはりダンジョン全体では彼らは独自の論理で行動している事が確認できたのです。
今更ながらですがこの《エキストラ行動》。
当初はダンジョン侵入者に対する嫌がらせ行動の一つと認識していました。
ですが単なる嫌がらせ行動にしては、エキストラに異常に徹底してる気がします。
しかも《エキストラ行動》中の彼らに、その行為を強制されてやっているような悲壮感は感じません。
むしろ其々の役柄に成り切っていて、自己肯定感を持ってさえいるように思えるのです。
この《エキストラ行動》、何らかの意味があるのかも知れません。
新たな謎にぶつかった気がしました。




